Image: TOTO

朝起きて、トイレに座って、スマホでニュースを見る。そんな日常に欠かせないTOTOのトイレが、実はスマホの中まで支えている──。

って書いてみたけど、ピンとこないですよね。でも、「AIブーム」を理由に2026年1月22日、TOTOの株価は一時11%も急騰し、5年ぶりの上昇率を記録したのです。

トイレと人工知能、一見すると何の関係もなさそうですが、実は結びついていました。

便器の技術が、半導体「製造」を支えている

TOTOといえば、ウォシュレットや衛生陶器(主に水回りのセラミック製品)のイメージが強いですよね。ですが、実は約40年前から半導体製造装置向けのセラミック部品も作り続けてきたのです。その中でも注目されているのが「静電チャック」という部材。

image: TOTO
TOTOの静電チャック

静電チャックは、半導体製造の工程で土台となるシリコンウエハーを所定の位置にピタッと固定し、温度を制御したり汚染を防いだりする重要な役割を担っています。

TOTOは1988年から量産をはじめ、長年にわたって半導体やディスプレイ製造のサプライチェーンの一角を支えてきました。便器で培った「精密なセラミック加工技術」が、ここで花開いているわけですね。

MetaやAmazonといったビッグテックは、AIサービス向けのデータセンターに数千億ドル規模(日本円でおよそ数十兆〜百兆円規模)の投資を進めています。そのために必要なのが、大量の高性能メモリー。

SKハイニックス、サムスン電子、キオクシアといった世界のメモリーメーカーがフル稼働で増産に励んでいますが、そういった製造ラインが増えるほど、TOTOの静電チャックの需要も高まるという図式。

つまり、あなたがChatGPTに質問を投げかけるたび、画像生成AIで遊ぶたび、その裏側をTOTOの技術が巡り巡って支えていることに。

ちなみにTOTOでは、大分県にある中津工場のスマートファクトリー化が進んでいて、AIによる自動判定や製品状態のリアルタイム監視を導入した結果、静電チャックの製造リードタイムが従来の約3分の1に短縮。人員あたりの生産性は1.5倍に向上したといいます。

AI需要を支えるために、自社の工場もAIで最適化する。なんとも象徴的な話です。

日本企業では結構ある話

実はこうした「意外な半導体サプライヤー」はほかの日本企業にも見られます。

料理にパパッと振るうま味調味料で有名な「味の素」は、アミノ酸の技術を活かして半導体用絶縁フィルムを生産していますし、化粧品で知られる「花王」も半導体ウエハーの洗浄事業を手がけています。

表向きは食品や日用品を作っているように見えて、裏側ではハイテク産業を支えてもいる。これが日本企業の面白さであり、強みでもあります。

で、売上がしっかり大きいのも大事なところ。2025年3月期の決算によれば、TOTOの新領域事業(主にセラミック事業)は連結内売上高構成比は7%ながら、営業利益は全体の42%を占めるというすげー稼ぎ頭です。

ゴールドマン・サックス証券は1月21日、TOTOの投資判断を「中立」から「買い」に引き上げました。理由は、AI需要の拡大によって高性能メモリーと汎用メモリーの両方で供給が逼迫し、静電チャック事業が「大幅な利益成長」を期待できるから。TOTOも2030年に向けて、セラミック事業を住宅設備事業と並ぶ柱に育てる方針を掲げています。

朝、トイレに座って一日が始まる。夜、スマホでAIに「おやすみ」と言って一日が終わる。その両端を、実は同じ会社の技術が支えている……そんなふうに思えると、すこしだけ頼もしいような気持ちになるのです。

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Source: Bloomberg, TOTO, IT之家, 日経クロステック, 半導体ビジネスラボ via note