JFEホールディングス・柿木厚司が進める「脱炭素」戦略 悪者・CO²を再利用する製鉄法を開発へ
これには「これまで我々は『粗鋼生産量何千万㌧で、世界第何位の企業になる』という考えが念頭にあったが、それが収益を生む体質なのかどうか。ビジネスモデルは変わってきているのではないか」という柿木氏の問題意識があった。
中国が台頭する以前は、日本の鉄鋼メーカーは技術だけでなく生産量でも存在感が高く、価格決定力も持っていたが今、その力を持っているのは中国。日本は生産設備を維持するための量と質の両方を追っていたが、その転換が迫られたということ。
高付加価値品の生産で収益力向上を図るが、そこで重視している指標は鋼材の「トン当たり利益」。JFEの20年下期ではトン当たり6000円だったが、世界の鉄鋼メーカーは1万円程度と大きな開きがある。
そのために「コストダウンは当然行った上で、デジタルトランスフォーメーション(DX)などで生産性を高めていく」。だが、課題となるのが販売価格。
高付加価値品と汎用品を、例えば自動車メーカーに販売する際、高付加価値分の差額が全て得られていなくても、全体としてある程度の利益を確保できていればいいというのが従来の考え方だった。今後は高付加価値分の対価をきちんと得るための交渉が必要になる。
収益力確保と脱炭素の両立に腐心
収益力向上の努力を進める鉄鋼業界だが、ここにさらなる難題が降り掛かってきた。それが首相の菅義偉氏が宣言した2050年の「カーボンニュートラル」。産業界の中でもCO₂排出量の多い鉄鋼業界は、厳しい対応を迫られている。
柿木氏は「短期的に考えれば、カーボンニュートラルへの取り組みは利益を産まない。しかし、会社の存続を考えるとキーになる技術。20年後、30年後に我々が生き残っていけるかは、今技術開発ができるかにかかっている」と強い危機感を見せる。
まだ、世界でカーボンニュートラルに関する技術を確立した鉄鋼メーカーはなく、いわば横一線。「技術開発ができた企業だけが生き残ることができる。長い目で見れば収益を生むが、しばらくは雌伏の時が続く」
JFEはまず中計最終年度の24年に13年度比で18%のCO₂を削減、最終的には2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す。
その実現にあたって、各社が開発を進めているのが「水素直接還元製鉄」。従来は石炭を使用していた還元プロセスに水素を使うことでCO₂を発生させないことを目指す技術。だが、水素の安定的確保とコスト、高品位の原料しか使えないといった技術開発にハードルがある。
そんな中、JFEは「世界初」の製鉄法の開発に乗り出している。それが「カーボンリサイクル高炉」。高炉から発生するCO₂と水素を合成してメタンに変換(メタネーション)し、それを還元材として繰り返し利用する。さらに高炉に吹き込む際に空気ではなく純酸素を使用することでCO₂を削減する技術。
「水素還元製鉄は重要な技術であり、開発を進める。しかし、2050年までにどんな技術が開発されるかわからないため、水素1本に賭けるのは難しく、複線的な技術開発をする必要がある。カーボンリサイクル高炉は、当初はトランジション(移行期)の技術だという意見もあったが、現行の設備や原料を利用でき、さらにCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)が開発されればコスト競争力上、有望な技術となる」
その意味で、カーボンリサイクル高炉が有望だといっても、それだけに思い入れ過ぎると、他の技術が台頭した時に生き残れなくなるという危機感も同時に持っており、まさに様々な技術を睨みながらの開発となる。
