ワイヤレスイヤホンの競争がカオス状態 乱立する多種多様な製品

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アップル「AirPods(エアーポッズ)」の大ヒットにより、ワイヤレスイヤホン市場はここ数年で急激に拡大した。

大ヒット商品が登場して市場の急拡大が起こると、必ず様々なメーカーが追随し、市場参入することで、製品の多様化が発生する。

ワイヤレスイヤホン市場も例外ではない。
現在ではワイヤレスイヤホンと一言でいっても多種多様な製品が市場に溢れている。

市場が大きくなれば、消費者の様々なニーズに応えるために製品は多様化する。
その一方で、ニーズが異なる製品が増えたことで、消費者は製品の違いが分かりにくくなるという問題が生まれる。
またワイヤレスイヤホンも日進月歩の勢いで進化する。
こうした技術改革により、数年前にハイスペックといわれた製品も、現在ではスタンダードやローエンド製品となることも少なくない。

このようにめまぐるしく変化する状況の中、
ワイヤレスイヤホン購入で失敗しないためには、知識をアップデートしていくことが重要になる。

そこで今回は、様々なワイヤレスイヤホンについて解説していこう。


■左右独立型完全ワイヤレスイヤホン
現在のワイヤレスイヤホンの主力が、アップル製のAirPodsに代表される、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンだ。
左右の耳にそれぞれ独立したイヤホンを装着して視聴するタイプの製品である。


左がAirPods(第3世代)、右がAirPods Pro


実はAirPodsだけをみても「AirPods」と「AirPods Pro」では仕様が異なる。

例えば、形状が、
・AirPodsはインナーイヤー型
・AirPods Proはイヤーピースを装着するカナル型
このように異なっている。

また、機能面においても、AirPods Proは、
・アクティブノイズキャンセリング(以下、ANC)
・外音取り込み
これらに対応しているが、AirPodsは対応していない。

ANCとは、イヤホンの本体にマイクを搭載し、周囲の環境にあわせて雑音をカットする機能で、音楽に没入することができる。

外音取り込みとは、ANCの逆で周囲の音をマイクで取り込むことでイヤホンを耳に装着したままでも環境音が聞こえる状態を作り出す機能。
音楽再生を止めておけばイヤホンを付けたままでも普通に会話ができるなどのメリットがある。

こうしたANCや外音取り込みの機能は、今では決して特別な機能ではなく標準的な機能になりつつある。

ただ対応製品は、価格帯が高くなる傾向にある。
低価格帯の製品を購入する際は、ノイズキャンセリング機能に対応しているか、していないか、ここを確認しておくのは1つのポイントとなるだろう。

さらにノイズキャンセリング機能も進化をしている。
1世代、2世代前の製品に比べれば、最新の製品ではより没入感が得られるノイズキャンセリング機能や、風切り音をカットしてくれる機能を搭載している製品も登場しているからだ。

加えて、スマートフォンアプリでノイズキャンセリング効果を変更できるモデルや、周囲の環境に合わせてANC効果を自動調整するモデルも登場している。

このように、ANCや外音取り込み機能1つをとっても多様化しているため、購入の際にはどのような効果、使い勝手をサポートしているかも、是非チェックしてほしい。

再生機能とともに、もうひとつのポイントがタッチ操作だ。
ワイヤレスイヤホンは、本体にタッチして再生や一時停止、曲送りや曲戻り、音量調整などできるが、ANCや外音取り込みのON/OFF操作もできるようになってきている。
ただし、製品によってタッチ操作に対応した機能は異なる。
タッチに対応した操作は、購入前に必ずチェックしておいたほうが良いだろう。


Ankerの最上位モデル「Soundcore Liberty 3 Pro」


たとえばアンカー・ジャパンのオーディオブランド「Soundcore(サウンドコア)」から販売されている「Liberty 3 Pro(リバティ スリー プロ)」の場合は、
・LDAC(ハイレゾ音源再生)
・ANC
・外音取り込み
・専用アプリ
・タッチ操作
・タッチ操作のカスタマイズ
・充電ケースのワイヤレス充電
これらの機能に対応した、ほぼ全部入りの現時点での最上位モデルだ。

また、音楽視聴やスマートフォンと接続した通話機能だけでなく、翻訳機能を搭載したワイヤレスイヤホンも登場しており、外音取り込みも集音器などの代替として利用することも視野に入ってきている。

さらに、
最近ではLDAC(エルダック)というコーデックに対応した製品も登場しはじめている。
これはワイヤレスイヤホンでありながらハイレゾ音源を再生できるというものだ。
ワイヤレスイヤホン環境では、ハイレゾ非対応という常識も、今では過去のものになりつつある。


■ネックバンドタイプワイヤレスイヤホン
左右が完全に独立したワイヤレスイヤホンとは異なり、ケーブルなどで左右のイヤホンが繋がっているタイプの製品。
イヤホンを耳から外した状態でも首にかけたまま持ち運びできるメリットがある。
左右のイヤホンが繋がっているが、こちらもれっきとしたワイヤレスイヤホンだ。


ソニーの「WI-1000XM2」


左右独立型完全ワイヤレスイヤホンと形状は異なり、製品のラインナップも少ないが、機能面は完全ワイヤレスイヤホンと大きく変わらない。こちらもANCやハイレゾに対応しているハイスペックな製品も登場している。

首からかけられるスタイルは、使ってみると案外便利なことに気付くので、1度試してみてほしい。


■ワイヤレスヘッドホン
ヘッドバンドタイプのヘッドホンも現在ではワイヤレスの製品がたくさん販売されている。もちろんANCや外音取り込みといった機能やLDACに対応したハイレゾ音源を再生できる製品も登場している。

また、一見するとタッチでの操作はできなさそうだが、製品によってはタッチ操作に対応しているものもある。


STATUSの「FLAGSHIP ANC」


ワイヤレスイヤホンに比べるとサイズが大きくなるため、コンパクトな製品が欲しい人には不向きだが、内蔵バッテリーの大容量化ができるためバッテリー持ちが良いというメリットがある。

また、イヤホンを耳の穴に装着するのが苦手な人、耳の穴のサイズや形状によって装着が困難な人にとっては、ヘッドホンタイプは今でも利用しやすい製品なのだ。

さらに、ワイヤレスイヤホンと決定的に異なるポイントはケーブルによる接続も可能な点だ。

音響に関わる仕事をしている人はもちろんだが、ゲームプレイ時に音の遅延なく利用したい人にもオススメできる。

本体の大きさや重さよりもワイヤレス(無線)とワイヤード(有線)の両刀使いをしたい人にとっては、ヘッドホンほぼ一択となるだろう。


■オープンイヤータイプのワイヤレスイヤホン
イヤホン自体の構造によって、耳の穴をふさがないものをオープンイヤータイプという。これまで紹介した製品のように耳をふさがないため、外音取り込み機能を搭載することなく、周囲の環境音が聞き取れるのが最大のメリットだ。


ゲオのワイヤレスオープンイヤーイヤホン「GRFD-OEE100F808」


周囲の音が聞こえることがメリットである一方、耳や耳の穴をふさぐワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホンに比べると音楽視聴時の没入感は下がる。

外出先で音楽を視聴する際に問題となるのが、環境音が聞こえないことによる事故やトラブルに遭遇するリスクが高いことだ。

特に徒歩やスポーツなど、移動しながら利用したい人にとっては、適した製品でもある。
用途や使うシーンに合わせて使い分けるのも良いだろう。


■骨伝導タイプのワイヤレスイヤホン
オープンイヤータイプのワイヤレスイヤホンと同じく、没入感よりも周囲の環境音を優先する用途に向いた製品。
ただし骨伝導という仕組みは、
一般的なワイヤレスイヤホンがスピーカー(ドライバ)を用いて鼓膜を振動させて音楽を聞く方法とはまったく異なり、耳に近い部分の骨を振動させて音を鼓膜に届けて聴く。


Shokzの骨伝導ワイヤレスイヤホン「OPENRUN PRO」


装着する部分によって聞こえ方が大きく変わってしまうこともあるが、技術革新が進み、最新の製品では、聞こえ方も通常のイヤホンと遜色ないほどになっている。

テレワークなどで、宅配チャイム音や家人の声が聞こえるほか、長時間の利用でも耳が痛くならないなどのメリットがある。


■オーディオグラス
新しいカテゴリーの製品としては、メガネタイプのワイヤレススピーカーも見逃せない。
最近では、サングラスタイプやPCメガネタイプなどのオーディオグラスと呼ばれる製品が登場している。


Ankerのオーディオグラス「Soundcore Frames Cafe」


オープンイヤータイプや骨伝導タイプと同様に、耳をふさがずに音楽を聴くことができる。メガネのフレーム部分にスピーカーユニットやUSB端子、バッテリーなどを搭載する必要があるため、かなりの小型化を要する。

また、現時点ではメガネのレンズ交換や、メガネ店での取り扱いもほとんどないため、今後はメガネユーザーへどこまで訴求できるかが、普及のカギとなってくるだろう。


■ネックスピーカー
メガネタイプのワイヤレスイヤホンは耳の周辺に直接装着するというよりは、耳の近くの小さなスピーカーから音を聴くという感覚だが、それに近いものがネックスピーカーだ。

メガネのフレームほど耳には近くなく、スピーカーユニットにも小さくはないが、イヤホンというよりは小型スピーカーといったほうがしっくりくる。


ゲオのウェアラブルネックスピーカー「KABS028BG」


イヤホンを耳に装着することが苦手な人、長時間利用する人にとっては、耳への圧迫感や耳の疲れ、痛みを回避できる。


ちなみに今回紹介した、
・オープンイヤー
・骨伝導イヤホン
・オーディオグラス
・ネックスピーカー
これらは、極力耳に負担をかけずに音楽視聴ができ、同時に会話もできる。
音楽視聴での没入感は減るものの、生活の中で利用する上での、
・安全
・安心
・負担
これらを軽減できる新しいツールとも言える。

音楽再生での没入感が高い
・左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン
・ワイヤレスヘッドホン

没入感が高い製品と、周囲の環境との親和性や耳の負担が少ない製品。
用途を理解して、上手に使い分けるといいだろう。




執筆:S-MAX編集部 2106bpm