先月、パチンコ業界関連でなかなか見過ごせないニュースが報じられた。全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)が1月中旬、来年1月末までに入れ替えが必要な"旧規則機"の台数が、全国のパチンコホールで計275万台にのぼると明かしたのだ。

もはや1年しか猶予はないこの期間内に、設置期限が迫っている旧規則機を毎月20万台以上撤去するという。これは相当無理のある話である。(文:松本ミゾレ)

パチンコ業界のデフォ?「交換率、営業時間、広告規制もバラバラ」


なぜ、土壇場になってパチンコ業界はあたふたしているのだろうか。ここには業界独特の、言葉は悪いが、ずさんと言わざるを得ない体質が影響しているように感じる。

今に始まった話ではないが、パチンコ業界は足並みが揃わないのがデフォだ。交換率は全国各地でバラバラだし、営業時間も異なる。それどころか、広告規制に従わないホールまである。地域ごとのルールも違うし、基本的にそのルールが完璧に守られることはない。

その最たる例が、迅速な旧規則機撤去にまつわる努力義務の"事実上の放棄"にある。「あと1年以内に旧規則機の撤去を急がないといけない」というのは事実だが、別に今までたっぷりと時間はあったのだ。

現に、昨年4月時点での全日遊連理事会では、旧規則機の取り扱いについて「2019年12月31日までに撤去」と決議している。しかし、この決議以降も、全国のホールの動きは鈍かった。

「バジリスク〜甲賀忍法帖〜絆」など、旧規則機の中でも高射幸性が認められていた、いくつかの機種は期限を迎えることもあって、最近ようやく撤去された。

しかしなぜか大阪府ではこの撤去日がずれ込み、2月3日時点でまだ稼働中だ。なんでも認定取得時期のズレのためということだが、何にせよこれほど足並みが揃わない業界もないだろう。

"自主的な撤去"という概念が欠落したホールは、元々この問題に際しては多く見受けられたが、大阪府ではそれがまさに悪目立ちした形になっている。

07年には4号機跡に「ベニヤ板」をはめ込む店舗も

ところで、僕はこの歯切れの悪い業界の態度を見ていると、以前にも似たような事態を目の当たりにしたことを思い出す。

2007年、パチスロ4号機と呼ばれる機種は設置期限を迎え、5号機という当時としては新基準の機種が導入されることが決まった。メーカーもその入れ替えを促進しようとしたが、いかんせんユーザーが4号機の射幸性に慣れていたため、出始めの5号機のぬるい出玉性能になびかなかったのだ。

すると、ホール側はすぐに入れ替えるよりも、できるだけ4号機で客を引きつける戦略を取るようになる。5号機の導入は進まないので、やがて、4号機の設置期限が来て撤去となっても穴埋めするものがない。そうして仕方なく、機種が設置されていたスペースにベニヤ板をはめ込んで、平気な顔で営業を続ける店も山ほどあった。

275万台の入れ替えをアナウンスした全日遊連だが、果たして現場はどれほど危機感を抱いてるのだろう。順調に毎月少しずつ入れ替えをしていけば、ユーザーもそれに慣れるはずなんだけども……少しでも稼げるホールにとっての賽銭箱を、そうそうさっさと撤去したくないという思惑もあるわけで。