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千葉県の市川市動植物園で人気を集めているニホンザルの子ども「パンチ」くん。オランウータンのぬいぐるみを抱える愛らしい姿がSNSで世界的に話題となる中、パンチくんをモチーフにした非公式グッズが次々と登場しています。

さらに、世界的なフットウェアブランド「クロックス」が、パンチくんの姿を模したと思われる商品を公式サイトで発売し、すでに売り切れとなっています。

SNSでは「動物園の公式グッズなのか」「グッズの売上は動物園に還元してほしい」といった声も上がっています。

市川市動植物園は3月12日、公式Xで「現時点で、ニホンザル『パンチ』の姿を模した商品について、ライセンスその他に関する契約を締結していません」と投稿しました(どの商品を指すのかは明らかにはしていません)。

人気動物の名前や姿を使ったグッズ販売は、どこまで許されるのでしょうか。知的財産法にくわしい冨宅恵弁護士に聞きました。

●パンチくんの無断グッズ、実は「問題なし」

──動物園で飼育されている動物の名前を使ったり、その姿をモチーフにしたグッズを第三者が動物園に無断で販売することに法的問題はないのでしょうか。

原則として、違法とはなりません。

法律上、動物は「物」として取り扱われます。民法では、「物」に対する支配権として「所有権」が認められており、所有者は、その「物」を使用したり、収益を得たり、譲渡するなどの処分をすることができます。

市川市動植物園がパンチくんを所有していたとしても、その権利はあくまでパンチという個体そのものに対するものに限られます。

そのため、パンチくんの名前や容姿を排他的に支配する権利までは及ばず、第三者がそれをモチーフに商品を販売したとしても、原則として差止めや損害賠償を求めるのは難しいと考えられます。

●動物園は無断グッズ対策できる?

──動物園側が、こうした無断グッズ販売をコントロールするためには、どのような法的対策が考えられるのでしょうか。

たとえば、パンチくんの名称や容姿について、あらかじめ商品やサービスの分野を指定して、商標登録しておくことが考えられます。

ただし、商標権は、商品やサービスの提供者を示す「出所表示」を保護する権利です。そのため、商標権が問題となるのは、商標が「どの会社の商品なのかを示す、出所を表示するもの」として使われている場合に限られます。

仮に「パンチ」という名称を商標登録できたとしても、商品名として「パンチ」という言葉を使い、販売者が誰なのかを明確に示していれば、「パンチ」という言葉は出所表示として使われていないとして、商標権侵害にあたらないと判断される可能性が高いです。

また、商標として登録できるのは「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合」などです。そのため、イラスト化されていないパンチくんの容姿そのものを、そのまま商標登録することはできません。

●動物園の公式グッズを真似したら?

──もしも市川市動植物園側がパンチくんのイラストやキャラクター人形を制作した場合、それに似せたイラストや人形などを第三者が販売することはできるのでしょうか。

この場合は、著作権の問題が生じます。

ただし、これまでも各地にゆかりのある動物をモチーフとしたご当地キャラクターが「似ている」として問題になった例があります。

ここでポイントとなるのは、ニホンザルをモチーフとしたイラストやキャラクターはすでに数多く存在しているという点です。

そのため、動物園がパンチくんのイラストやキャラクター人形を制作したとしても、第三者が制作した似たキャラクターについて、「動物園側のグッズに依拠したのではない」「自然界に存在するニホンザルをモチーフにした結果、必然的に似てしまっただけ」と反論される可能性があります。

このような場合、著作権侵害が認められない可能性があります。

【取材協力弁護士】
冨宅 恵(ふけ・めぐむ)弁護士
大阪工業大学知的財産研究科客員教授。多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。「金魚電話ボックス」事件(著作権侵害訴訟)において美術作家側代理人として大阪高裁で逆転勝訴判決を得る。<https://www.youtube.com/c/starlaw>
事務所名:スター綜合法律事務所
事務所URL:http://www.star-law.jp/