ホンダ・フィットRS なぜ走りが心地いい? ハンドリング/足さばき/ドライブモードの注目点とは
1台で、実用性とクルマ趣味
ロゴの後継モデルとして誕生したフィットは、初代からスモール2BOX車ではファミリー&レジャー志向が強かった。
【画像】改良新型ホンダ・フィット RS/無限/クロスター/リュクス【デザイン/内装を見る】 全75枚
というよりも登場時は同クラスで唯一と言ってもいいくらいだった。このコンセプトは初代以来継承され、現行型も同様である。

ホンダ・フィットe:HEV RS(クリスタルブラック・パール) 前田惠介
このMCではキャビンの実用性やスペース面の優位性を活かした車格感を高めたインテリアや躍動感のある新フロントマスクの採用など内外装の変化も注目点だが、パワートレインの変更と新グレード「RS」の追加は走りの側面から実用性とクルマ趣味を強化することになる。
最も大きな変化は、ガソリン車のエンジン。
e:HEV(ハイブリッド)車も駆動モーターの出力やエンジンと発電容量のアップを施しているが、ガソリン車は搭載エンジンを1.3Lから1.5Lに換装。
最高出力は20ps、最大トルクは2.5kg-mも向上。しかも、最高出力発生回転数は高く、最大トルク発生回転数は低下し、トルク特性はよりフラットなものとなった。残念ながら今回は試乗車が用意されてなかったが、期待値は高い。
この試乗での主役は、新設グレードの「RS」。
専用内外装を採用するだけでなく、サスチューニングも専用で新規開発。グレード展開では従来の「ネス」の後継となるが、スポーツ性の強化とフィットの新しい走りへのアプローチが見所である。
「RS」の心地よさ、詳しく説明
RSに搭載されるe:HEVは他グレードと共通パワースペックだが、ノーマル/スポーツ/ECON(エコ)の3タイプの「ドライブモード切替」を専用機能として採用。
また、パドル操作によりエンブレ回生の強さを4段階で制御できる「減速セレクター」もRS専用装備として装着する。

ホンダ・フィットe:HEV RS(内装色:グレー×イエロー) 前田惠介
ドライブモード切替はアクセルペダル・ストロークなどに対する駆動力制御特性の変更が主。とくに珍しいものではないが、エンジン稼働の制御も連動していて、スポーツモードを選択すると稼働頻度も回転数も高め。
それらしく走らせているとMT車なら1、2段低めのギアを選択して加速しているような感覚。車速・加速とも連動した制御で、純電動のシリーズ制御ながらエンジン駆動と錯覚してしまうほどだ。
踏み込みに対する即応性など電動ならではの部分もあるが、トルクの繋がり・伸び感などのよく出来た内燃機の心地よさも織り込んだドライバビリティが印象的。
誤解されないように付け加えるが、決して古臭いわけではない。ドライビングのリズム感やクルマとの対話感が心地よい。
ちなみにe:HEVは高速巡航用のエンジン直動機構(パラレル制御)を備えるが、直動の守備レンジも拡大。100km/h超での緩加速も直動で維持し、余力感も従来型から向上していた。
「タイプR」的な特性とは?
RSのハイライトがフットワークである。
標準系に対してバネやダンパーを硬めて云々というレベルではない進化がそこにあった。

ホンダ・フィットe:HEV RS(クリスタルブラック・パール) 前田惠介
肌触りレベルの操縦感覚や乗り心地まで違っていたので、開発者にブッシュなどのチューニングや新型ダンパーでも使用しているのか尋ねたが、バネとダンパーの変更のみ。ただ、ダンパーのチューンは周波数感応特性として相当練り込んだとのこと。
短いストロークでは抵抗感少なく、深くストロークすれば“粘り腰”で受け止める。しなやかな往なしと強靭な抑えが、短いストロークの中に綺麗な連携を以て備わっている。
ハンドリングでは、過敏な反応を抑えながら滑らかなラインコントロール性を発揮する。
ちょっと深めの舵角を与えて思ったとおりのラインをキープ。減速してラインを絞るときも回頭は最小の挙動で済ます。
ハンドリングの大まかな特性を書き出すとまるでシビック・タイプRのようだが、操縦性に関する考え方はほぼ共通している。御しやすさと安心感と心地よさの三拍子揃えなのだ。
RS以外のモデル どう変わった?
RSはこういったフットワークなので乗り心地も良好。個人的にはこれを標準設定にしてもいいとおもえたほど。
タウンユースを中心とした用途では多少引き締まった印象を受けるが、ツーリング用途中心ならば標準サス以上に良質な乗り心地を示す。

改良新型ホンダ・フィットe:HEVクロスター(フィヨルドミスト・パール)。フィットは今秋のマイナーチェンジで、ハイブリッド車の走行用モーター出力アップ(109ps→123ps)、発電用モーター出力アップ(70kW→78kW)、エンジン出力アップ(72kW→78kW)が適用された。 前田惠介
RS以外のe:HEV車のサスは、チューニング共々従来型を踏襲。
日常域の乗り心地と山岳路・高速域での安定性をバランスさせたタイプ。タウン&ファミリー向けには堅実な特性だが、RSと比べると世代的に古いような印象を受ける。
操縦性は深めの舵角で穏やかなラインコントロール性を示す。RSと同系の特性とも言えるが、舵角変化や加減速時に回頭が微妙に揺れる。
よく言えば軽快な印象だが、微小な領域での据わりのあまさが安心感を損ねる。
マイチェン版フィットの持ち味
乗り心地も同様で車軸まわりの揺動感など細かく忙しい揺れが気になる。
どちらかといえばRSのフットワークが車格を超えていると言うほうが正しいのだろうが、直接乗り比べるとRSのような「新世代フットワーク」という印象はなく、車格相応プラスαくらい。

改良新型ホンダ・フィットe:HEVリュクス(内装色:ライトブラウン) 前田惠介
動力性能関連は、スポーツモードの設定や減速セレクターがない以外はRSと変わらない。
エンジンの稼働頻度は高めだが、多くの状況で自然なコントロールと速度維持がしやすい特性。
エンジン稼働中のドライブフィールもいい。ドライバーの運転ストレスが少ないタイプだ。
「RSは買い」と言えるワケ
スポーティ&ツーリングでの良質な走りを求めているが、タウン&ファミリー用途での使い勝手や“同乗者への気配り”も無視したくない。
スモール2BOXクラスには少々厳しい要求だが、フィットRSはそれに応えるだけの性能・走りの質を備えている。もちろん、広いキャビンと積載性に優れた後席機能、広々とした前方視界などの現行車の優れた実用性があればこそだが、そういった実用の優等生の面とRSのキャラとの相性もいい。

ホンダ・フィットe:HEV RS(クリスタルブラック・パール) 前田惠介
フィットe:HEVの価格をベーシック基準で見ると、各グレードの価格差はホームが約+18万円、クロスターが約+42万円、リュクスが約+50万円、RSが約+35万円である。
RSの一般装備はホームを基準にグレードアップを図ったもので、装備面ではクロスターとリュクスが上位グレードになる。
装備・価格だけを取り出せばRSは割高と言えるかもしれないが、走りの質感やドライバーと同乗車に掛かるストレスの少なさを考えると寧ろ“割安”とさえ言える。走りについてはクラス上の出来なのである。
元からスポーティ志向のユーザーならRSを狙うのが当然だが、ファントゥドライブにとくに関心がないドライバーも長距離や山岳走行の機会が多ければイチオシ。
登録車最小クラスでもツーリングカーとしての資質はかなりのものだ。
フィットe:HEV RS スペック
価格:234万6300円
全長:4080mm
全幅:1695mm
全高:1540mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):27.2km/L
CO2排出量:85.4g/km
車両重量:1210kg
ドライブトレイン:直列4気筒1496cc+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力(エンジン):106ps/6000-6400rpm
最大トルク(エンジン):13.0kg-m/4500-5000rpm
最高出力(モーター):123ps/3500-8000rpm
最大トルク(モーター):25.8kg-m/0-3000rpm
ギアボックス:電気式無段変速
乗車定員:5名

RSを含むフィット全車種が「急アクセル抑制機能」に対応。写真は、後退時に急な踏み込みを検知し、車速を6km/hに抑えている状態だ。 前田惠介
