平日の仕事を終えた金曜日の夜や久しぶりに友人と会った休日などに、ご褒美として普段は食べないような脂っこい食事をする人もいるはず。ところが新たな研究では、高脂肪食をたった1回食べるだけでも脳への血流が阻害されてしまい、脳卒中や認知症のリスクが高まる可能性があると判明しました。

Post-prandial hyperlipidaemia impairs systemic vascular function and dynamic cerebral autoregulation in young and old male adults - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S3050624725000051



We fed people a milkshake with 130g of fat to see what it did to their brains - here’s what we learned

https://theconversation.com/we-fed-people-a-milkshake-with-130g-of-fat-to-see-what-it-did-to-their-brains-heres-what-we-learned-259961

食事に含まれる脂肪は体内でエネルギー源となるほか、ビタミンの運搬や臓器の保護、体温の維持といった重要な役割を担っています。人々が摂取する脂肪は主に飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に区別されますが、このうちファストフードスイーツに多く含まれる飽和脂肪酸は、摂取しすぎると血管や心臓に悪影響を及ぼすことが知られています。

また、飽和脂肪酸がもたらす影響は血管や心臓だけにとどまらず、脳にも問題が生じる可能性があるとのこと。脳はエネルギー貯蔵量が限られているため、正常な機能を維持するには血流によって酸素やブドウ糖を継続的に供給する必要があります。体が脳への血液供給を維持する仕組みはdynamic cerebral autoregulation(動的脳血流自動調節)と呼ばれ、このプロセスのおかげで立ち上がったり運動したりして血圧が変動しても、安定した脳への血流を維持できるというわけです。

しかし、高脂肪食の摂取などによって血管や心臓に悪影響が及ぶと、動的脳血流自動調節が損なわれてしまい、脳に届く血液が一時的に少なすぎたり多すぎたりする可能性があります。この状態が持続すると、脳卒中や認知症などを発症するリスクが高くなってしまうといわれています。



飽和脂肪酸を多く含む食事をとると血中脂肪濃度が上昇し、食事から約4時間後にピークに達します。これと同時に血管は硬くなって弛緩(しかん)・拡張する能力が失われてしまいますが、この間に脳への血液供給がどのような影響を受けるのかはよくわかっていませんでした。

今回イギリスのサウスウェールズ大学で運動生理学の上級講師を務めるクリストファー・マーリー氏らの研究チームは、18〜35歳の若い男性20人と60〜80歳の高齢男性21人を被験者として、飽和脂肪酸の多い食事を摂取する前と摂取から4時間後で、心臓と脳の健康に関連する血管の働きを測定しました。

実験では心臓の健康状態を評価するため、血流の増加に応じて腕の血管がどれほど拡張するのかを評価したほか、脳内の血流についても測定が行われました。脳内の血管が血圧の変動にどれほど対応できるのかを調べるため、被験者は自重でのスクワットを行い血圧を変動させたとのこと。また、高脂肪食として用意されたのは濃厚なホイップクリームたっぷりのミルクシェイクで、カロリーはなんと1362kcal、脂質は130gだったとのこと。



実験の結果、高脂肪食は若者と高齢者の両方で血管の拡張能力を低下させ、血圧の変動を緩和する脳の能力を弱めることが確認されました。また、高脂肪食が脳に及ぼす悪影響は高齢者の方が大きいことも示唆されました。

今回の研究は高脂肪食が精神機能に及ぼす長期的な影響を検証したわけではないものの、マーリー氏らが行った過去の研究では、高脂肪食が細胞を傷つけるフリーラジカルを増加させ、血管の拡張を助ける一酸化窒素を減少させることが示されています。これらの要因が、今回の研究で観察された血流調節機能の低下を説明するかもしれないとのこと。

マーリー氏は、「私たちの研究結果は、たった1回の脂肪分の多い食事であっても、即座に体へ影響を与えることを示唆しています」とコメント。心臓の健康だけでなく脳の健康を守るためにも、飽和脂肪酸の少ない食事を心がけることが重要であり、特に脳卒中や神経変性疾患のリスクが高い高齢者は注意するべきであると考えられます。

なお、イギリスの公衆衛生ガイドラインでは飽和脂肪酸の代わりに魚やナッツ類に多く含まれる多価不飽和脂肪酸を摂取することが推奨されていますが、これらの食事に脳がどう反応するのかはわかっていません。また、今回の研究では男性のみが被験者となったため、女性の脳が高脂肪食にどう反応するのかも不明です。

マーリー氏は、「私たちの研究は食事が長期的な健康に影響を与えるだけでなく、リアルタイムで体と脳に作用することを改めて思い出させてくれます。そして脳の健康を守るという点では、毎回の食事が重要であることがわかってきています」と述べました。