冷戦末期の1989年、ソビエト連邦(ソ連)の原子力潜水艦であるコムソモレツ(K-278)が、ノルウェー海沖での演習中に発生した火災によって沈没しました。記事作成時点でも海底にあるコムソモレツの船体から、放射性物質が漏出しているとの調査結果が報告されました。

Status of the sunken nuclear submarine Komsomolets in the Norwegian Sea | PNAS

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2520144123

Sunken Soviet Submarine Is Leaking Radioactive Material in The Ocean : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/sunken-soviet-submarine-is-leaking-radioactive-material-in-the-ocean

コムソモレツはソ連が開発した攻撃型原子力潜水艦で、長さは約118mで幅が約11mという船体には動力源である原子炉のほか、核弾頭に計12kgのプルトニウムを含む2発の核魚雷も搭載していました。

1989年、ノルウェー海沖で演習中だったコムソモレツの船内で火災が発生し、急浮上するとともに電気システムがショートし、原子炉が緊急停止しました。結局コムソモレツは沈没することとなり、乗員64人のうち42人が亡くなる惨事となりました。

結局、コムソモレツはノルウェー海沖の水深1680m地点に沈みました。初期の調査ではコムソモレツの船体に亀裂が生じ、海水が核魚雷に接触していたことも確認されています。1994年からは損傷した魚雷格納庫を密閉するための大規模な作業が行われ、1996年には密閉が成功したと宣言されました。

2019年にはノルウェー海洋研究所の研究チームが遠隔操作型無人潜水機(ROV)によるコムソモレツの探査を実施して、船体周辺の水や堆積物、生物などのサンプルを採取しました。2019年の探査や沈没したコムソモレツの一部は、以下の動画で確認できます。

Vannprøver fra den sovjetiske atomubåten "Komsomolets" - YouTube

今回、ノルウェー放射線・原子力安全局に所属する海洋放射線生態学者のジャスティン・グウィン氏らは、2019年に収集されたデータを分析した結果をまとめました。

2019年の時点でも、コムソモレツから放射性物質が漏出していることは報告されていました。今回のデータ分析の結果、放射性物質の漏出は換気パイプや原子炉室の周辺など、船体の一部から断続的に発生していることが確認されました。

船体から吹き出す噴煙のサンプルからは、ストロンチウム・セシウム・ウラン・プルトニウムなどの放射性同位体や放射性元素が検出されました。

船体付近で検出されたストロンチウムとセシウムの濃度は、ノルウェー海におけるこれらの放射性同位体の典型的な濃度と比較してストロンチウムが40万倍、セシウムが80万倍も高かったと報告されています。また、ウランとプルトニウムの濃度および比率の上昇から、原子炉内の核燃料が活発に腐食していることが示されました。



しかし、船体からわずか数m離れた地点になると放射能汚染が急激に低下しており、これらの放射性同位体や放射性元素は急速に拡散していることも示唆されています。船体に生息している海綿やサンゴ、イソギンチャクなどのサンプルに含まれるセシウム濃度も上昇していましたが、明らかな変形やその他の損傷の兆候はみられませんでした。

以前の修復箇所がまだ持ちこたえており、放射能汚染が最小限に抑えられている点は喜ばしいことですが、船体は時間経過とともに安定性を失うため、将来的にさらなる問題が生じる可能性もあります。研究チームは、「観測された放出のメカニズムや原子炉内で発生している腐食プロセス、そしてこれらが今後の放出や原子炉内に残存する核物質の運命に及ぼす影響を明らかにするために、さらなる調査を実施すべきです」と主張しました。