三澤 「甲州」の伸びしろ、可能性は非常に大きいと感じています。醸造家の考え方にしても、日本はあいにく島国であることで良い面と悪い面の両方あるのですが、大陸的な競争をしなくても、独自の優位性を保てるわけです。

 地政学的に日本は競争によって勝ち抜くということはなかったですが、その代わり、人間らしい精神的に豊かな人を日本という国は生み出してきたと。

 海外の醸造家は国際商人なので、ただ守るということだけでは生きていけないですから、他の地域との交わりの中で文化の広がりを持ってきたんですね。


 その中で、われわれは「甲州」をさらに多くの方が認めてくださるブランドに持っていきたいと思います。われわれのつくったものを見て、そこに感動してもらうとか、そういうものにもっていきたい。

 ─ コロナ禍以降アルコール離れが言われて久しいですが。

 三澤 あいにく世界では、WHOがアルコールは体によくないということを言い始めています。また、日本の場合は人口減でマーケットが小さくなっていきますから、未来を考えたときに、より人間にとって大事なものしか残っていかないと思っているんですね。

 日本には職人技、クラフトマンシップが強く根付いていて、作り手の人間的な美しさが商品からも見て取れます。そこは日本の強みです。

 ─ 文化的要素を含め、丁寧にものづくりをしていくということですね。

 三澤 「丁寧」「行き届いた」それから、「繰り返しのない潔さ」ともいいましょうか。大げさに言えば、繰り返しながらものを知らしめるものではなくて、繰り返しではない潔さに美しさを見出すのは、日本人のすごさだと思っています。





地方の良さは何といっても自然


 ─ 東京一極集中が進み、地方創生は日本の課題でもありますが、これについてはどのように考えていますか。

 三澤 地方の強みは、自然の豊かさですが、これをもっと活用していくべきですよね。

 日本人は自然の中で〝祈る〟という営みを、古来からしてきました。自然に対し、心底畏敬の念を持っています。これが田舎のよさなんですね。

 幸いにもワインはブドウ造りから始まります。決して自然は単純ではないですが、人と自然との折り合いの中で、地域の商品を守りつくっていく営みというのは、非常に大事なことだと思います。

 ─ 今や環境変化がブドウ造りに与える影響も大きいですね。

 三澤 気候変動を言い訳にしてはいけないですが、現実には沢山の課題があります。

 1つの考えとしては、世界ではオーガニック、有機栽培の動きが出始めていますが、この有機栽培を大きく広げていかないといけないと。

 有機栽培の何が良いかを一挙に語るには難しいですが、いつも〝静観〟ですよね。単に除草剤を使わないとか、有機肥料を与えるとか、そういうことではないんですね。自然に抗わずにブドウを栽培するという環境にもっていかないと、長持ちしないだろうと。

 ─ 新しい生態系を考えるということですか。

 三澤 はい。微生物たちがきちんとそこで存続できる環境でなければ、人間も自然界の一部ですから人間にも影響があるわけです。動植物たちと共生していく世界をつくっていけるかが大事です。

 人間にとってもよくないもの、例えば殺虫剤などは、人間にもあまり良くないですよね。成分によっては好都合の場合もありますが、そこはもっと極めていかないと怖いと思います。そういうことを含め、規制を和らげ、その一方では更に生態系的視点から捉える世界になれば非常にいいですね。

 人間を含め、この地球に生きる生物ですから、生態系をリスペクトする必要があると思います。