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東京都心における住居費の高騰が、いま若者のライフスタイルや将来設計を根底から変えようとしている。かつて住まいの目安とされた「家賃は手取りの3割まで」という鉄則は、もはや過去の遺物と化したと言わざるを得ない。

1月15日放送の日本テレビ系「news every.」が報じた総務省の家計調査とアットホームの統計を組み合わせたデータでも、東京23区の家賃負担は手取り収入の実に39.12%にまで達しているという。

不動産各社の1月、2月の最新市場データを見ても、23区内の単身者向け賃料は天井知らずの上昇傾向。特に中央区や港区、新宿区といった都心エリアでは、10万円を切る物件を探すことすら困難な状況だ。

築浅や駅近にこだわれば、11万から12万円台が当たり前の相場である。手取り額が25万から30万円程度の若い世代にとって、この固定費の重圧が日々の生活や選択肢をいかに奪っているかは想像に難くない。

こうした賃貸市場の行き詰まりは、若者たちを早期の住宅購入へと突き動かすが、そこにも物件価格の異常高騰という分厚い壁が立ちはだかる。2月の統計では23区の新築マンション平均価格は1億4000万円を突破し、中古市場でも平均価格は5325万円と18カ月連続で上昇を記録。従来の35年ローンでは到底月々の返済が追いつかない現状に、金融機関はついに「最長50年」という超長期ローンを主力商品として繰り出してきた。

30歳で家を背負えば、完済は80歳。現役を退いた後も延々と返済が続くリスクと隣り合わせの選択である。利息負担の総額は35年ローンと比較して1000万円以上の差が生じるという試算もあり、住まいの確保が老後の資金形成を文字通り食いつぶしている。

10平米前後でロフト、シャワーユニットの「激セマ物件」も

そんな「収支バランスが破綻しかねない居住コストの重圧」のなかで、一つの解として浮上しているのが、専有面積10平方メートル前後の、いわゆる「激セマ物件」だ。居室はわずか3畳から5畳程度。それでもロフトを駆使し、浴槽を排してシャワーユニットに特化することで、利便性の高い都心一等地でも賃料を8万から9万円台に抑え込むことに成功している物件も。

若者がこの極小空間をあえて選ぶ背景には、郊外からの長い通勤時間を嫌う「タイパ(タイムパフォーマンス)」の追求があると考えられる。しかし、これは住居を「寝床」へと削ぎ落とした結果であり、本来あるべき豊かな居住文化を切り捨てた代償とも言えるだろう。

ネット上でも、この過酷な居住環境に対する悲痛な声が後を絶たない。「実家の自分の部屋の方が広いが、仕事のことを考えるとここしかない」「手取りの半分近くが消える生活は将来が不安で、とにかく固定費を削るために狭さに耐えている」といった声がある一方、「駅近で安ければ狭くてもいい。このサイズ感がむしろ落ち着く」という、ある種の適応を見せる若者も少なくない。

また、築45年の和室物件を「昭和レトロ」として再評価し、SNSで「#和室インテリア」として発信するなど、住空間を自己表現の場へと読み替える新たな価値観も広がりを見せている。

だが、個人の工夫や価値観の転換だけでは、この根深い構造的問題は解決しないだろう。手取りの4割が住居費に消える異常な構造は、若者の消費余力を奪い、貯蓄や自己投資の機会を確実に損なっている。50年ローンという一生涯の負債か、あるいは極小の箱の中での効率化か。「高騰する家賃問題」は、居住コストが人生設計そのものを支配する過酷な時代の到来を突きつけている。