この記事をまとめると

■2018年にイーロン・マスクはファルコン・ヘビーなるロケットを打ち上げた

■ファルコン・ヘビーにはテスラ・ロードスターが積まれていた

■今でもテスラ・ロードスターは宇宙空間を飛び続けている

ロケットでクルマを宇宙に飛ばした!?

 イーロン・マスクが2018年に打ち上げた宇宙ロケット、ファルコン・ヘビーはYouTubeのライブ視聴者が320万人を越え、大きな話題になりました。飛んでいくだけでなく、ブースターを再点火して地球に戻ってくるという技術も注目の的であり、センター部分こそ失敗したものの、サイドブースターは2基とも無事に帰還してみせて、彼がCEOを務めるスペースX社の株価はこれでもかと爆上がりしたものです。

 ところで、このファルコン・ヘビーに仮想のペイロード(搭載物)として、テスラ・ロードスターが載せられていたこと、ご記憶の方もいらっしゃるかと。これまたイーロン・マスクらしい突飛なアイディアであり、クルマ好きは注目していたのではないでしょうか。加えて、宇宙に飛んでいってから7年の月日が経ったいま、ロードスターがどうなっているのか気になっている方も少なくないはず。

 じつはこのテスラ・ロードスター、ロケットから切り離されることなく、予定どおりに火星と太陽の間をまわる楕円軌道で周回する人工惑星になっていました。しかも、運転席には「スペースマン」と名付けられたマネキンが乗っており、ロードスターでもって地球のまわりを飛んでいる姿まで写真に収められました。これにはクルマ好きでなくとも「夢のあふれるシーン」だと胸アツとなること請け合いです。

 そもそも、このロードスター惑星は国際天文学連合(IAU)の関連機関が運営する小惑星センター(Minor Planet Center: MPC)によって観測され、当初は小惑星「2018 CN41」なる符号まで与えられたとのこと。太陽のまわりを約1.53年周期で公転しており、もっとも地球に近づく距離は約24万kmと、月よりも近づくことに。すると、将来は地球に衝突する可能性も捨てきれないということで、アメリカの宇宙軍によって追跡観測する運びになったのでした。

 しかしながら、この観測結果は半日も経たないうちに「小惑星じゃない! クルマを積んだロケットじゃん」と判明し、「2018 CN41」の符号は取り消し、追跡観測もキャンセルとなりました。つまり、ロードスターが地球に衝突するとしても、大気圏突入の際に燃え尽きるか微粒子化してしまうので大きなリスクはないと判断されたのです。

今でも宇宙を飛び続けている

 それにしても、スターマンを乗せたロードスターを宇宙に打ち上げるというアイディアは、SF大好きなイーロン・マスクによるもの。ロケットのファルコンはスターウォーズでハン・ソロ船長が駆る「ミレニアム・ファルコン号」に由来して、また宇宙船の名前「ドラゴン」は、1960年代のヒットソング「パフ・ザ・マジック・ドラゴン」からとったとか。ならば、スペースマンもデヴィッド・ボウイの「スターマン」としてもよかった気もします。

 さらに、ロードスターのダッシュボードにディスプレイされた「DON’T PANIC!(パニックになるな)」はイーロンお気に入りのSF小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」から引用されたもので、NASAやロッキード社といった一流の宇宙企業が使うコードとは一線を画したパロディとなっています。ちなみに、同小説はじつにふざけた内容ながら、全世界で翻訳された大ヒット作で、クルマ好きもニヤリとするシーンがいくつもあります。

 ともあれ、「地球に衝突する小惑星を発見」してみたら、イーロン・マスクが打ち上げたロードスターだったという、人騒がせというかファンタジックな出来事は、クルマ好きをはじめSFファンの胸までときめかせてくれたはず。

 なお、小惑星の符号こそ剥奪されてしまったものの、小惑星センターとアメリカ宇宙軍によって定期観測が行われる模様。スターマンとロードスターによる宇宙の旅、これからも目が離せそうにありません。