片頭痛患者の3割が経験!嘔吐を伴う辛い発作から「回復する3つの手順」

片頭痛に伴う吐き気や嘔吐は、日常生活に大きな支障をもたらします。なぜ片頭痛に嘔吐が伴うのか、その背景には脳幹や三叉神経、胃の運動機能といった複数のメカニズムが関わっています。本章では、吐き気・嘔吐が起こる仕組みと、症状の重症度に応じた対処法について丁寧にご説明します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

片頭痛に伴う嘔吐のメカニズムと対処

片頭痛による嘔吐は、単なる随伴症状ではなく、生活の質を著しく低下させる深刻な問題です。そのメカニズムを理解することが、適切な対処につながります。

なぜ片頭痛で吐き気や嘔吐が起こるのか

片頭痛に伴う吐き気や嘔吐は、脳幹にある嘔吐中枢の活性化によって引き起こされます。片頭痛が起きると、顔や頭の感覚を伝える太い神経(三叉神経)の周りで炎症が起きます。この炎症の刺激が、脳の奥深くにある「吐き気を感じるセンサー(CTZ:化学受容器引金帯)」に伝わり、さらに「嘔吐中枢」を刺激してしまうため、強い吐き気や嘔吐が引き起こされるのです。

また、片頭痛発作中は胃の運動機能が低下し、胃内容物の排出が遅れることが知られています。この「胃排出遅延」により、胃の不快感や膨満感が増強され、吐き気をさらに悪化させます。この状態では経口薬の吸収も低下するため、鎮痛薬を飲んでも効果が現れにくくなることがあります。

嘔吐の程度と片頭痛の重症度

嘔吐の有無や頻度は、片頭痛の重症度の指標となります。国際頭痛分類では、片頭痛の診断基準の一つとして「悪心または嘔吐」が含まれており、片頭痛患者さんの約80%が吐き気を、約30%が実際の嘔吐を経験します。嘔吐を伴う片頭痛は、日常生活への支障度が高く、仕事や学業を中断せざるを得ない状況になることが多いです。

小児の片頭痛では、嘔吐がより顕著に現れる傾向があります。子どもの場合、頭痛よりも腹痛や嘔吐が主症状となる「腹部片頭痛」や「周期性嘔吐症候群」という形で現れることもあります。これらは片頭痛の変異型と考えられており、成長とともに典型的な片頭痛へと移行することがあります。

嘔吐への対処と制吐薬の使用

嘔吐症状への適切な対処は、片頭痛全体の管理において重要な位置を占めます。

嘔吐時の応急処置と注意点

嘔吐が始まったら、誤嚥を防ぐために横向きに寝る姿勢を取ることが安全です。嘔吐後は口をすすぎ、少量ずつ水分を摂取して脱水を予防します。ただし、一度に大量の水分を取ると再び嘔吐を誘発する可能性があるため、スプーン1杯ずつなどゆっくりと摂取することが推奨されます。

吐き気がある段階で経口薬を服用しても、胃排出遅延のために吸収が悪く、効果が不十分になることがあります。そのため、片頭痛発作の初期段階、できれば吐き気が強くなる前に薬を服用することが理想的です。すでに嘔吐が始まっている場合は、坐薬や点鼻薬、注射製剤など、経口以外の投与経路を考慮する必要があります。

制吐薬と片頭痛治療薬の併用

制吐薬は吐き気そのものを抑えるだけでなく、胃の運動を改善することで鎮痛薬の吸収を促進する効果もあります。ドンペリドンやメトクロプラミドといったドーパミン拮抗薬は、消化管運動促進作用と制吐作用を併せ持つため、片頭痛治療において有用です。

これらの制吐薬は、トリプタン製剤やNSAIDsと併用することで、片頭痛治療の効果を高めます。発作の初期に制吐薬を先に服用し、10~15分後に鎮痛薬を服用するという方法が推奨されることもあります。ただし、制吐薬の中には眠気やふらつきなどの副作用を持つものもあるため、使用方法や注意事項については医師の指導を受けることが重要です。

まとめ

片頭痛は適切な治療によって、発作の頻度や重症度を大幅に軽減できる疾患です。予兆から閃輝暗点、嘔吐に至るまでの各段階を理解し、自分の症状パターンを把握することで、早期対処が可能になります。生活習慣の見直しと適切な薬物療法の組み合わせにより、片頭痛と上手に付き合いながら質の高い生活を送ることができます。症状が日常生活に支障をきたしている場合は、我慢せずに専門医療機関を受診し、自分に合った治療法を見つけることが重要です。片頭痛は決して「我慢すべき症状」ではなく、適切な医療介入によって管理できる疾患であることを理解し、積極的に治療に取り組みましょう。

参考文献

神経治療学会「頭痛の診療ガイドライン2021」

厚生労働省「頭痛について」

日本神経学会「頭痛診療のガイドライン」