A4なら時速18枚! ドン・キホーテの驚速「POP専属職人」が語る「電化製品が腕の見せどころ」

塚田さんのお気に入りはドンキ先行発売のコスメ用に作った立体的なPOPだ
ドン・キホーテに行くと、まず目に飛び込んでくる独特の文字と数字。じつはドンキには“ドンキ文字”を手書きする、「POPライター」と呼ばれる専属のライターがいるのだ。
「当店舗オープン時の求人項目に『POPライター』という職種があって初めて知りました」と話す塚田愛里さん(33)はPOPライターを希望して採用された。彼女に店内をナビゲートしてもらいながらドンキ文字のヒミツに迫った!
(※専属職人がいるのはドン・キホーテ業態のみ)

店内のいたるところに躍るカラフルなPOP、そしてひときわ目立つ「驚安」の文字。誰もが高揚感を覚えるあのドンキの風景はじつは職人の手作業によって作られていた
【1】ドンキ文字、アルファベット、数字のマニュアルがある!
POPライターとして入社したら、まずはドンキ文字の習得から。
「1〜2週間の研修で専門のスタッフに書き方を指導してもらいます。最初は見本の文字をお手本にしながら『あいうえお…』『1、2、3、4、5……』と、ひたすら練習に励みました。1カ月弱で、なんとか書けるようになりましたね」(塚田さん、以下同)
【2】A4サイズなら1時間で18枚書けます!
一日に何枚書ける?
「吊るしてある大きなPOPだと一日に6枚ぐらいですね。A4サイズの商品名と売価の入ったPOPの速書きなら1時間で18枚書けましたが、大きさやデザインの複雑さなどで書ける枚数は変わります」
【3】文字はなるべく、くっつけて書く!
さまざまなPOPがあるが、何が難しい?
「POPの中に凝縮するというか、圧縮して書かないと文字がバラバラに見えてしまうんです。なるべく文字と文字をくっつけて書くんですが、くっつき具合が微妙で、つけすぎると読みづらいし、離しすぎてもバラバラになってしまって。この絶妙なバランス感覚を覚えるのが、いちばん難しかったです」
【4】商品担当者からの依頼書を元に作成する!
そもそもPOPはどんな流れで完成する?
「商品担当者から商品名と売価、入れたいコメントなどが書かれた依頼書が届きます。サイズやベースの色、イラストなどまで書き込まれたものもあります。
この依頼書を元にPOPを作成しますが、商品担当者の意見を聞かないと迷うことも多いんです。商品担当者と買い場(売り場のこと)に出向き、文字の色や背景の色など細かい点を相談しながら、一緒に作り上げていきます。商品担当者はお客様に喜んでいただくにはどうしたらいいかを第一に考えています。コミュニケーションを大切にしながら、POPを目立たせることで、そのサポートをしていきたいです」
【5】商品や売り場と色を同化させない!
難しいのが売り場とPOPの色やバランス。
「POPの文字は商品の色から拝借することも多いんですが、商品と同化してしまうと目立たなくなってしまいます。商品に大々的に入っていない色を選びつつ、背景には目立つ色を選んだりします。買い場の色味との兼ね合いもあり、実際に作ったPOPを買い場で合わせてみないとわからないこともあります」

店内には所狭しとPOPが天井から吊り下げられたり、商品前に貼りつけられたり。宝探しの楽しさもドンキの魅力だ
【6】マジックの太さ選びが意外と重要!
大事なのはペン選び。
「画数が多い漢字は太いペンで書いてしまうと文字が潰れてしまったり、書けなかったり。かといって漢字だけ細いペンで書いてしまうと、離れて見たときに、そこだけ浮いて見えてしまいます。文字のサイズに合ったペンを選ぶのが難しいんです」
【7】店内の装飾を書くことも!
東松山店の正面出入り口でまず目についたのが、数枚続きで完成された巨大POP。どうやって書く?
「ここまで大きいPOPを書くには時間がかかるので、タテヨコの比率を考えてPOPを作り、パソコンにデータを取り込んで拡大しました。このPOPはお客様が来店されたときに目につく場所にあるので、扱っている商品をわかりやすくイラストや文字で紹介し、楽しい気持ちになるようにカラフルに作ったんです。場所がわかるように“埼玉のおへそ”と入れてユーモア感も出しました」
【8】力量が試されるのは電化製品!
商品説明や型番など情報量の多い電化製品はデザインに工夫が必要だそう。
「電化製品の商品説明は、情報量が多いのでどうしても文字が多くなってしまいます。楽しい感じにしようと文字を動かしたりすると、逆に読みづらいPOPになってしまいますね。構図で遊べないので、堅い感じになってしまいがちですが、ドンキらしい楽しい雰囲気を出したい。なので電化製品はPOPライターの腕の見せどころなんです」
【9】POPには店舗の個性が出る!
ドンキ文字の基本はあるが、書くのは人。やはりそこには個性が出るという。
「基本からずれすぎるとドンキ文字ではなくなってしまうんですが、どうしても個性は出ますね。自分で書いていると感じないんですが、他店に行ったり、仲のよいライターのPOPを写真で見たりすると全然違うのがわかります。それがお店の個性にも繋がっているので、いろんなドンキでPOPを見比べて楽しんでみてください」
【10】POPはドンキの命!
「店舗そのものを楽しんでもらいたい」。POPはその道しるべだ。
「ドンキの店舗コンセプトはコンビニエンスとディスカウントとアミューズメント。商品を並べて販売するだけでなく、お店の空間そのものをお客様に楽しんでいただきたい。POPはそのための要素のひとつだと思います」
もうひとつのPOPの役目はすべての商品に光を当てること。
「人気商品は、その商品を目当てにお客様が来店されるので、POPがなくても売れやすいんです。でも知られていないけど、お客様におすすめしたい商品こそ、POPの力で光を当て、目立たせてあげたいんです。その商品を知らなかったお客様にも買っていただける。手書きPOPで人気商品にしたいと思っています。それでリピートに繋がったら、言うことはないですね」

MEGAドン・キホーテ東松山店の塚田愛里さん。2015年に入社し、POPライター歴7年。得意なPOPはコスメ系
「楽しい気持ちで作るとそれが文字にも表われて、いいPOPが作れるんです」と塚田さんは話す。
「パソコンにも手書き風の文字はありますが、それでは出せないおもしろさや温かみがドンキのPOPにはあると思います。受け取った依頼書の商品が全然知らないものでも、商品の情報を調べて想像していると、ワクワクした気持ちになりますね。その楽しい思いがPOPを通じてお客様にも繋がる。それがドンキPOPの役割なんだと思います」
ドンキPOPの魅力は手書きならではの温かさにある。
今回取材した店舗は……
【MEGAドン・キホーテ東松山店】
埼玉県東松山市石橋1648-1
営業時間 9:00〜翌3:00 定休日 なし
