『VIVANT』最新作の2クール連続放送でさらに加速か…「TBSドラマ」が一強のワケ
テレビドラマはTBSの時代に突入
いま、民放ドラマのトップをひた走るテレビ局と言えば「TBS」と誰もが答えるだろう。
近年の作品を振り返るだけでも、日曜劇場(日曜午後9時)では『半沢直樹』『VIVANT』といった社会現象級の盛り上がりを見せる作品が生まれただけでなく、『テセウスの船』『ドラゴン桜』『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』といった幅広いジャンルのドラマも高視聴率をマークし、圧倒的な存在を放っている。
もちろん、日曜劇場だけではない。火曜午後10時枠は数多くの女性視聴者に支持されており、『逃げるは恥だが役に立つ』『義母と娘のブルース』『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のような胸キュン要素や家族愛を掛け合わせたパッケージがすっかり定着した。
また、金曜午後10時枠では『アンナチュラル』『MIU404』『リコカツ』『最愛』『不適切にもほどがある!』といった、放送後も熱狂的なファンを抱えるドラマが立て続けに放送されている。
つまり、複数の時間帯に異なるジャンルのドラマをスマッシュヒットさせ続けているのが、今の「TBS」なのだ。
また、1月クールの日曜劇場では、構想3年の完全オリジナル企画だった、鈴木亮平主演の『リブート』が放送。冤罪を着せられた善良なパティシエ、裏社会にも通じる悪徳刑事という二役を鈴木が演じ分ける大胆な設定は、いかにも日曜劇場らしいチャレンジングな内容で、同クールトップの平均世帯視聴率11.0%(ビデオリサーチ社調べ、関東地区)と高い数字をマーク。有終の美を飾った。
さらに、7月からはテロ組織、公安、国家間の思惑が絡み合う壮大なアドベンチャードラマ『VIVANT』の続編が2クール連続で放送されることが決定。また、『silent』『海のはじまり』などのヒット作で知られる注目の若手女性脚本家・生方美久の新作ドラマが発表されるとも言われている。
4月12日からスタートした、堤真一主演の日曜劇場『GIFT』こそ、初回視聴率9.4%(ビデオリサーチ社調べ、関東地区)と振るわなかったが、同局が質の高いドラマを量産しているのは疑いようがない。
なぜ、これほどまでにTBSが他局を圧倒するヒットドラマを作り続けることができているのだろうか。業界で働くプロデューサーやディレクター、制作スタッフ、ドラマライターたちに話を聞き、その要因を探った。
どこよりも初動の早い企画開発
「まずTBSは、どの層に向けたドラマなのかをひたすら分析し、そのためのアプローチを打つことがどの局よりも上手です」
そう語るのは、他のキー局でドラマ制作に携わるプロデューサーのA氏だ。
「例えば、リアルタイム視聴の多い日曜劇場であれば出演俳優がバラエティ番組やニュースに出演する、いわゆる“電波ジャック”を積極的に行なっている。忙しい撮影中にもかかわらず『THE TIME,』『ラヴィット!』『ひるおび』などにたびたび生出演していますよね。
また、若い視聴者の多い火曜午後10時枠であればSNS投稿やショート動画の強化、金曜午後10時枠は熱量の高いファンが多いので、TVerなどの配信視聴サービスへの誘導やサムネイル、サブタイトルにも凝っている。
これは現在であれば、どの局も当たり前にやっていることなんですが、TBSは早くからメインとなる視聴者別にこうしたアプローチ法を変えていたんです」
さらに、A氏はTBSドラマの強みを力説する。
「TBSはドラマ企画の立ち上げが早く、かなり前段階からキャストを固めたうえでどのような企画の作品を作るかを考えている。ウチ(他のキー局)が来年クールのドラマを検討している段階で、TBSは2年後、もしくは3年後以降の作品に向けて準備をしている話を聞いて、驚いたことが何度もあります。
俳優、脚本家、さらには助演クラスのキャストまで、スケジュールの奪い合いが常態化している昨今、初動の差がそのまま作品の差になってしまう。結果として主演クラスの俳優は強いものの、脇を固める俳優陣が弱い、シナリオは魅力的なのに監督や演出との相性が悪いといったズレが生じる。こうしたズレが限りなく少ないのがTBSなんですよ」
クオリティの高い綿密な脚本作り
A氏は続ける。
「この初動の早さはキャスティングや演出面で有利になるだけじゃない。企画開発までに時間的な猶予があるため、脚本そのものを何度もじっくり練り直すことができるので、クオリティも自然と上がっていく。
昨今は、伏線回収やどんでん返しの面白さを求められていますが、設定や伏線のほころび、キャラクターのブレを早い段階で修正できる。
『リブート』は、2024年の冬にはベースとなるシナリオが途中話まで作られていたそうです。他局に関しては、初回オンエア時に3〜4話の執筆、打ち合わせをするなんてことはザラなので、おのずと粗が多くなってしまう。SNSのコメントやドラマライターから伏線回収の矛盾点にツッコミされることもTBSはほとんど見かけないですよ」
また、俳優たちも早い段階で台本を渡されるため、役柄の背景や他のキャストとの関係性をじっくり読み込みながら役作りに入ることができる。画面での演技はもちろん、モチベーションにも関わってくる。これも非常に大きいという。
「行き当たりばったりの役作りを俳優たちにさせなくても済むので、タレント事務所側も「オファーを受けるならNetflixか映画、TBS」となっているのが現状です」(前出のA氏)
後編記事『地上波は眼中になし…「TBSドラマ」が一強になった背景』では、引き続き業界関係者の声をお届けします。
