陸上自衛隊でも運用が始まったV-22「オスプレイ」。ティルトローターという新機軸や、開発当初に多発した事故などから、安全性の低い機体という見方がいまだにされることもありますが、実際はどうなのでしょうか。最新の状況を見てみます。

「オスプレイ」には安全を担保するためのバックアップが満載

 離島防衛の象徴的存在として取り上げられることの多いV-22「オスプレイ」輸送機。従来の航空機とは異なる、エンジンポッドの角度を変えて離着陸するという「変形機構」から、いまだ安全性が低いと思われている向きも少なくありません。実際、沖縄本島などで米軍機が墜落事故を起こしていることなどから、「危険な飛行機」という烙印を押されることがあるものの、実は機体の安全性は高いといえます。


千葉県の木更津駐屯地に暫定配備されている陸上自衛隊のV-22「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。

 事実、自衛隊が使用する様々なヘリコプターと比べてV-22の基本設計は断然新しく、様々な電子制御を採り入れて安全性を高めています。

 具体的には、パイロットの操縦を電気信号に変えて翼やエンジンなどに伝える「フライ・バイ・ワイヤ」システムは制御が3重化されており、仮に2つが効かなくなったとしても操縦が続けられるようになっています。また電気をまかなうジェネレーター(発電機)の数は、大型のCH-47輸送ヘリコプターが3台なのに対して、V-22は4台装備しています。

 なおV-22は、最新鋭の航空機として自己診断機能も備えており、点検機材と機体を繋げることで、異常箇所を自動で検知できるようになっています。この機能は、陸上自衛隊の航空機としては初であり、その点でも従来のヘリコプターよりも優秀だといえるでしょう。

滑空もオートローテーションも両方できます

 ほかにもV-22「オスプレイ」は、左右いずれかのエンジンが停止したとしても、主翼の中を通っているドライブシャフトを通して、片方のエンジン1基のみで両方のローター(プロペラ)を動かし続けることができます。加えて、ヘリコプターのように垂直離着陸できるため、飛行中に万一、両方のエンジンが停止したとしても「オートローテーション」での着陸が可能です。なおオートローテーションとは、エンジンとの接続を切り離されたローター(プロペラ)が風の力により回転し、その回転数を維持し続けることにより接地の衝撃を和らげる着陸方法です。

 こうした特徴がありながら、V-22は飛行機であるため滑空も可能です。この方がオートローテーションによる着陸よりも安全であることから、緊急時の優先度としては「滑空>オートローテーション」という位置付けのようです。


日米共同演習で海上自衛隊の輸送艦「しもきた」に着艦したアメリカ海兵隊のV-22「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。

 さらにV-22は、軍用機として敵の攻撃を受ける可能性も考慮したうえでの安全策が講じられています。

 そのための対策としては、エンジンからの排気熱を下げる赤外線排出抑制装置や、自機に向かってくる敵ミサイルの警戒・欺瞞用である「ミサイル警報装置」や「チャフ・フレア」装置を装備しています。また胴体の横に張り出している燃料タンクは、12.7mm重機関銃弾が直撃しても問題なく飛行できるよう、「セルフシーリング」と呼ばれる被弾箇所からの燃料漏洩を防ぐ機能を備えるほか、万一漏れ出して燃料が気化しても引火爆発を防ぐために不燃性ガスをタンク内に充填できるようになっています。さらに限度はあるものの、この燃料タンクが胴体側面にあることで、ここが空間装甲となり、機内に銃弾が飛び込みにくくなるよう設計されています。

ではなぜ事故が起きていたのか

 このように、安全性を徹底的に高めた構造であるにもかかわらず、V-22「オスプレイ」はなぜ過去、様々な事故を起こしているのでしょう。その原因は、大きく分けて「人的過失」「初期の顕在化していなかった欠陥」「作戦中」の3つです。


V-22「オスプレイ」が誕生する前にテスト機として製作されたXV-15ティルトローター実験機(画像:NASA)。

 日本人にとって、V-22の墜落事故として記憶に新しいのが、2016年12月13日に起きた沖縄での海兵隊機事故ではないでしょうか。このときは、洋上での夜間空中給油訓練中に、空中給油機から伸びた給油ホース(ドローグ)が当該機に接触したことが発端の事故です。V-22が所属するアメリカ海兵隊普天間基地は住宅密集地域にあり、なおかつ操縦士は異常な振動を感じたため、普天間まで戻ることをあきらめ、別の海兵隊基地に隣接する海岸に固定翼モードで緊急着水しました。

 本件は、緊急時のマニュアル(手順書)に従って、パイロットが最終判断として緊急着水を選択した形であり、その原因としては人的過失に分類される事故です。これに対してアメリカ海兵隊は、手順の再確認、シミュレーターによる訓練の強化、緊急時における対応確認の徹底を図っています。

ヒューマンエラーの排除が事故率低減の一番の近道

 そもそも「墜落しやすい機体」という印象の元になった、テスト飛行や運用試験中に起きた事故についても、徹底的に原因の洗い出しが行われ、対策が施されたことで、2度と同じような事故は起きないようになっていると言っても過言ではありません。

 たとえば過去、着陸中に右エンジンナセルに溜まっていた潤滑油が発火、併せて複合材のドライブシャフトも破損したことで左エンジンの動力が右側に伝えられず、1分足らずで墜落に至ったケースがありました。これについては、のちにエンジンナセルとドライブシャフトの構造を改めたことで、その後エンジン火災が起きた際には無事に着陸できています。


群馬県の相馬原演習場で陸上自衛隊と共同訓練を行うアメリカ海兵隊のV-22「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。

 2021年現在、V-22「オスプレイ」は作戦中の敵の攻撃による墜落を除くと、ほぼ事故の原因は「人的過失」に起因するものばかりです。ということは、事故率を0%に近づけるためには、常に適切な整備を怠らず、運用手順の見直しや操縦訓練の徹底によってヒューマンエラーを限りなく低減する。このことに尽きるのではないでしょうか。

 陸上自衛隊の航空科には、「旺盛な責任感と飽くなき向上心、探求心」という言葉があります。責任感を持ち、事故率低減の向上心、安全運用の探求を怠らなければV-22は「安全な航空機」になると筆者(斎藤大乗:元自衛官ライター/僧侶)は考えます。