人材サービス大手のパソナグループが、9月から段階的に東京都・千代田区にある本社の主要機能を、瀬戸内海東部の離島・淡路島に移すことを発表し、話題になっている。兵庫県の島で、行くには神戸や大阪から橋を渡って車で約1時間。たまねぎや魚介類など、数多くの食材があることで有名だが、ここに本部機能に携わる社員約1800人のうち、1200人を移すという。

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 パソナの広報担当者は、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が普及し、ビジネスの環境も変わってきたことなどから、移転に踏み切ったという。また、自然災害などに備え、本部機能の東京一極集中を避ける狙いもある。さらにワーケーションのような場を併設し、新しい働き方を体験できる場所を今後作っていきたいとしている。

 パソナと淡路島のつながりは2008年にさかのぼる。地方創生として淡路島で人材誘致を始め、現在はおしゃれなカフェやレストラン、アトラクション施設など、幅広い観光業にも注力している。今回発表された計画を受けて、ネット上では「社員さんにとっては複雑な気持ちなんだろうなぁ」「これって、本社移転の名を借りた実質的なリストラじゃないのかね」といった声もあった。

 一方、1200人のパソナ社員がやってくる淡路島の住民の反応はどうか。淡路島観光協会の福浦事務局長は、「非常に期待している」という。その理由の一つが、「人口の流出問題」だ。島の人口は約13万人だが、毎年1000人ほど減少している。その中で、島で働く人・働く場が増えることへの期待は大きい。ネット上の批判的な意見についても「都会で勤めていた人には不便さもあるとは思う」と前置きした上で、「時間の流れがやはり都会よりはゆったりと流れますし、気持ちの部分で少し余裕を持ってお仕事できるかなと思った」と島の魅力を語った。また名産の食材や、仕事以外の趣味を見つけるにもいい環境であるとPRした。

 BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏も、1200人という大移動に「これはびっくりですね。かなりの人数です」と驚きを隠さず、「東京一極集中を避ける、新しい働き方を目指すなど、パソナの言っていることは一つ一つは全部正しい」と評価した。一方で、掲げる理想の高さ・美しさと、現実に起こり得る事態にギャップがあるとも指摘する。

 「大前提として淡路島はいいところだし、悪く言う気は全くない」と島の魅力を強調したうえで、都心から遠く離れた淡路島へ移る社員の劇的な生活環境の変化を課題にあげた。「今都内で働いている人たちにも生活がある。子どもには学校があり、配偶者が都内に勤めているかもしれない。『明日から淡路島に行ってください』と言われて、『はい、行きます』と即答できる人ばかりではないだろう。形を変えたリストラにもなりかねない」

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、国内でもリモートワークが加速度的に進んだ。その結果「必ずしも東京の一等地に高い賃料でオフィスビルを借りなくても、リモ―トで働けることが証明されてしまった」という神庭氏は、「これから『本社』というものはひとつの象徴、シンボルのような存在になっていくかもしれない。それを淡路島に置くというのも、一つの選択肢ではある」と説明する。

 ただ、その「シンボル」に1200人もの社員を連れて行く必要があるかどうか。大勢の社員が島内で暮らすとなれば、休日に社員同士が顔を合わせる機会も増えそうだ。「休みの日にまで会社の人と会うのは嫌だ、という人は少なくない。令和的な新しい働き方を突き詰めていった結果、オンとオフが密接に結びついた昭和な世界が出現するとしたら、なかなか興味深い現象だ」と、時代の逆行が生まれる可能性も指摘していた。
(ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)