【戸塚啓コラム】健闘してなお高く感じるW杯ベスト8の壁
少しばかりのぼせていた頭を、ドンと叩かれた気分だ。
目を覚ませ、と。
カタールW杯の準々決勝は、やはりと言うべきか、ハイレベルだった。ラウンド16よりもレベルをさらに一段上げた戦いが、繰り広げられた。
クロアチア対ブラジル戦には驚かされた。延長前半にブラジルが先行した時点で、僕はブラジルの勝利を確信した。クロアチアは2試合連続の延長戦であり、ブラジルは百戦錬磨のタレント集団だ。さすがに万事休すだろう、と思った。
ところが、クロアチアは追いついてみせた。延長後半があと数分で終わる、というタイミングで。恐るべき反発力だった。
敗戦が現実的に迫っているなかで、それでも反撃に転じられるクロアチアこそ、「メンタルモンスター」と言うべきだ。このブロックからはブラジルが勝ち上がってくるとの声が大きかったはずだが、クロアチアはそのタフネスさで大方の予想を覆してみせた。
ロシアW杯の経験は、彼らの支えになっているのだろう。同国史上初のファイナルへ辿り着くプロセスは、ラウンド16のデンマーク戦と準々決勝のロシア戦がPKによる勝利で、準決勝は延長の末にイングランドを振り切っている。90分で決着がつかないことも、それが連続することも、彼らにとっては想定内なのだ。
今大会のクロアチアの歩みを辿ると、「経験」の重みを実感せずにはいられない。
オランダもたくましかった。
アルゼンチンを相手に、70分過ぎに0対2とされた。中堅国ならジ・エンドである。だが、彼らにはアルゼンチンと競り合ってきた歴史がある。
14年W杯の準決勝ではPK戦で敗れたが、98年W杯の準々決勝では2対1で勝利している。今回のW杯にコーチングスタッフの一人としてベンチ入りしているエドガー・ダービッツは、98年の勝利を知るひとりだ。歴史が直接的に継承されている。
後半のアディショナルタイムに追いついたのはすごいが、それがデザインされたセットプレーだったことに驚かされた。
味方へのパスがカットされたりしたら、「なぜ直接狙わなかったのか」と批判されたはずだ。普通なら直接狙いたいはずで、狙った方が安全なはずだ。だからこそ、アルゼンチンは完全に虚を突かれ、対応が一瞬だが致命的に遅れたのだった。
ポルトガルを下したモロッコの躍進は、今大会最大のサプライズだ。ラウンド16でスペインをPK戦で退け、準々決勝ではポルトガルを1対0で下した。
クロアチア、ベルギー、カナダとのグループステージを首位で通過してきたのだから、モロッコは地力のあるチームだ。そのうえで言うと、大会5試合目となる準々決勝でも、強度の高いプレーが実現されている。プレーに連続性と即時性があるのだ。チームとしてのうまさは感じさせないものの、はっきりとした力強さを感じさせる。
果たしてこの舞台に、日本がいたらどうなっていたか……。
ベスト8に勝ち上がったチームに日本の選手がひとりかふたり入っても、さほど違和感なくプレーできると思う。チームとしてのタスクを遂行するのは、日本人選手が得意とするところだ。守備の1対1で劣勢に立たされたとしても、周りがカバーしてくれる。
個人ではなく日本というチームが、世界の8強の舞台に立っていたらどうだったか。
質的な劣勢を補うために、1対1ではなく2対1などの対応が多くなっただろう。それによって、時間の経過とともに疲労度が増す。後半の途中あたりまでは粘ることができても、最後まで粘り通すイメージは持ちにくい。ましてやクロアチアやオランダのように、ギリギリの時間帯で死地から生還する姿は、残念ながら思い浮かばない。東京五輪準決勝のスペイン戦で、延長後半に失点したような展開が思い浮かぶ。
日本国内での絶対評価で言えば、今回のチームは素晴らしく一体感があり、個のクオリティの高い選手が揃っていた。それは間違いない。しかし、カタールW杯のなかでの相対評価では、ベスト8はかなり高い壁だったと言わざるを得ない。
目を覚ませ、と。
カタールW杯の準々決勝は、やはりと言うべきか、ハイレベルだった。ラウンド16よりもレベルをさらに一段上げた戦いが、繰り広げられた。
クロアチア対ブラジル戦には驚かされた。延長前半にブラジルが先行した時点で、僕はブラジルの勝利を確信した。クロアチアは2試合連続の延長戦であり、ブラジルは百戦錬磨のタレント集団だ。さすがに万事休すだろう、と思った。
敗戦が現実的に迫っているなかで、それでも反撃に転じられるクロアチアこそ、「メンタルモンスター」と言うべきだ。このブロックからはブラジルが勝ち上がってくるとの声が大きかったはずだが、クロアチアはそのタフネスさで大方の予想を覆してみせた。
ロシアW杯の経験は、彼らの支えになっているのだろう。同国史上初のファイナルへ辿り着くプロセスは、ラウンド16のデンマーク戦と準々決勝のロシア戦がPKによる勝利で、準決勝は延長の末にイングランドを振り切っている。90分で決着がつかないことも、それが連続することも、彼らにとっては想定内なのだ。
今大会のクロアチアの歩みを辿ると、「経験」の重みを実感せずにはいられない。
オランダもたくましかった。
アルゼンチンを相手に、70分過ぎに0対2とされた。中堅国ならジ・エンドである。だが、彼らにはアルゼンチンと競り合ってきた歴史がある。
14年W杯の準決勝ではPK戦で敗れたが、98年W杯の準々決勝では2対1で勝利している。今回のW杯にコーチングスタッフの一人としてベンチ入りしているエドガー・ダービッツは、98年の勝利を知るひとりだ。歴史が直接的に継承されている。
後半のアディショナルタイムに追いついたのはすごいが、それがデザインされたセットプレーだったことに驚かされた。
味方へのパスがカットされたりしたら、「なぜ直接狙わなかったのか」と批判されたはずだ。普通なら直接狙いたいはずで、狙った方が安全なはずだ。だからこそ、アルゼンチンは完全に虚を突かれ、対応が一瞬だが致命的に遅れたのだった。
ポルトガルを下したモロッコの躍進は、今大会最大のサプライズだ。ラウンド16でスペインをPK戦で退け、準々決勝ではポルトガルを1対0で下した。
クロアチア、ベルギー、カナダとのグループステージを首位で通過してきたのだから、モロッコは地力のあるチームだ。そのうえで言うと、大会5試合目となる準々決勝でも、強度の高いプレーが実現されている。プレーに連続性と即時性があるのだ。チームとしてのうまさは感じさせないものの、はっきりとした力強さを感じさせる。
果たしてこの舞台に、日本がいたらどうなっていたか……。
ベスト8に勝ち上がったチームに日本の選手がひとりかふたり入っても、さほど違和感なくプレーできると思う。チームとしてのタスクを遂行するのは、日本人選手が得意とするところだ。守備の1対1で劣勢に立たされたとしても、周りがカバーしてくれる。
個人ではなく日本というチームが、世界の8強の舞台に立っていたらどうだったか。
質的な劣勢を補うために、1対1ではなく2対1などの対応が多くなっただろう。それによって、時間の経過とともに疲労度が増す。後半の途中あたりまでは粘ることができても、最後まで粘り通すイメージは持ちにくい。ましてやクロアチアやオランダのように、ギリギリの時間帯で死地から生還する姿は、残念ながら思い浮かばない。東京五輪準決勝のスペイン戦で、延長後半に失点したような展開が思い浮かぶ。
日本国内での絶対評価で言えば、今回のチームは素晴らしく一体感があり、個のクオリティの高い選手が揃っていた。それは間違いない。しかし、カタールW杯のなかでの相対評価では、ベスト8はかなり高い壁だったと言わざるを得ない。
関連情報(BiZ PAGE+)

1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している