Googleの研究者らが「細菌に感染した6400万匹もの蚊」を、アメリカのカリフォルニア州とフロリダ州で野に放とうとしています。一体なぜ蚊を野に放とうとしているのか、このプロジェクトが自然界にどういった影響を及ぼすと考えられるのかについて、科学系メディアのLive Scienceが報じました。

Bradley White | LinkedIn

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Google wants to release 64 million bacteria-riddled mosquitoes across California and Florida. Here's why scientists are enthusiastic. | Live Science

https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/google-wants-to-release-64-million-bacteria-riddled-mosquitoes-across-california-and-florida-heres-why-scientists-are-enthusiastic

Googleの「Debug」というイニシアチブは2025年11月、カリフォルニア州とフロリダ州において合計6400万匹のイエカ(ネッタイイエカ)を放出する許可を、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)に申請しました。Debugの目的は、蚊の個体数を環境負荷が小さい方法で減らし、吸血するメスの蚊による感染症の媒介を減らすことです。

繁殖期に人間の血を吸うメスの蚊は、さまざまな感染症を媒介することで知られています。熱帯地域ではマラリアやジカ熱、デング熱といった病気を広めているほか、アメリカ南部ではウエストナイル熱やセントルイス脳炎などが蚊によって媒介されています。

Debugは過去10年間にわたり、「Wolbachia pipientis(ボルバキア)」という細菌を感染させたオスの蚊を放出することで病気を媒介する蚊を減らすプロジェクトに取り組んできました。ボルバキアに感染したオスと未感染のメスが交尾すると子孫を残せないため、徐々に蚊の個体数を減らす効果があります。

ボルバキアによる蚊の駆除について研究しているフロリダ大学のエリック・カラガタ助教は、「これは2011年頃から蚊の個体数を抑制するために積極的に用いられてきた技術です」と述べています。



by CDC

殺虫剤を用いた蚊の駆除は環境に有害な物質を残し、花粉媒介昆虫など人間にとって有益な生物や、生態系にとって重要な小動物まで減らしてしまう可能性があります。これに対しボルバキアは自然に存在する細菌であり、自然界に悪影響を及ぼすリスクが低いとのこと。

カリフォルニア大学リバーサイド校で公衆衛生の観点から蚊を研究しているカーティケヤン・チャンドラセガラン助教は、「ボルバキアを利用した戦略は一般的に種特異的であり、環境に新たな毒素を導入することはありません。重要なのは、ボルバキアはすでに多くの昆虫種に広く分布しており、遺伝子操作された生物ではなく、自然界に存在する細菌共生体であるということです。その観点から、ボルバキアを用いた戦略は現在利用可能な蚊の駆除方法の中でも、環境に最も優しい方法のひとつと言えるでしょう」と述べました。

Debugの主任科学者であるブラッドリー・ホワイト氏はビジネス向けSNSのLinkedInに投稿した声明で、すでにDebugは4つの大陸でボルバキアに感染したオスの蚊を放ち、メスの個体数を90%以上削減することに成功してきたと主張。また、オスの蚊は花の蜜などを主食としているため人間の血を吸うことはなく、放出による感染症の媒介といったリスクも低いと説明しています。

EPAは2026年6月5日に終了するパブリックコメントの受け付け期間を経て、Debugのプロジェクトに許可を与えるかどうかの最終決定を下す予定です。許可が下りた場合、Debugは今後2年間でカリフォルニア州に最大3200万匹、フロリダ州に最大3200万匹のボルバキアに感染したオスの蚊を放つとのこと。



自然界に大量の蚊を放つことには未知数の部分もあるものの、チャンドラセガラン氏は生態系に大きな混乱が生じるとは考えていません。確かに多くの動物は蚊をエサとしているものの、捕食者のほとんどは雑食性でありその他のさまざまな昆虫もエサになるため、局所的な蚊の個体数減少が大きな連鎖反応を引き起こす可能性は低いそうです。

チャンドラセガラン氏は、「公衆衛生の観点から見ると、ネッタイイエカの個体数を減らすことは大きなメリットをもたらす可能性があります。なぜなら、この種はウエストナイルウイルスをはじめとするいくつかの病原体の重要な媒介昆虫だからです。現在の知見に基づけば、安全かつ持続可能な方法で個体数抑制が実現できた場合、公衆衛生上のメリットは生態系へのリスクを上回る可能性が高いです」と述べました。