機密扱いだった史上最大の水素爆弾である「ツァーリ・ボンバ」のドキュメンタリー映像をロシアの国営原子力企業が公開
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ロシアの国営原子力企業であるロスアトムが、1961年の実験で爆発した「爆弾の皇帝」とも呼ばれる人類史上最大の水素爆弾「ツァーリ・ボンバ」のドキュメンタリー映像をYouTube上で公開しました。
Russia Declassifies Video From 1961 of Largest Hydrogen Bomb Ever Detonated | Smart News | Smithsonian Magazine
以下がロスアトムにより公開された、ツァーリ・ボンバの爆発実験の様子を収めた映像。40分超のドキュメンタリー映像となっており、史上最大の爆弾の爆発の瞬間が映像で記録されています。映像にはツァーリ・ボンバの爆発の瞬間がさまざまな角度から捉えられており、爆発の際に生じるキノコ雲の全景をフレーム内に収めることに苦労していることからその爆発の規模の大きさがうかがえます。なお、当然ですが公開された映像ではツァーリ・ボンバの技術的な詳細が明らかにならないように編集されているとのことです。
Испытание чистой водородной бомбы мощностью 50 млн тонн - YouTube
当時のソビエト連邦が開発した人類史上最大の水素爆弾であるツァーリ・ボンバの正式名称は「РДС-202(RDS-220)」で、TNT換算で約100メガトンもの威力を有するように設計された爆弾です。実際の戦争などで兵器として使用されたものではなく、核実験の中でのみ使用された水素爆弾で、実験の際には50メガトンに威力が制限されていました。それでも広島に落とされたリトルボーイの約3000倍の威力を有していたそうです。
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実験時にツァーリ・ボンバの投下を行ったのは、特別な改修をうけたTu-95という戦略爆撃機。Tu-95は爆発から生じる熱線による影響を最小限に抑えるために特殊な塗料が塗られているそうです。機体底部の中央に取り付けられたツァーリ・ボンバは全長26フィート(約7.9メートル)、高さ7フィート(約2.1メートル)という非常に巨大な水素爆弾であったため、Tu-95は一部のドアや燃料タンクを取り外すことでツァーリ・ボンバを取り付けることに成功したとのこと。
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投下の瞬間。ツァーリ・ボンバは北極海にあるソビエト連邦領のノヴァヤゼムリャ上空で投下されました。
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ツァーリ・ボンバにはパラシュートが取り付けられており、これは爆弾を投下するTu-95が爆発の安全圏へと退避するための時間を稼ぐためのもの。なお、減速用パラシュートは重量800kgにもおよぶものとなっていたそうです。
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カウントがゼロを示し……
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爆発
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辺り一面は爆発による眩い光で真っ白に。
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ツァーリ・ボンバを投下したTu-95のコックピットの映像。爆発の瞬間、コックピット内も強烈な光に包まれています。
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爆心地の様子
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爆発の全景がきれいに収められているわけではなく、強烈な光に包まれるのみ。
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さらに別角度から見ると、強烈な爆炎が雲の上まで立ち上ります。
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上空の雲の上から撮影された爆発の瞬間。この強烈な光はノルウェー北部にあるトロムスオフィンマルク郡のジャーフィヨルデンという山の国境警備兵も確認することができたとのこと。なお、ツァーリ・ボンバの爆発の瞬間の光は約620マイル(約1000km)離れた場所でも確認することができたと伝えられています。
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キノコ雲のかさ部分が雲の上に広がります。
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さらに別アングルから見ると、見事なキノコ雲を形成。
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このキノコ雲の高さはなんとエベレストの約7倍となる42マイル(約68km)にもおよんだそうです。キノコ雲は爆発が非常に高温のガスの泡を生成するときに形成されるものです。核爆発の場合、爆弾はX線を放出して、周囲の空気を電離・加熱します。核爆弾から生じる火球は高く上昇していき、対流圏界面にぶつかり、上方に膨張できなくなり平らに広がることでキノコ型を形成していくこととなります。
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しかし、ツァーリ・ボンバが形成したキノコ雲は成層圏を通過して拡大し、さらにその上空にある大気層の中間圏にまで到達している模様。
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モノクロ写真としてプリントアウトされたキノコ雲。
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ツァーリ・ボンバは冷戦時代に開発された水素爆弾です。歴史家のロバート・S・ノリス氏がニューヨークタイムズ上で「冷戦時代、アメリカとソビエト連邦の間では強烈な競争が行われていました。どちらもより大きな爆弾を手に入れようとしており、ソビエト連邦はその競争に勝利することとなりました」と記しているように、ツァーリ・ボンバはアメリカとの水素爆弾の開発競争の中で生まれたものです。
ただし、アメリカは巨大な水素爆弾の開発に対して徐々に興味を失っていくことに。1961年に当時のアメリカ国防副長官を務めていたロズウェル・キルパトリック氏は、「巨大な水素爆弾の兵器としての価値は非常に疑わしいため、開発する価値がないとアメリカ政府は判断した」と語っています。実際、その後のアメリカでは核開発の小型化が進み、それにより核兵器をトラックや潜水艦などで輸送できるようになっていきました。