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5代目 なぜあの形になった?

執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

トヨタが新型プリウスをワールドプレミアした。

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5代目となる新型の開発にあたって、豊田章男社長はタクシー専用車かOEM供給モデルとして、多くの台数を送り出してカーボンニュートラルに貢献する、コモディティ(必需品)化を提案したという。


新型トヨタ・プリウス(プロトタイプ:外板色マスタード)    宮澤佳久

だが、開発責任者の大矢賢樹氏を中心とした開発グループは「多くのお客様に乗って愛されるクルマづくりがしたい」という思いから、「愛車(LOVE)」という方針で開発していくことになった。

電動化にはさまざまな選択肢が増えた現在だが、新型プリウスは「みんなの手が届くエコカー」という立ち位置を守るべく、パワーユニットはハイブリッドとPHEV(プラグインハイブリッド車)という選択肢をキャリーオーバーした。

スタイリングも、時代の流れから、SUVやミニバンも検討されたという。

だが、開発陣はプリウスの伝統的なスタイルを進化させて、カッコいいクルマにしたかったと話す。目指したのは、“プリウスのアイコンを進化させた”デザインだったのだ。

そんなボディデザインの概要について、担当した山下太一氏に話を伺った。

寝かせたフロント 頂点の位置に注目

新型プリウスのボディサイズは、現行型と比べると、全長は25mm長く、全幅は20mm幅広いが、全高は40mmも低い。ホイールベースは50mm延長されたが、オーバーハングはフロントが25mm長くなり、リアは50mm短縮されている。

いわゆる「富士山型」のサイドビュー(トヨタではトライアングルシルエットと呼んでいる)は踏襲しながらも、より低く、長いボディシェイプとなった。しかも、よりスタイリッシュなプロポーションに進化している。


現行世代(4代目)のプリウスは、トライアングルシルエットの頂点が前寄り。    AUTOCAR

特筆すべきは、フロントウインドウの傾斜角だろう。

正式な角度は公表されていないが、トヨタ車でいちばん傾斜角の強い、レクサスLCのものに匹敵するほどの傾斜角が与えられている。

とはいえ、プリウスはスペシャルティカーではない。乗り降りで頭をぶつけないか? 視界は大丈夫か?

そこで、現行型プリウスを改造してフロントウインドウに同様の傾斜角を与えたモデルを作り、視界や乗降性についてテストを重ねた結果、実用的に問題ないとして採用されたのだという。

トライアングルシルエットも、現行型ではピーク(頂点)がやや前寄りにある、少しくずれたデザインであったものを、2代目や3代目と同様にピークを後方に戻して回帰させている。

車高は低められているものの「3代目と似ているなぁ」と思わせるのは、そのあたりにもあるようだ。

大径タイヤ、未来感 新型のディテール

そして5ドアのスタイルも、もちろん継承されている。

プリウスがプリウスであり続けるためには、5ドアのボディスタイルは必要不可欠であり、プロポーションは進化しても5ドアを変えることは考えられなかったようだ。


フェンダーのトリムが大径タイヤを強調。新型は、トライアングルシルエットの頂点が後ろ寄りに戻り、「3代目に似ている」と筆者。写真の外板色はアッシュ。    宮澤佳久

サイドビューで特徴的なものに、前後フェンダーのトリムがある。

新型プリウスでは19インチ(グレードによっては17インチ)という大径タイヤを採用しているが、フェンダーのトリムによってタイヤサイズをさらに強調するプロポーションを目指している。SUV的なアクセントではないということだ。

感性に響くエモーショナルな造形を目指したというボディデザインは、キャラクターラインがほとんどない。

シンプルであるが、断面の変化で抑揚をつけて、普遍的な美しさも表現。また、ボディの厚みも感じさせるサイドビューは、前後に長く見せる工夫でもあるという。

フロントまわりでは、新型クラウンや、バッテリー電気自動車のbZシリーズとの近似性も感じさせる。

ハンマーヘッドモチーフを細長いヘッドランプが際立たせ、上側にはデイタイムランニングランプとターンシグナルのダブルファンクション・ランプが備わる、近未来的なデザインだ。

後ろ姿は? テーマは「一目惚れ」

リアまわりでは、最近流行の一文字テールランプを採用。一目でプリウスと分かるフォルムを継承しつつ、ボディをよりワイドに見せる効果がある。

その下には「PRIUS」の車名エンブレムが、字間を空けてワイドに配される。新型センチュリーで使われている手法だが、トヨタ車ではまだ少ない見せ方だろう。


リアセクションのデザインも新型の見どころ。プリウスのDNAを感じさせるフォルムと、一文字テールランプを融合させた。    宮澤佳久

ボディカラーについても、ふれておこう。

カラーデザインは「スポーティさ」と「洗練さ」を追求したものだという。ワールドプレミアの会場では、メインステージに2台の新型プリウスが展示された。

ハイブリッド車は「ASH(アッシュ)」と呼ばれる、ニュートラルなソリッドグレーに色味のあるマイカを加えて、ニュアンスのある表情を実現したボディカラー。

PHEVは「MUSTARD(マスタード)」と呼ばれる、彩度を少しおさえた黄色にメタリックを加えて、ハイライトのみ輝く独特の質感を実現したボディカラー。いずれも、新規外板色だ。

日本仕様では、この他にもブルーやレッド、ホワイト、シルバー、ブラックなど、8色をラインナップするという。

「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」という2つのテーマで開発された、エモーショナルな新型プリウス。

ハイブリッド車は今冬、PHEVは2023年春ごろの発売が予定されているが、その姿を街中で早く見たいもの。発表会場のような屋内で見ていたものとは、きっと印象が変わって見えるに違いない。