初めて入ったお店で、スタッフに「このお店のおすすめはなんですか?」と聞いて、満足な答えがなかったという経験はないだろうか。飲食店特化型コンサルタントの須田光彦氏は「客が店員におすすめを聞くのは『損したくない』『だまされたくない』『後悔したくない』から。店員個人が『自分の好きなもの』を『自分の言葉』で説明できるかが問われています」という--。

※本稿は、須田光彦『絶対にやってはいけない飲食店の法則25』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/JohnnyGreig
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JohnnyGreig

■「店のおすすめはなんですか?」「全部おいしいですよ」

初めて入ったお店で、スタッフに「このお店のおすすめはなんですか?」と質問しても答えられない、あるいは「全部おいしいですよ」などと答えられた経験が、皆さんにもあるはずです。

おすすめ商品をおすすめすることに苦手意識を持っている従業員が多いのは事実です。それには、まず「おすすめして、もし断られたら……」という恐怖心があります。断られたら、自分自身が否定されたように感じてしまうので、怖くておすすめができないのです(もちろん、お客さまは単に気が進まないので断っただけなのですが)。

そしてもう1つは、おすすめすることに対する嫌悪感です。自分が別のお店に行ったときに、押し売りのようにおすすめをされてイヤだったとか、お客さまに押しつけているみたいでイヤだという気持ちが根底にあります。

ところが、お客さまの心理はどうでしょうか? 実は、お客さまはそのお店のおすすめを知りたいのです。人間が商品やサービスを購入しようと思ったときに湧き上がるのは次の3つの感情です。

損したくない
だまされたくない
後悔したくない

お客さまは、お店に入る前だけでなく、お店に入ったあとも、「損しない」「だまされない」「後悔しない」ための証拠がほしいのです。

■「損させません」「だましません」「後悔させません」をアピール

そのためにお店は何をすればよいのでしょうか?

簡単です。「決して損をさせません」「だましません」「絶対に後悔させません」とアピールして、お客さまを安心させればいいのです。

お客さまは3つの感情を抱いているからこそ、「この店のおすすめは何ですか?」と聞くのです。お店はそれに答えて、お客さまを安心させなければいけません。それがおすすめの本質です。

「今日はこんないい魚が入りましたよ」
「皆さん、この肉料理を召し上がってますよ」
「こちらのセットは大変お得ですよ」

などと言うことで、お客さまが素敵な体験ができる、幸せになることを保証するのです。

実は、お客さまはお店が思っている以上に、「もう一杯飲みたいな」「もっと食べたいな」と思っているのです。その気持ちにお応えするのが、おすすめなのです。

■自分の気持ちを自分の言葉で伝える店員が売り上げを高める

「今日、初めて売り方がわかりました。こんな簡単で楽しいものだったんですね!」

--これは、私のセールステクニック講座を受講した鹿児島県の定食屋さんのパートの方たちからいただいたお言葉です。彼女たちが目を輝かせて楽しそうにおすすめをした結果、このお店の売り上げはかなり増えました。

おすすめを成功させるためのシンプルな方法があります。

もちろん商品自体が心からおすすめしたい商品であることが前提ですが、私がお教えするおすすめのテクニックはマニュアルや台本などは使いません。個々のスタッフが自分でセールストークを作り出すというものです。

しかも、お店が決めた「おすすめ商品」ではなく、各人が心から紹介したいと思ったもののセールストークを作ってもらいます。そのためにはまずは、試食をして、自分が気に入った商品、お客さまにおすすめしたい商品を決めます。

次に、「なぜその商品をおすすめしたいのか」の理由を説明してもらいます。そのときに出る素直な感想、つまり一消費者としての感想が、そのままその人のセールストークになります。

■シズル感で勝負「キンキンに冷えています」「鉄板でジュージュー」

ただし、セールストークには次の3つの要素のうち、最低でも2つを入れてもらうようにします。3つの要素とは「ポーション」「味の方向性」「シズル感」です。

ポーションとは量のことです。「一口サイズ」「みんなでシェアできる」「山盛り」「メニューには3種類と書かれているけれど、実は5種類が提供される」などです。

味の方向性は、「爽やかな酸味」「しびれる辛さ」「甘さは控えめ」などです。

シズル感は「キンキンに冷えています」「鉄板でジュージュー」「外側がカリッとして中はトロっと」「フワフワしている」などです。

須田光彦『絶対にやってはいけない飲食店の法則25』(フォレスト出版)

このうち最も大切なのが、シズル感です。シズル感はイメージが浮かぶように伝えるのがコツです。たとえば、「トロっ、と」だったら「何かが溶け出している」、「ジュージュー」だったら「肉汁がじわりと出てくる」絵が浮かぶといった具合です。

人間は70%以上の情報を視覚から得ているといわれているので、視覚化しやすい言葉は伝わりやすくなります。セールストークを聞いたお客さまは、それが本当かどうかを確認したくなってオーダーします。そして「本当にトロトロだ」「肉汁たっぷりだ」ということであれば、「損しなかった」「だまされなかった」「後悔しなかった」「このお店は間違いがない」となるのです。

ここで注意していただきたいのは、重要なのは単にそれっぽいセールストークを言うことではなく、スタッフが自分の気持ちを自分の言葉で伝えることです。

また、3つの要素は毎回まったく同じ言葉で説明する必要ありません。そのときの自分の感情に応じて、自然と出てくる言葉で伝えればいいのです。

■売り込み臭が一切ないのに、客が注文するセールストーク例

では、ここまでのまとめとしてセールストークの例を挙げてみます。

【セールストーク例】

おすすめというよりも私の好きな料理でいいですか。私が好きなのは○○です。この前、試食したんですけど、鉄板の上でジュージューと焼かれて、外側がカリッカリで、食べると中から“とろ〜っ”としたチーズがあふれてフワトロが楽しめます。

ナイフを入れてパカっと割るとチーズがて割って“とろ〜っ”と出てくるんです。みんなでシェアできるので、アルバイトの子たちに大人気。私は大好きです!

いかがでしょうか? 思わずイメージがわいてきませんか?

店員は自分の感想を言っているだけにもかかわらず、聞かされたほうはこの料理に興味がわきますよね。

ここでのポイントは、おすすめしているのではなく、料理のお披露目なので、売り込み臭が一切ありません。だから、お客さまはワクワクするのです。

■客がオーダーしてくれなくでもOK、従業員が自己表現を楽しむ

ワクワクさせたあとに、「いかがですか、ご注文なさいますか?」とお客さまの判断にゆだねるクロージングをかける。

写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

この場合、お客さまがオーダーしてくれなくでもOKです、なぜなら、スタッフは自分の大好きなものを表現できて、その会話をお客さまと一緒に楽しめたのですから。それで十分なのです。

オーダーをする/しないは、お客さまにおまかせすればいいのです。

むしろ、そのほうが興味を持っていただけるし、すすめられたというプレッシャーもないので、気軽にオーダーしていただけることが多いのです。

このセールストークができるようになったスタッフは、「おすすめするのが楽しくて仕方ない」という状態になります。

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須田 光彦(すだ みつひこ)
飲食店特化型コンサルタント
1962年、北海道生まれ。飲食店の価値創造と向上に強いフードビジネスバリューデザイナー。クレドマネジメント株式会社代表取締役社長。これまでコロワイド、レインズインターナショナル、はなまるうどんなど、手がけてきた案件数は500件超。若い起業家のサポートから年商2000億円を超える上場企業まで、食にかかわる業態ならどのような業態でもコンサルティングする。2013年より『有吉ゼミ』(日本テレビ系列)の人気コーナー「芸能人の心配な店」にも出演している。
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(飲食店特化型コンサルタント 須田 光彦)