日本の塩野義製薬が開発した新型コロナ治療薬「ゾコーバ」が患者の同居人の発症を防ぐことが判明

日本の塩野義製薬が開発したゾコーバ(エンシトレルビル)は、軽度〜中度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬です。COVID-19患者の同居家族を対象にした臨床試験により、エンシトレルビルには「COVID-19患者の同居人の発症を防ぐ効果」があることが示されました。
Ensitrelvir for Covid-19 Postexposure Prophylaxis in Household Contacts | New England Journal of Medicine
At last, a pill that can prevent COVID after exposure to infected people
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01546-0
A pill can stop people from developing COVID after being exposed to the virus, trial finds | Live Science
https://www.livescience.com/health/coronavirus/a-pill-can-stop-people-from-developing-covid-after-being-exposed-to-the-virus-trial-finds
記事作成時点ではCOVID-19のパンデミックから6年が経過し、世界的な都市封鎖を引き起こすようなことはなくなりました。しかし、依然として高齢者や免疫系が弱っている人にとっては危険な感染症であり、より有効な治療法や予防法の開発が必要とされています。
日本やアメリカなどの国際研究チームは、塩野義製薬が開発した抗ウイルス薬のエンシトレルビルが、「新型コロナウイルスに感染した後の発症リスク」を軽減するかどうかを調査しました。エンシトレルビルは新型コロナウイルスが自己複製するために用いる3C様プロテアーゼという酵素を阻害し、ウイルス複製を抑えることで作用します。
たとえば、同じ家に住む家族やルームメイトがCOVID-19を発症した場合、可能な限り家庭内で自主隔離を行ったとしても、感染リスクをゼロにすることは困難です。しかし、エンシトレルビルなどの抗ウイルス薬が新型コロナウイルスにさらされた後の発症リスクを軽減できれば、同居家族やルームメイトがこれらの薬剤を服用すれば発症を防ぐことができるというわけです。

研究チームは2023年6月〜2024年9月の間に、同居家族がCOVID-19を発症したものの自身はウイルス検査で陰性だった2000人以上を対象に臨床試験を実施しました。被験者のうち、約半数は同居家族の発症から72時間以内にエンシトレルビルの服用を始める実験群に、残りの半数はプラセボ(偽薬)を服用し始める対照群に無作為で割り当てられたとのこと。
被験者は5日間にわたってエンシトレルビルまたは偽薬を服用し、COVID-19の症状や副作用が出たかどうかが調べられたほか、同居家族の発症から10日目までを主要評価として調べました。なお、今回の臨床試験では被験者本人だけでなく、研究者も被験者がどちらに割り当てられたのかを知らない二重盲検法が採用されていました。
実験の結果、偽薬を服用した被験者の9%がCOVID-19の症状を示したのに対し、エンシトレルビルを服用した被験者では2.9%しか症状を示しませんでした。また、10日目までのウイルス検査では、症状の有無に関係なく偽薬を服用した被験者の21.5%がウイルス陽性を示しましたが、エンシトレルビルを服用した被験者では14%にとどまったと報告されています。
また、被験者の一部には副作用がみられましたが、その割合はエンシトレルビルを服用した被験者も偽薬を服用した被験者も15%程度で、両者に大きな差はありませんでした。報告された副作用には、善玉コレステロールの一時的な減少や血中脂肪濃度の上昇といったものが含まれています。

今回の臨床試験では、世帯の規模や被験者が社会的距離を保っていたかどうかなど、新型コロナウイルスの家庭内感染に影響する要因については考慮されていませんでした。また、妊婦やエンシトレルビルと相互作用する可能性がある薬を服用している人は、被験者に含まれていません。
それでも、論文の筆頭著者でバージニア大学の病理学教授を務めるフレデリック・ヘイデン氏は、「これは適切に実施された第III相プラセボ対照二重盲検試験において、家庭内で新型コロナウイルスに暴露した人々を保護するために、経口投与が容易で適切な時期に服用すれば有効な薬剤が実在することを、初めて明確に実証したものです」と述べました。
なお、すでにエンシトレルビルは日本において、COVID-19の予防薬としての承認を受けています。学術誌のNatureによると、アメリカやヨーロッパの規制当局もエンシトレルビルをCOVID-19予防薬として承認することを検討中で、アメリカでは1カ月以内に判断が下される見込みだとのことです。
