6月10日(現地時間)にいよいよ開幕するユーロ2016。元日本代表DFで、現在はガンバ大阪ユースチームの監督、WOWOWの解説者も務める宮本恒靖氏が大会の注目選手について語った。

 過去、ユーロで活躍し、その後、自らの人生を大きく変えた選手は多数います。今回も選手個々にフォーカスすると、ブレイクしそうな選手がたくさんいます。

 FWでは、まずアントワーヌ・グリーズマン(フランス)です。サイズは170センチ そこそこで体の厚みもなく細身ですが、シュート技術の高さ、ポジショニングのうまさ、スピードでメッシらにつづくスペインリーグのトップレベルのアタッカーです。アトレティコ・マドリードでも存在感を示しており、フランスのエースとしてプレーする今回は、小さな体で大きな旋風を巻き起こしてくれそうです。

 ロベルト・レバンドフスキ(ポーランド)も注目です。昨シーズン、バイエルンでブンデスリーガ得点王に輝くなど、ここ1年での成長がとにかくすごい。ポーランドでは攻撃の大黒柱で、彼に早めのクロスを入れるという得点パターンも確立されています。彼のプレーがポーランドの結果を左右するぐらいの絶対的な存在ですし、このユーロで輝くことができれば世界トップFWの座に君臨できる。彼のキャリアにとって非常に重要な大会になるでしょう。

 中盤は、本当に多くのタレントがいますが、個人的に注目しているのはダビド・アラバ(オーストリア)です。バイエルンではサイドバックも、センターバックもできるユーティリティプレーヤーですが、オーストリア代表では守備的なポジションに置くのはもったいない選手ですので、攻守に関われるボランチ起用が濃厚でしょう。

 彼は宇佐美(貴史)がバイエルンにいた頃、ともに試合に出られずに苦しんでいましたが、今やバイエルンでもオーストリア代表でも欠かせない選手になりました。ユーロでさらにワンランク上の高い評価を得られる可能性がある選手だと思います。

 スイスのグラニド・シャカもすばらしい選手ですね。左利きのボランチで23歳と若く、アーセナルへの移籍が決定した逸材で、スイスの中心選手。2009年U−17で優勝した世代で、ブラジルW杯でもプレーし、今シーズンはボルシアMGで活躍しました。ジェルダン・シャキリと並び、彼が活躍すればスイスはベスト16以上の結果を残せるでしょうし、彼の価値もさらに上がるでしょう。

 DFは、オーストリアのアレクサンドル・ドラゴビッチが注目です。17歳の時にオーストリアリーグのラピド・ウィーンでプレーし、その頃から将来を嘱望されていました。その後、バーゼル、ディナモ・キエフに移籍し、存在感を増していきました。185センチで空中戦に強く、競り合いにも負けないし、足元の技術も高い。オーストリアが躍進すれば、ビッグクラブからのオファーを勝ち取れる存在だと思います。

 注目の指揮官ですが、やはりドイツのヨアヒム・レーヴ監督ですね。就任が2006年ですから10年もの長期政権になっています。長くなるとフレッシュさがなくなり、マンネリ感が出てきますが、レーヴはそのデメリットを越えてきました。

 最強になったスペインを追い越すために、パスサッカーだけではなく、速く前に攻めるサッカーを実現しようと選手の組合せを考えるなど、新しいスタイルを構築。ブラジルW杯で勝つためにケルン体育大学と連携してさまざまなトレーニング方法を模索したり、漢方を取り入れたり、新しい試みをやってきました。

 その結果、ブラジルW杯で見事優勝。チームビルディングが非常にうまく、W杯優勝後の2年間も順調にチームを成長させてきました。

 2018年のロシアW杯までドイツを指揮すると思いますが、今回のユーロはレーヴ監督にとって、ひとつの集大成になると思います。それだけにどういうマネジメントを見せてくれるのか、非常に楽しみです。

 もうひとつ注目しているのが、世界のサッカーの潮流です。W杯で勝利したチームのサッカースタイルが、その後の世界の主流になると言われています。ブラジルW杯で優勝したドイツは「カウンター新時代」を築き、ポゼッションをするなかでも、より速く前に展開する時間を多くするスタイルを生み出しました。そのスタイルを目指すチームが最近は増えています。その流れを変えるような新しいスタイルのチームが出てくるのかどうか。

 単に試合の勝ち負けだけではなく、すこし先のサッカーのスタイルを垣間見ることができるのがユーロの面白さでもあります。チーム数が増えた分、そうした面白さが増すでしょうし、個人的には波乱が多い大会になることに期待したいですね。

佐藤俊●構成 text by Sato Shun