南アフリカ代表のモスタート【写真:Getty Images】

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元リコーのモスタートは日本の8強入りに「予想していなかった」

 3度目のワールドカップ(W杯)優勝を狙う南アフリカは20日、東京スタジアムでの準々決勝で日本と対戦する。2015年の前回大会では32-34で破れる波乱が起きたが、今年9月6日のテストマッチでは41-7と大差で“リベンジ”。今大会屈指のタレント揃いと言われるスプリングボクスは、日本にどのような戦いを仕掛けてくるのか。

 試合に勝つには対戦相手を、よく知ることが大事だ。その点、南アフリカは抜かりない。今大会の登録メンバー31人のうち11人は日本のトップリーグでプレー経験を持ち、チームが用意するビデオ分析やスタッツ、データに深い洞察が加わる。選手自身が目で見、肌で感じた経験は、何物にも代えがたい。今大会では、日本の湿気の高さに悩まされるチームが多い中、南アフリカの選手たちは比較的対処できているのも、彼らの存在は大きいかもしれない。

 16日の記者会見に出席したLOモスタートは、2016年から2シーズンをリコーでプレー。日本でプレーしていた当時は、桜のジャージーを身にまとった選手たちが自国開催とはいえ、W杯でベスト8入りするとは「予想していなかった」という。だが、「私の実感としては、スーパーラグビーもトップリーグもあまり差はないように思う。スーパーラグビーの方がスピード感とフィジカルでやや上回るが、日本人はとてもハードワークだ」と振り返り、「ダブルタックルが上手なチーム」と日本代表を称えた。

 もう1人、日本ラグビーを知る人物がいる。それがFW担当のアシスタントコーチを務めるマット・プラウドフット氏だ。南アフリカに生まれながら、祖父の故郷であったり、ラグビー留学をしたり、スコットランドと縁の深いプラウドフット氏は、1998年からスコットランド代表チームでプレー。プロップとして過ごした現役生活を終えて指導者になると、2015年から1シーズン、神戸製鋼でFWコーチを務めた。

神戸製鋼でのコーチ経験回想「日本の選手は細部まで理解することが早い」

 神戸製鋼でのコーチ経験について「非常にいい学びの時間になった」と話す同コーチは、わずか1シーズンではあったが、日本でプレーする選手の気質に驚かされたという。

「技術的なこと以上に、日本の気質を知れたのが大きかった。非常に興味深かったのは、日本の選手は細部まで理解することが早く、プランであったり技術であったり体得するのが上手い」

 日本に対する称賛の言葉を並べるが、もちろん負ける気はしない。今大会、日本のFWは評価を高めているが、南アフリカのFWは世界No.1の呼び声も高い。そのFWを取りまとめるコーチだが、準々決勝への準備は着々。6週間前の対戦で「日本にプレッシャーをかける意味では、上手くいった部分がある」と手応えを感じ、また第2の母国・スコットランドの対日本戦からも「スコットランドは彼らのスタイルを貫きながら、後半にプレッシャーを与えていた。自分たちのやってきたことを続けることが大事」とヒントを得ている。

 史上初のベスト8入りを果たしたこともあり、日本ではにわかにラグビーブームが沸き起こっている。20日の日本戦は、南アフリカにとって“完全アウェー”の雰囲気となる可能性も高い。それのプレッシャーについて問われたプラウドフット・コーチは「鳥肌が立つような試合をしたい」とニッコリ笑顔を浮かべた。ノーサイドのホイッスルが鳴った瞬間、勝利の女神はどちらに微笑むか分からないが、名勝負が生まれることは、ほぼ確実と言えそうだ。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)