さらに中林氏は、通貨秩序への影響も指摘した。「イラン中国の人民元でこの通行料を取ろうということも言っているようです。つまり過去50年間ペトロダラーと言われて原油はドルで決済されてきたんですけれども、これが人民元に取られるという歴史的な大転換をも意味するわけです」と述べた。

■変わりゆく国際秩序
今回の紛争は、アメリカ主導の国際秩序が抱える矛盾を浮き彫りにしている。
ヨーロッパ国際政治が専門の東野篤子氏は、混乱の中で存在感を高める国としてこう分析する。「誰が勝者で、誰が敗者なのかという話なんですけれども、これ明らかに中国が勝者でしょうと。数十年前までは考えられなかったような中国が最も正論を吐いちゃうみたいな、そしてみんなは正論を言えないみたいな状況が訪れており、中国は正論を言うだけではなくて、この状況を中国の良いように使う自由が他の国よりもずっとある」。
中国政治が専門の阿古智子氏は、イラン中国の強固な関係に触れながら、日本の立場についてこう指摘した。「中国、あるいはイランのような権威主義国家と、どうやって向き合うかということを考えていかなければいけない。中国アメリカがどう動くか、どのようにこの二大国が交渉してディールに持ち込むかということを見ながら、自分の位置を決めるしかないような状況にあるんじゃないかなと思っています」。
中林氏はアメリカ自身の変化をこう見る。「今アメリカを見ていると、民主主義のお手本であり続けることにアメリカ自身が非常に疲れてしまったというところが見て取れます」。トランプ政権の登場により、「大義名分」より「国益」が優先される時代への転換が、同盟の信頼性を揺さぶっている。

■日本はこれからどうあるべきか
専門家たちが共通して訴えたのは、「どちらか」という二元論からの脱却だ。
現代中国が専門の阿古智子氏は、対中関係についてこう述べた。「中国なんて縁を切れ、みたいな感じで、その縁切れるわけないですよね。隣の国だし、あれだけ大きな市場があって、多くの人たちが中国から日本に今、来ています。そういうことを考えると、どっちがいいかっていうような議論をやめるべきですね。やっぱり交渉しなきゃいけないです。駆け引きしなきゃいけないですよ」。日本の財政力や影響力の低下という現実を直視しながら、アメリカ・ヨーロッパ・中東との複合的な駆け引きの中で、中国や台湾との関係を精緻に設計していく必要性を訴えた。
坂梨氏はエネルギー政策の見直しをこう提言する。「中東への依存度を減らしていくこと、そしてエネルギー源を多角化させていくことが重要です。これが正解、という出来合いの回答はありませんので、今この機会に改めて、真剣に考えていかなければなりません」。
異なる意見に耳を傾け、自ら考え、ルール作りに関わっていく。それが、不安定な世界の中で日本の安全と民主主義を守る道となるのではないか。

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