国内初確認の新型コロナウイルス感染者を受け入れた旧相模原協同病院。現在は別の場所に移転している(13日、相模原市緑区で)

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 国内で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されてから15日で1年となる。

 新型コロナが中国以外で確認されたのはタイに続いて2か国目だった。ウイルスの情報が少なく、手探りの中でたどり着いた陽性判明だった。

 昨年1月15日、東京都内の国立感染症研究所。神奈川県内の30歳代中国人男性の検体がPCR検査機器にかけられていた。中国で流行する新たなウイルスの遺伝子情報が公開されたのは、わずか数日前のこと。感染研は最初、中国やタイと同じ手法で検査したが、結果は「陰性」。ただ、うっすらとウイルスの遺伝子の白い線らしきものも見えた。男性が中国・武漢市からの帰国者であることを考慮し、「慎重にやろう」。別の手法を試してみると、今度はくっきりと線が現れた。15日午後8時45分のことだった。

 「ついに来たか」。厚生労働省幹部らは夜通し対応に追われ、16日朝、国内1例目の感染確認を公表した。

 早期に感染者からウイルスを入手したことで、検査精度の迅速な向上につながった。ただ、全国のPCR検査体制は弱く、検査を巡って社会は大きな混乱にのまれていく。新型コロナとの長い闘いの始まりだった。

市内唯一の感染症指定医療機関に1本の電話

 最初の感染者が入院していたのは神奈川県相模原市の相模原協同病院だった。早期に感染が判明した背景には、感染を疑った医師らの的確な判断があった。

 始まりは昨年1月10日、病院にかかってきた一本の電話だった。

 「正月から調子が悪い。武漢で怪しい肺炎が多発していたので心配だ」。電話の主は、県内在住の30歳代の中国人男性。中国滞在中の同3日に発熱し、同6日に中国・武漢市から帰国した後も発熱やせきが治まらないという。

 2019年12月末から中国で「原因不明の肺炎」が発生していると報じられていた。市内唯一の感染症指定医療機関である同病院では、井関治和院長が「新型肺炎」を注視し、職員にも注意喚起していた。

 当時、厚生労働省は「人から人への感染は確認されていない」としていたが、病院側は男性を感染症病棟に入院させ、一般の患者と動線を分けた。職員は防護服やゴーグルを着用し、感染対策に万全を期した。

 厚労省などによると、男性は肺のX線検査で肺炎が見つかったため入院した。病院は武漢帰りであることを考慮して新型肺炎を疑い、保健所に報告。15日に陽性と判明した。男性は軽症で退院している。院内でこの男性から感染が広がることはなかった。

 井関院長は「男性が事前に電話をしてくれたので、受け入れの準備を万全にできた」と振り返る。こうした病院の対応を政府の専門家会議はのちに「医師の判断で感染が疑われ、PCR検査が行われ、確認された」と評価した。