【日本車がどうしても勝てない「聖域」】 アメリカでビッグ3のピックアップトラックが大人気の理由とは?
フォードF150は世界一売れている四輪車text:Kumiko Kato(加藤久美子)editor:Taro Ueno(上野太朗)
アメリカで40年近くに渡って、四輪車ナンバーワンの販売台数を誇る「フォードFシリーズ」は、かつて日本にも少数ではあるが近鉄モータースを中心とするフォード輸入組合各社によって販売されていた。
フォードFシリーズは、フォード社の屋台骨ともいえるピックアップトラックだ。かつては、ホイールベースなどの違いによってF150/F250/F350…と名付けられていたが、1999年にF150以外は「スーパーデューティシリーズ」として独立。以降、Fシリーズといえばほぼ、F150のことを指す(データによってはF250以上を含む場合もある)。
フォードF-150ラプターなお、販売終了するまでのフォード・ブロンコはF150をベースにしたSUVで、F150の荷台に屋根と後部座席が付いたクルマというくらいに近い存在だった。
ピックアップの国アメリカでは、長年にわたる超ベストセラーで、ライトトラックカテゴリーにおいてはもちろん、アメリカで販売される四輪車全体においても約40年、販売台数1位の座に君臨している。アメリカで販売台数1位となれば、それは、しばしば世界1位となることもよくある。
2018年にはなんと世界54か国合計で約108万台を売り上げて世界一を記録した。Fシリーズは商用利用も多く、2017年にフォードが発表した数字によると、廃棄物処理業者の81.7%、政府職員の78%、電気サービス業者の72.7%がフォードのトラックを使っているとのこと。
ビッグ3のトラックが例年上位占める
アメリカ四輪車の世界では販売台数のトップ3は以下のように、例年1位がFシリーズ、2位/3位がシボレー・シルバラードまたはラム・ピックアップと、いずれもピックアップトラックが占めている。
この傾向は長年続いており、1位は40年以上Fシリーズで2位/3位はたまに入れ替わるという状況。だいたい2位はシボレーになっているが、2019年はフルモデルチェンジしたラムの人気が非常に高く、前年比プラス18%で2位に躍り出ている。
シボレー・シルバラードまた、最新の販売台数データ(2020年1〜9月累計)においても、相変わらず上位はピックアップトラックで、4位以下に日本車が続く。
2020年1〜9月累計 米国自動車販売台数ランキング
1 フォードFシリーズ:22万1647台
2 シボレー・シルバラード:14万7484台
3 ラム・ピックアップ:15万6156台
4 トヨタRAV4:11万9214台
5 ホンダCR-V:8万8436台
2019年米国自動車販売ランキング(2019年/モデル別)
1 フォードFシリーズ:89万6526
2 ラム・ピックアップ:63万3694
3 シボレー・シルバラード:57万5569台
4 トヨタRAV4:44万8068台
5 ホンダCR-V:38万4168台
6 日産ローグ:35万447台
7 シボレー・エクイノックス:34万6049台
8 トヨタ・カムリ:33万6978台
9 ホンダ・シビック:32万5650台
10 トヨタ・カローラ:30万4850台
(出典:兵庫三菱)
いずれも、1〜3位はピックアップトラック、4位以下はシボレー・エクイノックス以外は全部日本車である。
米でピックアップが必要とされる理由
こうしてデータを見ると、トップ3が米国製ピックアップトラックは近年も変わることがなく、4位以下にずらりと日本車がランク入りしている。
特に近年強いのはトヨタRAV4に代表される小型SUVだ。ホンダCR-Vや日産ローグとともにトヨタ・カムリやトヨタ・カローラ、ホンダ・シビックを超える人気となっている。SUVでも乗用車でも日本車が圧倒的に強いことがよくわかる。しかし、米国ピックアップが占める「聖域」トップ3にはなかなか食い込めない。
トヨタRAV4この理由は何なのだろうか?
そもそも、アメリカではピックアップトラックの人気が高い。というのも、アメリカではピックアップトラックが必要とされる場所が非常にたくさんあるからだ。ピックアップトラックが活躍するおなじみのシーンと言えば農業や牧畜業だろう。
アメリカの農地は約3億9100万エーカーあり、その面積はアメリカ48州(ハワイ・アラスカを除く)の約20%にあたる。さらに、家畜の飼料を作るための土地と牧草地を合わせると、7億8100万エーカー超となり、アメリカ48州の41%にあたる。農地と家畜を養うための土地であの広大な本土の6割以上が使われていることになる。
農地や牧草地と自宅を移動するクルマとなれば、ピックアップトラック以外の選択肢はなかなかないということなのだ。ちなみに、アメリカ48州に占める都市部の面積の割合は、わずか3.6%である。
そもそも、ピックアップが必要とされる生活や仕事の環境が主流なのだから、ピックアップが売れるのは道理にかなっている。
日本車が「聖域」に食い込めないのはなぜ?
アメリカに本社を持つ大手マーケティング会社の広報担当者に話を聞いてみた。
「その理由はとてもシンプルである。ピックアップトラックとアメリカ人はとてもかかわりが深い。免許を取ってすぐ買う、乗るクルマといえば家にある古いトラックだったり、中古車店で買う安いトラックだったり…それはもう50年以上前から続いていることである」
トヨタ・タコマ トヨタ「アメリカ人はクルマ選びに関しては、日本の皆さんが思っているよりとても保守的であり、フォード、ダッジ、シェビーはこれまで数多くのピックアップトラックを販売してきたため、アメリカ人がピックアップトラックに求めているものを熟知している」
「タコマやタンドラなど、日本のピックアップトラックも性能や品質がよくスタイルもとても魅力的になってきた」
「しかし、長年アメリカ製のピックアップトラックを乗っているアメリカ人にしてみれば『いいクルマなのはわかる。だけど何か違う』という気持ちがあるのだと思う」
「もしくは、ふだんの足にカローラやローグに乗っていても、ピックアップだけは別物と考えているのかもしれない」
「かつて、20年以上前に日本でクライスラー・ネオンという小型車が販売された。安価でコンパクトなアメリカ車として仰々しく発売された。しかし、実際はほとんど売れまなかった。GMサターンやシボレー・キャバリエなど比較的小型なクルマもダメだった。右ハンドル化しても安くしても日本人が好むクルマにはなれなかった」
「日本製ピックアップトラックは品質も性能、耐久性もアフターサービスも非常によいので、これから売れていくと思うが、トップ3に入るような台数は難しいだろう」
たしかに90年代半ば以降、小型のアメリカ車が日本で販売されたがさっぱりだった。日本製ピックアップがそこまでズレているわけでは全くないが、やはりクルマに対して保守的なアメリカ人にとって「何か違う」のだろう。
とはいえ、近年トヨタ・タコマの人気がジワジワ上昇している。2017年は21位、2018年は14位、2019年は12位と年々、その順位を上げている。また、RAV4もとくに新型になってからは4位の座を死守しており、3位のラムまたはシルバラードとの差も10万台前後にまで縮まってきている。
日本車勢がアメリカ市場の「聖域」に食い込める日もそう遠くはないかもしれない。
