普通の葬儀にしておけばよかった…84歳父が死去、喪主を務めた娘のスマホに「まさかの異変」。人気の“家族葬”を選んだ結果「消えない後悔」のワケ
手軽で多くの人が選んでいるといった理由で選んだ「家族葬」。しかし、後から後悔することになってしまった……こんな声は意外と少なくありません。親の生前に葬儀の話をしておらず安易に決めた結果、「まさかの事態」に慌てることも。事例とともに見ていきましょう。
84歳で父が死去…「家族葬」で見送った55歳娘の後悔
「準備が足りなかった。どうしても後悔は残っていますね」
都内在住のA子さん(55歳)は半年前、84歳で亡くなった父の葬儀を執り行いました。その際に選んだのは、「家族葬」。親族やごく親しい人だけで行う小規模な葬儀のことで、一般的には数人〜30人程度で行われます。
喪主を務めることになったA子さんは、怒涛の手続きのなかで葬儀会社から「今は家族葬が人気ですよ」と言われ、すぐに決断しました。父は長年、地元の小さな碁会所に通うのが唯一の楽しみという静かな隠居生活。母はすでに他界していました。大げさな葬儀はいらないだろうと考えました。
しかし、葬儀が終わると、A子さんのスマートフォンに電話がかかってくるようになったのです。
「誰だろうと思ったら、まったく知らない若い方や、遠方の年配の方からも『生前お世話になったから、お線香をあげさせてほしい』と連絡が来たんです。私は結婚してから実家を離れていましたし、父がご近所でどれほど慕われていたのか、まったく理解していなかった」
囲碁が父の趣味ということはもちろん認識していたA子さん。実際には、父は長年地域の子どもたちに無料で教えており、そのコミュニティにおいて「囲碁を教えながら、いつも穏やかに話を聞いてくれるおじいちゃん」として親しまれていたのです。
葬儀の翌週から、幅広い年齢層が「お世話になったから」と実家に弔問に来るように。A子さんは週末になると、片道2時間かけて実家に戻り、祭壇を整え、お茶を出し、父の最期の様子を説明しなければなりませんでした。
「すごくありがたいですし、父への尊敬が深まりました。ですが、これなら一気に一般葬で集まって華やかに見送ってもらったほうが、父も幸せだったんじゃないかと思いました」
もう一つA子さんが後悔したのが、お金のことでした。
「家族葬は安いと思っていましたが、参列者が少ない分、いただく香典もわずか。結局、後から来る弔問客へのお返しをその都度用意する出費がかさみ、持ち出しは増えるばかりです。一般葬で香典をいただいたほうが、金銭的にも楽だったはずです」
なぜ「家族葬」で後悔が生まれるのか?
近年、葬儀の小規模化は加速しています。鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査(2024年)」によれば、かつて主流だった一般葬は30.1%。一方で、50.0%と半数が家族葬を選択しています。葬儀の金額は、一般葬161.3万円に対して家族葬105.7万円と、50万円以上の差があります。
家族葬は手軽かつ今の主流。この評価に間違いはなく、実際に満足している人も多いでしょう。しかし、A子さんのように後悔するケースも聞かれます。家族葬にはメリットが多い一方で、以下のような側面があるからです。
●故人の社会的な顔の過小評価
別々に暮らすようになると、たとえ子どもであっても親の趣味や地域活動は把握しづらい。しかし、そうしたコミュニティで、意外なほど広い交流を持っていることもある。
●葬儀後の対応という見えないコスト
家族葬で少人数で済ませると、訃報を後から知った人々が「線香だけでも」と自宅を訪れることがある。結果的に、1日で終わる一般葬より遺族の負担が大きくなることもある。
●経済的な逆転現象
一般葬は家族葬よりも費用は高めだが、多くの参列者からの香典で、費用の大半を賄えることもある。一方の家族葬は「入ってくるお金」が少ないため、結果として喪主の持ち出しが増えてしまうこともある。
「もしもの時」が来る前にやっておくべきこと
大切な家族を亡くした直後、遺族は深い悲しみの中で、数時間以内、早ければ数十分以内に葬儀の規模やプランを決めるよう迫られます。
押し寄せる事務手続きや親戚への連絡に追われるなかで、じっくりと故人の人生や人間関係を振り返ることは難しいでしょう。そんな状態で「安くて主流の家族葬」を選択するのは、ある意味自然ともいえます。
ですが、葬儀はやり直しがきかない一発勝負の儀式でもあります。A子さんのように「あの時、普通に送ってあげればよかった」と後悔しないために必要なのは、「もしもの時」が来る前の、元気なうちの棚卸しです。
親に葬儀の希望を聞いておく。それが難しければ、年賀状の整理や普段の何気ない会話の中から、親の外の顔を少しだけ覗いておく。そうした準備が、いざという時の後悔を小さくしてくれるはずです。

