子どもが大事にされる社会とは? 卵子提供で生まれた少年と育ての親の別れを通し、「よりよく生きること」を考える【著者インタビュー】

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出産経験のない女性のもとに、ある日突然「あなたの子どもです」と少女が訪ねてくる。少女は、女性の“卵子提供”によって生まれた子どもだった--。『egg わたし、あなたの子どもです。』(鳥野しの/KADOKAWA)は、他人の卵子や精子を利用することで誰でも子どもをつくることができる制度“egg”がある架空の社会の物語。
--レシピエント(卵子提供で生まれた子)の少年を育てていた女性は、子どもの夢を叶えたい思いと経済的事情の間で板挟みになっていました。そんなとき、「あなたの息子を引き取りたい」と連絡が届きます。女性は葛藤の末、少年との別れを選択。やがて大人になった少年は当時を振り返り「あのとき俺の手を放してくれてありがとう」と語り…。どのような思いでこのふたりの着地点を描いたのでしょうか。
鳥野しのさん(以下、鳥野):好きなドラマに「しがみつくより手放すほうが強い力を必要とする」というような格言が引用されていて、それが心に残っています。「ボールを掴んだまま自分でタッチダウンするか、それとも味方を信じてパスを出すか」という局面で、「一緒にいたい」という執着を抑えてベストな判断をしてくれた彼女への感謝のあらわれとして、このセリフを選びました。
--子育ては一筋縄ではいきませんよね。烏野さんご自身は、子を育てることをどうあってほしいと感じていますか?
鳥野:共同体の問題はもっとも弱い立場の人に現れると考えているので、子どもが大事にされる社会は良い社会だと思います。子どもたちにはそういう社会の中で育ってほしいです。
--親子でも家族でもないけど大切な存在について…それはどんなつながりだと想像されますか?
鳥野:たとえ、その後会えなくても、ずっと心で話しかけることができる相手が確かに存在したということは、宝くじに当たったような幸運だと思います。
取材・文=吉田あき
