スウェーデンではどのようにして障害者が教育を受けられるようにしているのか

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7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。

言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?

発売即重版が決まった話題書『境界知能の人たち』では、当事者を見てきた第一人者の医師が、全体像をわかりやすく解説する。

(本記事は、古荘純一『境界知能の人たち』の一部を抜粋・編集しています)

スウェーデンの障害児教育

ここで紹介するのは、障害者も大学で学ぶことのできる教育システムのあるスウェーデンの事例です。

北欧諸国は高福祉国家として知られていますが、障害のある人にもさまざまなサービスを提供しています。

スウェーデンでは、障害の有無を問わず、「個の尊重」を徹底しており、その延長線上に「特別な支援」「個別的対応」「学びの延長」「学び直し」などの学びと教育の多様性が担保されています。

ライフサイクルに応じた成人教育・生涯学習が重視され、9年間の義務教育修了後、いつでも誰でも必要な教育を生涯にわたって受けられるように保障されていることが大きな特徴です。

スウェーデンには、「国民大学」という生涯教育を目的とした成人の教育機関があります。スウェーデンでも日本と同様に、軽度知的障害や境界知能の若者たちの知的障害特別高校への進学が増加しているとされています。

卒業生の多くが、一般就労が困難であることも日本と同じですが、そのような人たちも国民大学で学ぶことができます。それでも、国民大学での学びは不十分で、満足できないという知的障害当事者の声もあり、ニーズに基づいた障害者の生涯にわたる学びのあり方の検討が求められて、国民大学のカリキュラムなどの改変が行われてきました。

また、新たに「特別成人学校」が設置されています。成人学校は全ての成人が対象で、基礎学校や高校教育の未修了者が修了資格を得るために通う、職業教育コースなどもあります。特別成人学校は知的障害者も対象とし、基礎学校レベル、特別高校レベル、職業教育レベルの教育が行われています。

これらの教育活動は、スウェーデンの福祉サービスを側面的に支える重要な社会参加活動としても位置づけられ、学び直しや学びを深化させることをいつでも可能とする生涯教育システムとして構築されています。

成人教育ではそのスタートの年齢を問わず、例えば交通事故などで脳機能障害が生じた成人の中途障害者にも同様に機会が保障されています。

2014年度のデータでは、国民大学には障害者が約1万6000人、特別成人学校には約5000人が在籍していることが報告されています。スウェーデンの人口は約1060万人ですので、日本と比べると障害のある人の進学の割合が明らかに高いと考えられます。

スウェーデンは大学が無償のこともあり、高校を卒業してすぐに進学しないことも多いのですが、同様に障害のある人にも広く門戸を開放しているといえるでしょう。

さらに「日本に1700万人いるとされる「境界知能」の人たち…当事者を見てきた医師が明かす「その実態」」では、7人に1人いるとされ、知的障害と平均値のボーダーにある境界知能の実態に迫っていく。

【つづきを読む】日本に1700万人いるとされる「境界知能」の人たち…当事者を見てきた医師が明かす「その実態」