MRJの事業戦略も練り直しが必要だ

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 国産小型ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」について、70席モデル(座席数76席)の開発を本格化することを明らかにした三菱航空機。一方で親会社の三菱重工業がカナダ・ボンバルディアと小型ジェット旅客機事業の買収交渉を進めている。MRJと買収事業を両翼に、早急に成長市場に飛び立つという路線は描けるのか。

 70席モデルについて7日に三菱航空機の水谷久和社長は「事業として(親会社である)三菱重工業の承認はまだ得られていない」と前置きした上で、「同クラスの機体にはない機能を搭載することになる」と話した。

 アレックス・ベラミー最高開発責任者(CDO)も「70席モデルは高い需要がある」とし、リージョナルジェット機(100席未満)の最大市場である米国を中心に市場を開拓する。リージョナル機の世界市場は今後20年で5137機の新造機が必要とみられ、北米とともに欧州や中国、アジア諸国などで旺盛な需要が期待できるという。

 一方、ボンバルディアの小型旅客機事業の買収について水谷社長は「三菱重工が検討中で答えが出ていないこともあり、コメントを控える」と語った。交渉は水面下で激しい攻防が繰り広げられている模様だ。

長期成長見据え サービス部門に照準
 三菱重工がボンバルディアの小型ジェット旅客機「CRJ」事業の買収交渉を進めていることが5日に明らかになり、翌日6日の三菱重工の株価は2・5%近く下落した。一方、ボンバルディアの株価は上昇した。投資家が小型機事業の将来性について、漠然と不安を抱いていることの表れとみられる。

 ただ、三菱重工が小型機事業を買収するのは、完成機事業の長期的な事業成長を見据えてのことだ。子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)が開発を進めている国産小型機のMRJは2020年半ばに90席モデルの初号機納入を控えており、70席モデルの開発にも乗り出す。その後は事業化と6000億円超えと言われる開発費の回収フェーズを迎え、そこに必要なピースを今回の買収で埋める構えだ。

 一般的に航空機は一度納入すると20年以上の運航が続き、完成機メーカーには機体のメンテナンスなどアフターサービス体制の構築が必要となる。サービス網を持たない三菱航空機にとって、「サービス体制の整備はMRJの事業化に絶対不可欠な要素」(関係者)となっていた。

 三菱重工はサービス部門を中心にボンバルディアと買収交渉を進めている模様で、「買収により人材も含めた整備拠点網と顧客基盤を一気に獲得する」(同)考えだ。CRJは18年末時点で北米や欧州を中心に約1200機が運用されており、三菱重工はこうした実績を高く評価している。

 一方、ボンバルディアは100―150席モデルの中型機「Cシリーズ」の苦戦で業績が悪化し、18年にエアバスに同事業を事実上売却。プロペラ旅客機事業もカナダの航空機メーカーに譲渡していた。残るCRJ事業も不振を極めており、新型機開発の凍結など撤退に向けた動きを模索。そこで浮上したのが三菱重工との交渉だった。

 両社の利害は一致しているようにみえるが、サービス部門だけを手に入れたい三菱重工と、開発や製造部門を含めた事業全体を売却したいボンバルディアに思惑のズレが発生している。三菱重工社内では「決して安くない買収で(ボンバルディアの)赤字工場まで引き受けるのか」といった声も上がっているようで、交渉の行方は極めて流動的だ。

ボーイングとエアバスの覇権争い
 ボーイングによれば37年までに、4万2730機の新造機が必要になるという。このうち小型機を中心とする単通路機は全体の73%を占め、小型機市場は今後も堅調に推移する見通し。MRJの当初納入計画は13年からだったのに対し、開発の遅延により実際の初納入は20年半ばになる見通し。この間に、世界の小型機市場は大きく変化した。