元生保レディの30代女性が振り返る、歪な現場の姿。年収は100万円アップしたが、夜は飲み会の「無料コンパニオン」扱い
そう思っている人は多いだろう。だが「しつこくする側」にもれっきとした言い分がある。会社からは「愛嬌で距離を詰めて」とけしかけられ、職域先では契約する気もないのに距離を詰めてくる男性社員、飲み会では無料のコンパニオン扱い……。元生保レディの真奈美さん(仮名・30代)に「職域営業」の実態を語ってもらった。
◆12時のチャイムが戦場の合図
「わたしは都市部の大企業に出入りしていましたが、エレベーターホールには自分を含め、複数社の生保レディがずらりと並んでいて。まるで女性を指名するお店みたいでしたよ(笑)」
通う頻度は基本的に毎日。12時のチャイムとともにオフィスから社員がどっと吐き出されてくるのを、菓子袋とアンケートを手に待ち構える。大半の社員は目も合わせず通り過ぎていく。それでも笑顔で声をかけ続けるのが仕事だったという「無視される時間」に慣れるまでが、まず最初の試練だった。
「冷たくされるより厄介だったのは、やけに優しい人のほうです。保険に関心がないのに、個人に関心を持って寄ってくる人が怖かったですね」
◆契約の動機は女性との接点?
生保レディが職域先でどう見られているか、思い知らされた出来事がある。ある男性社員に保険を提案し、契約に至ったときのことだ。なぜ契約してくれたのかを聞くと、「上司に『この業界だと女性との出会いがないんだから、保険の姉ちゃんと繋がっておきなよ』と言われたんだよね」という。契約の動機がそもそも保険ではなく、女性との接点だったのだ。
職域営業の商談は、相手の仕事終わりに設定されることが多い。必然的に夜8時、9時と遅い時間帯になりやすく、「もうこんな時間だし、ご飯食べて帰りません?」と誘われるケースも少なくなかったという。向かう先は職場の飲み会で使うような居酒屋だ。商談直後のタイミングで言われれば断りにくい。
いつもの職域現場とは違う場になると、相手の態度も変わる。「いつも頑張ってるね、えらいよ」などと言いながら頭をぽんぽんとされる。そのたびに真奈美さんは、自分が”対等な仕事相手”ではなく“都合のいい女”として扱われていると感じたようだ。
◆枕営業は「地獄への入り口」
時には「やっぱり枕営業ってするの?」と平気で聞かれ、露骨に誘われたこともあったという。もちろん真奈美さんは応じていない。それは倫理観の問題だけではなく、応じたら最後、もっと深い地獄が待っているからだ。
「枕営業で契約がとれても、余計にしんどくなる。それがこの仕事の罠なんです」
生命保険は契約から14か月以内に解約されると、販売手数料の返還を求められるケースが多い。つまり最低14か月は契約を維持しなければならない。一度体の関係を持てば、それを盾に何を要求されるかわからない。
「この仕組みを知っているから、実際に枕営業する人って意外といないかも。多分、フィクションの世界だけなんじゃないかな。もし、ノルマがしんどくて枕営業でなんとか……と考えている人がいるなら、やめたほうがいい。ドツボにハマりますから」
◆未契約のまま、だらだらと関係が続く
一方で、契約する気などさらさらないのに距離を詰めてくるパターンもある。「今は知り合いのところの保険に入っているから、新しく入ることはできないんだけど」と真っ先に「契約はしない」という予防線を張っておきながら、「紹介できる人はいるよ」「もっと職場に馴染めるように親睦を深めよう」なんて都合のよさそうな提案をしてくる。そうやって「あなたの味方ポジション」を取りにくるのだ。
