これは間違いない。トラックパッドで操作する「Steam Controller」を試してみた
Valveが発売した新たなゲームコントローラー「Steam Controller」。PCゲームプラットフォーム最大手のSteamによる、いわば“純正”のPCゲーム向けのコントローラーです。
Steam Controllerの最大の特徴はやはり中央に大胆に設置された2つのトラックパッドでしょう。
個人的には基本的にPCゲームにキーボード&マウスを使う「キーマウ派」ですが、普段からSteamでプレイしている身としてはかなり気になる製品です。実際、キーマウに慣れていてもジャンルによってはコントローラーのほうが遊びやすいタイトルもありますしね。
トラックパッドも含めて、このコントローラーがどんな使い心地か気になるところ。
そんなSteam Controllerを米GIZMODO編集部が実際に使ってレビューしています。果たしてその使い心地はどうなのか、見ていきましょう。
PCで行なうことのなかで、ゲームは数少ない癒しのひとつ。ただ、実際にゲームをしているときは、キーボードとマウスを握ってモニターに前かがみになり、快適とはいえなかったりします。
そんな状況を変えてくれたのが、100ドル(日本価格は1万7800円)のゲームコントローラー「Steam Controller」です。
なぜなら、お気に入りのRTS(リアルタイムストラテジー)やCRPG(コンピューターRPG)といったゲームを、リラックスした姿勢で遊べるようになったからです。端的にいえば、「PCゲームをソファで快適に遊ぶためのコントローラー」といった感じ。
とはいえ、このコントローラーがすべてのゲーマーにとって最高の体験をもたらしてくれるわけではありません。たとえば、ゲームごとに操作設定をカスタマイズするのを面倒と感じる人にとっては、Steam Controllerは少々扱いづらい一品かも。そういった方には、もっと安くて優れたエルゴノミクスのゲームパッドなどのほうがオススメです。
開発元のValveは、Steam Controllerについて「マニア向け」製品という狙いはないと語っていました。
基本的には標準的なコントローラーのデザインで、4つのボタンと十字キーが搭載されていて、サムスティックは2本。そして、コントローラーの中央には2つの正方形のトラックパッドが搭載されています。
スティックのようにも使えて、親指で動かすマウスのようにも使える。これがSteam Controllerの特徴であり、独自の要素です。
Steamハードウェア構想の最初のピースのようなもの
Steam Controllerはそれ自体がPCゲーム用コントローラーとして十分機能します。が、より正確にいえば、ValveのPCとコンソールのハイブリッドゲーム機「Steam Machine」やVRヘッドセット「Steam Frame」などのハードウェアとともに使用するものです。しかし、現時点でどちらも発売されていません。
つまり、Steamのハードウェア構想の一部であり、先行して発売されたのがこのゲームコントローラーなのです。そして、「PCゲームをいかにリビングで快適に遊べるか」の最初のプレビューでもあります。PCゲーミングはなかなか安くはならないでしょうが、少なくとも快適にはなるはずです。
ValveプログラマーのPierre-Loup Griffais氏に話を聞いたところ、同氏はSteam Machineの価格や発売時期は近いうちに明らかになるかもしれないと示唆していました。ただし、価格については「同等の構成を持つPCと同じくらい」になることも強調しています。まあ、安くはないですよ、ということですね。
Steam Controllerの価格は、優れたバッテリー持続性能も含めれば妥当なラインだと思います。日本ではKOMODO STATIONから購入可能です。
手が小さい人は注意が必要
2015年に登場した初代Steam Controllerを使ったことがある方もいるでしょう。スティック部分を丸々トラックパッドに置き換えるというかなり大胆なデザインでした。むしろ大胆すぎたかもしれませんね。
それに対して今回の新型Steam Controllerは、PlayStation 5のDualSenseなどのデザインに慣れた人には、とても自然に感じられるでしょう。左右対称のスティック配置で、Xbox系のコントローラーのようにスティックが十字キーの上にあるようなデザインではありません。
画像でもわかるとおり、スティックの下に左右2つのトラックパッドがあります。これによってコントローラー全体が四角っぽくなり、一見するとサイズが大きくて持ちにくそうに感じます。しかし、実際のサイズはPS5コントローラーとほぼ同じ幅と高さなのです。
違いとしては、2つのトラックパッドがあることによって、スティックがフェイスボタン(ABXYボタン)に近くなっていること。
個人的には、使い始めてすぐに心地良いポジションを見つけられました。一方、手が小さい同僚はスティックやボタンに指を伸ばさなければならないと不満を漏らしていましたね。
35時間連続稼働のバッテリー
ずんぐりした見た目に反して、Steam Controllerの重さは292g。これはPS5のDualSenseとほぼ同じ。より大きな8.39Whバッテリーを搭載しているのに、です。
同梱される充電パックは2.4GHz接続用のレシーバーも兼用。このパックは磁気式で、画像にある背面の上部に装着するかたちです。地味な点ですが、この接続は常にケーブルが上向きになるように着けなければならないというのが少し残念なポイントでした。つまり、クレードルのような充電スタンドの形式だったらもっと良かったな、と。
ただ、器用なSteamコミュニティーの面々なら、すぐにでも専用スロット付きのクレードル用の3Dプリントデータを作るんじゃないかな、とも期待しています。
このパックは1つに最大4台のSteam Controllerを接続可能です。ちなみに、いずれ登場するSteam Machineには、このパック機能が内蔵される予定とのこと。
Valveによれば、35時間以上の連続プレイが可能なバッテリー性能とのこと。実際に2週間使ってみて、何度か長時間プレイもしましたが、25時間以上使っても余裕がありました。バッテリー性能は十分だと思いましたね。
手軽に接続できる充電パックもあるため、充電が切れて困る場面は少ないでしょう。あとは、SteamのUI上で、もっと簡単にバッテリー残量を確認できれば完璧ですね。
マウスのように使うトラックパッド
PCゲームにおいて、操作性の幅広さではキーボードとマウスが一番でしょう。しかし、Steam Controllerは、これまでコントローラーでは扱いにくかったジャンル、たとえばRTSやCRPGでも快適な操作を可能にしてくれます。
ストラテジーゲーム『Total War: WARHAMMER III』でSteam Controllerを試し、操作設定を調整しました。たとえば、右トラックパッドをマウスのクリックとして割り当て、背面グリップのボタンをカメラ操作に割り当て。これによって右トラックパッドを押してユニット選択をしつつ、ズームイン/アウト操作も可能に。
ボタン配置を覚えるのに若干慣れが必要でしたが、普通のコントローラーより操作しやすくなりました。
ただ、欲をいえばトラックパッドのトリガーの反応はよりマウスっぽくしてほしかったですね。アクチュエーションポイントを浅くして、もっと“クリック感”がほしいと感じました。実際、Steam Controllerとしてもトラックパッドをマウス的な機能として売りにしているわけですしね。
このトラックバッド=マウス方式は『Baldur’s Gate III』のような見下ろし型CRPGでも応用が可能です。以前Steam Deckで協力プレイをしていたとき、PCで遊んでいる相手と比べて私のターンはいつも時間がかかっていました。インベントリ内のアイテムが増えるほど、通常のコントローラー操作は煩雑になっていくからです。
ですがSteam Controllerで試してみると、ホットバーへ簡単にアクセスできるので、ラジアルメニューで延々とアイテムホイールを回さなくても済むわけです。
ほかにもトラックパッドやほかのボタンにも割り当てることで、錬金術やマップなどへすぐアクセスできるようになります。ただ、これらのカスタマイズは、限られたボタンの中で膨大な割り当てオプションから自分の見合う設定を見つける作業になります。
Steam Controllerはトラックパッドや割り当て可能な4つの背面グリップボタンなど、カスタマイズ性の高いゲームコントローラーであり、それが非常に魅力的です。さらに、ソフトウェア側で、トリガーの感度なども細かく調整可能です。
一方で、そのために設定や割り当てオプションともにらめっこしなければならないわけです。理想の操作環境の構築には、ゲームタイトルごとに細かい調整をする覚悟が必要です。
次世代のTMR磁気スティック
PlayStation、Xbox、Nintendo Switchなどの純正コントローラーは、ポテンショメータースティックが採用されており、基本的にはいずれ壊れるものです。ポテンショメーターは、スティックの傾きを認識して動かすため、使い続けると摩耗していきます。その摩耗やホコリなどの汚れによってスティックが勝手に動くいわゆる「ドリフト現象」が発生することがあるわけです。
現在サードパーティー製のコントローラーの多くは、ホールエフェクトスティックへと移行しています。ホールエフェクトは、磁気センサーを用いることで物理的な接触なしに傾きを検知する技術です。これによって摩耗しにくくなり、ドリフト現象も起きにくいのが特徴です。
そして、Steam Controllerに採用されているのが、TMR(トンネル磁気抵抗)という技術を駆使した磁気スティックです。これは、磁場による電気抵抗の変化を検知する技術で、非接触なのでドリフト現象も起きにくいです。さらに精度も高く、省電力という特徴もあります。ホールエフェクトスティックを使ってみて、感触が軽すぎると感じたことがありました。しかし、こちらは適度な抵抗感があって感触が優れているのも特徴といえるでしょう。
ちなみに、そのほかのボタンの感触も良好です。ABXYボタンも押したときにしっかりとした感触がありますし、過度にカチカチしません。十字キーは個人的には少し小さいと感じましたが、斜め方向への誤入力がしにくい操作感を持っています。背面のグリップボタンも私の手には、位置が完璧で使いやすかったですね。
振動やジャイロも性能は上々
改めて言いますが、やはりSteam Controllerの主役はトラックパッドでしょう。
これはSteam Deckのトラックパッドの改良バーションといえるもので、本当に快適に使えます。繊細なハプティッククリックによって、自分の指の位置を把握しやすいです。ただ、少し気になるのは、トラックパッドを押し込んでクリックしようとしたときに、感度が高すぎてカーソルがズレてしまうことがある点ですかね。
Steam Controllerの振動はやや控えめです。しかし、4つのハプティクスモーターによる繊細な振動表現は、Switch 2 ProコントローラーやPS5 DualSenseにも匹敵するレベルです。
一方でジャイロ機能は少し微妙な部分もありましたね。グリップセンサーにより、手を離してもう一度握るとジャイロが有効になるという仕組みですが、何度試してもジャイロの有効化は思うようには使えませんでした。
ただ、ジャイロそのものの精度は低いわけではありません。感度を調整した後にシューターゲームで試したところ、トラックパッドと併用してヘッドショットを狙えましたし。とはいえ、やはりここでもゲームごとの設定の調整が必要になる点は注意しておきましょう。
Steam ControllerはPCをコンソール化するか
Steam Controllerは、Steam Machineに先んじて発売されましたが、これだけでPCを丸々コンソール体験に置き換えるわけではありません。
たとえば、スリープ状態のPCをコントローラーだけでは起動できません。PCが稼働している場合は、コントローラーのSteamボタンを押してSteamアプリを開き、もう一度押すことでBig Pictureモードを表示することはできます。
これによって簡単にゲームを選択できるとはいえ、結局は音声の出力切り替えやWindows設定の変更などでBig Pictureモードを閉じることになります。こうしたときについキーボードのAlt+Tabで表示ウィンドウ切り替えをしたくなる場面も多々あります。
それでもSteam Controllerはより良いPCゲーム体験への道筋を描いてくれています。トラックパッドのおかげで各種ランチャーの操作も簡単にできます。もし、Steam ControllerとSteam Machineが、Steam Deckと同様の即時スリープ&復帰機能を搭載すれば、Steamライブラリを遊ぶ上で最も快適な手段になると思います。
キーボードとマウスはどんなコントローラーよりも細かい操作が可能になります。コントローラーのボタンの数と比べればそれは明らかです。Steam Controllerも、トラックパッドの導入とカスタマイズ性で、それに近い体験を目指すものといえるでしょう。キーマウ模倣体験といえば、たしかにそれまでですが。
それでも、好きな趣味を楽しむのに、まっすぐに椅子に座って前かがみにモニターを見つめるのが快適ではないことも事実です。年を重ねれば余計にそう思います。Steam Controllerは、Steam Machineが登場して初めて完成されるものなのでしょう。それでも、Steam Controllerは私が求めるものをほぼすべて備えてくれています。
現時点でコンソールがなくても、ゲームコントローラーとして非常に満足しています。願わくば、細かい部分が修正され、機能強化した、いわば「Steam Controller Pro」が登場したなら、私は天にも昇る気持ちになれるでしょう。

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