ただ、金利が付くのは金融の正常化であり、中長期には国債などの債券運用も収益をあげるチャンスとなる。

 転換期には、プラスとマイナスの現象が生まれるものであり、要はその混沌とした状況をいかにくぐり抜けるかである。

「はい、各事業の利益目線も、これまでは金利がほとんどない世界でしたので、その絶対額だけ見ていればよかったのですけれども、利回りといいますかね。ROA(総資産利益率)といいますか、そうした指標などを見て、きちんと金利も払っていかなければいけない」

 堀江氏は、金利をしっかり意識する経営にしなければいけないという認識を示す。


「転換期の今は仕込みのチャンスの時」

 日本経済は、前年比で約3%の物価上昇という現状。日本は1990年後半からのデフレに長い間悩まされ、GDP(国内総生産)は昨年、世界3位の座からドイツに抜かれて、4位に転落。1人当たりGDPも先進7カ国の間では最下位であり、世界31位というポジション。

 モノの価格が下落し続けるデフレから脱却し、経済が成長する物価上昇、つまり適度なインフレ状態になるかどうかの分岐点に日本は今ある。

 賃金引き上げも、このような転換期に行われようとしている。こうした状況下、経営のカジ取りをどう進めるか?

「当然インフレになれば、価格戦略が大事になってきます。日本の会社が一番弱いといわれているところですが、ここもやはりしっかり取り組んでいくと」

 原材料費の上昇分をどう製品価格に反映させていくかという経営課題。コロナ禍の間、欧米企業は原材料コストの上昇分を製品価格に転嫁してきたが、日本企業はそれができている所と、そうでない所とに分かれる。

 価格を転嫁できた所は業績向上につながり、従業員の賃上げ原資も産み出せるが、そうでない所は賃上げもままならない状況。この二極化をどう克服するかも、わが国産業界の課題。

 堀江氏は、「しっかりこの問題にも取り組んでいく」としながら、次のように強調する。

「ただ、(原材料価格が上がったからと言って)単純に値上げしたのでは、お客様はついてきません。やはり、われわれが提供するサービスのクオリティを上げていくと。そういうことを取引先とも一緒になってやっていかないといけない」

 まさに、今は時代の転換期。そういう時期の経営のカジ取りについて、堀江氏は「そこはリスクをはらんでいる所もあります。しかし、逆張りという観点では、仕込みのチャンスも訪れると」という認識を示す。


〝つなぐ〟という発想で顧客の利便性を高める

 東急は鉄道事業を起点に、住宅開発・田園都市開発で成長・発展してきた会社。現在の事業構成比は交通(鉄道を含む)が全体の19%、不動産が22%、生活サービスが52%、ホテル・リゾート7%という内わけ。

 売上げ構成で見ると、生活サービス分野が過半を占める。

「百貨店やストアがありますので、生活サービスの構成比率は大きいのですけれども、むしろ僕は利益ベースで見ています。そうすると、生活サービスの割合はぐっと下がります。しかし、鉄道、バス、それから不動産の各事業があって、それにホテル・リゾートがつながる。それらがあることで、沿線のお客様に魅力的なサービスを提供できるということになりますので、われわれにとって、この生活分野というのはやはり、不可欠な分野だと思います」

 交通、不動産と生活サービスは互いに切っても切れない関連性の強い事業と堀江氏は語る。

 東急の祖業は『目黒蒲田電鉄』。東京の城南西部の目黒(目黒区)と蒲田(大田区)をつなぐ目黒―蒲田間の電鉄会社である。