堀江正博・東急社長

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「今は局面が大きく変わるところで、リスクがはらむ面もあると思いますが、同時に逆張りという点では、仕込みのチャンスが訪れるかもしれない」─。今は、攻めのタイミングでもあるという認識を示すのは東急社長・堀江正博氏。地政学リスクがあり、外部環境に不透明感も漂う中、国内は脱デフレの仕上げの時を迎え、賃上げ・所得向上の気運も高まる。金融政策でも、マイナス金利解除が近づき、”金利の付く時代”へと正常化のステージを迎えている。こうした時代の転換期には、プラス・マイナスの現象が混在するが、「新たな投資や新事業創出のチャンスも生まれる」という堀江氏の考え。コロナ禍を体験し、生き方・働き方改革も進む。その中にあって、オフィスの役割とは何か。またリモートワークとのハイブリッドの中で生まれる新しいサービスとは何か。仕事のクオリティ(質)を高めるためにも、「クリエイティビティ(創造力)が大事」と強調する堀江氏だ。


今、外部環境が不透明な中で思うこと

 堀江正博氏(1961=昭和36年12月生まれ)が東急社長に就任したのは2023年(令和5年)6月のことで、半年余が経つ。

 コロナ禍は昨年5月、季節性インフルエンザ並みの〝第5類〟の感染症に指定されて一段落。このコロナ禍約4年間をどう総括するか。

「非常に経営のカジ取りが難しかった時期だと思いますし、前任の郄橋社長(和夫氏、現副会長)は相当ご苦労されたんだろうなと。わたしも当然経営陣の一員として横におりましたので、そういう気がしましたね」

 堀江氏はこう語りながら、「やるべきことはやってきたつもり」と次のように述べる。

「(コロナ禍の間)ちょうどその時期は、わたしはリテール(流通・小売り)の担当から不動産の運用担当者となり、途中からホテル分野も管掌することになりました。コロナ禍でしたけども、その中でやるべきことは、やってきたつもりであります。ですから、そうした体験を活かしていきたいと」

 コロナ禍は〝100年に1度〟の感染症・パンデミックとされ、『三密』(密閉・密接・密室)を避けるため、街中から人波がバッタリと途絶えてしまった。

 人々は外出を控え、鉄道は収入が減り、ホテルなどの宿泊関連業は深刻な打撃を受けた。

 今はそれが一転して、旅行や購買活動も活発となり、生活サービス関連にもようやく明るさが出てきた。

「これからはやはり攻めに転じる。転じるというか、もう転じておりますけれども、そういうタイミングだなと」と堀江氏。

 2024年(令和6年)はまさに時代の転換期。目を世界に転じれば、ウクライナ戦争、パレスチナ戦争は当分続き、米軍とイスラム軍事組織『フーシ』との対立など、中東をめぐる紛争の拡大が懸念されている。「外部環境は非常に不透明ですね」と堀江氏も気を引き締める。

 今年11月に行われる米大統領選で誰が選ばれるかでも、世界の政治、経済も左右されそうだ。

 そして日本国内は、〝失われた30年〟から完全脱却すべく、政策も総仕上げの時期を迎えている。

 その政策の1つが〝マイナス金利からの脱却〟。2016年に当時の安倍晋三政権時代に、日本銀行は金融緩和の効果をさらに引き出そうと、マイナス金利政策を導入。植田和男日銀総裁は、その政策から脱却し、金利の付く時代への転換を図ろうとしている。

 堀江氏は、不動産関連のリート(REIT、不動産投資信託)事業も担当してきた。いま、日本の金利上昇観測から、海外勢が日本への不動産投資から引き気味になり、リート市場も多少弱含み。今後、どう推移するのか。