(C)賀東招二・小学館/STPD

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2019年7月より放送を開始したTVアニメ『コップクラフト』。
突如出現した未知の超空間ゲート「ミラージュ・ゲート」によって、異世界「レト・セマーニ」から太平洋上に現れたカリアエナ島。その最大の都市であり、地球人とセマーニ人が入り交じって生活するサンテレサ市では、活気と混沌に満ちたその裏で、異なる民族の対立と文化の衝突により数々の特殊な犯罪が頻発していた。そうした事態に対処するサンテレサ市警の刑事としてコンビを組むことになったのは、地球人のケイ・マトバとセマーニ人のティラナ・エクセディリカ。この一風変わった”バディ”の活躍を描くシリーズだ。

第9話までの放送が終了し、特別編を挟みシリーズも残り3話。いよいよサンテレサに暗躍するセマーニ人の術師(ミルディータ)、ゼラーダとの対決へと物語は向かっていく。そんな折、原作者であり、アニメ版でもシリーズ構成を務める賀東招二氏に独占インタビュー! 原作『コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED』(小学館「ガガガ文庫」刊)からアニメシリーズまで、幅広くお話を伺った。

ーー『コップクラフト』がアニメ化に至った経緯は?

賀東 ずいぶん前からそういう話があったんですけど、のんきに気長にやってればいいんじゃないかって思っていたんですよね。アニメ化を期待して書いていたわけではなかったので。「決まりましたよ」って言われても、「そうか」っていう感じで。

ーー決定とお聞きになったのはいつくらいですか?

賀東 2年以上前ですね。原作の6巻が出たあとくらいかな。それで顔合わせはして。ただ(監督の)板垣さんも忙しかったので実際に動き始めたのはそれから半年くらいあとだったと思います。

ーー最初からシリーズ構成も担当されるというお話だったんですか?

賀東 他の人にお任せしても多分無理だろうと思ったので。もちろんできる人もいますけれど、そういう人は忙しい人なので。だから自分でやりましょうかという話になりましたね。

ーー原作のイラストと同じくキャラクター原案は村田蓮爾さんですが、村田さんの絵ってアニメとして動かすのが大変そうだという印象があります。

賀東 そうですね、それは最初から心配していたところではあります。ただ、板垣さんがキャラデザを出してきて、総作監の木村(博美)さんのキャラ表を見て、これは大丈夫だと思いました。すごくお上手で、あれで二十歳とかびっくりしますね。木村さんのキャラデザを見せてもらってちょっと安心したところがあります。
▲#1 COP SHOW, WITCH CRAFT

ーー原作のイラストとアニメのキャラクターデザインとで、少しケイ・マトバのイメージが変わったかなと思ったりもしたのですが。ちょっと細身っていうか。

賀東 最初に板垣さんが「今回は影を少なめにしたい」って言っていたので、その影響もあるのかなと思います。ビジュアル的にもそういう色合いでやりたいっていうのもあったんでしょうけれど、ポップな感じにまとめようとしたのかなと。
▲#3 MIDNIGHT TRAIN

ーーサンテレサの街のイメージもそんな感じなんでしょうか。

賀東 アメリカの街に取材に行きましょうよって言ったんですけど、そんな予算がどこにあるんだっていう話で(笑)。ロサンゼルスに行ってきた方に「写真撮ってきてください」ってお願いしたりして。

ーーどこか実在の都市をモデルにしているんですか? 個人的には、それこそロサンゼルスとか、マイアミとかを思い浮かべるんですが。

賀東 どうなんでしょうね。実は15年も歴史がない街なので、本当はそういう風にはならないはずなんですよ。一番なりそうなのはドバイとかですよね。10年くらいで無理やり建てちゃったような町並みっていうと、ドバイかラスベガスか。そんなイメージが一番近いんじゃないかなって思いました。でもそこはあえて嘘をついて、どう見ても50年以上経っているような古いレンガ造りの倉庫があってもいいんじゃないのって。

ーー急速に発展した新市街があって、へばりつくように残っている旧市街があって、みたいなイメージを持っていました。

賀東 そうですね。ただ、旧市街は全然設定にないし、絵にもなっていないんですよ。原作では写真がちらっと使われていて、初代担当の望月(充)さんのご友人がイスタンブールにしょっちゅう行く方で、大体はその写真らしいですね。ものすごく急成長しちゃった街っていうのに一番合っているのはやっぱりドバイかな。もしくは漢字のない上海とか。でもいまだにこれだっていうイメージがないですね。ただひとつ、道路は広くしてほしかった。アメリカの街に行くと普通の道路でもやたら広いじゃないですか。「2ブロック向こうに店があるよ」って言われて歩いたらとんでもないことになった。日本の1ブロックとは全然違うっていうスケール感ですね。

ーー元々は『ドラグネット・ミラージュ』(竹書房刊)として2006年にスタートしたシリーズですよね。でも作中ではそんなに長い時間が流れているわけではない。

賀東 せいぜい6ヶ月ですね。

ーー10数年経った中で、何か時代に合わせて変えたりしたようなことはありますか。

賀東 特にはないですね。スマホとかのガジェットについては多少反映させていますが、それも2005年、2006年くらいにはすでに写真が撮れる、メールも送れるっていう携帯電話があったので齟齬は生じていないんじゃないかな。「スマホ」っていう言葉がなかったので「端末」と表現していたとは思いますが。

ーーアニメの第8話で、ティラナが猫のクロイと入れ替わってスマホを操作するじゃないですか。あれを観ていて、「肉球で操作できるのか?」って一瞬思いました(笑)。

賀東 それなんですよ。できるのかなあって。誰か猫を飼ってる人に試してもらいたい。
▲#8 SMELLS LIKE TOON SPIRITS

担当編集 実際にできたらしいですね。電気が流れるので。

賀東 あれを書いた時(原作4巻・2014年刊行)はすでにスマホがあったので、スマホっていう表現にシフトしていましたね。顔認識のAIとかも6巻で出ていますが、それも反映させています。あと書いていて面白かったのが、6巻でカーチェイスっていうか追跡劇をやって、相棒とはぐれるんだけどスマホの位置情報で追いかけられるっていう。これは今だったらできるかなって思いましたね。

ーーガジェットなどの味付けはあっても基本はいわゆる”バディもの”ですよね。それも『マイアミ・バイス』や『リーサル・ウェポン』のような80年代っぽい。

賀東 そうですね。1話や2話あたりは超ベタベタ、コッテコテの、むしろ最近見ないくらいのバディもので、ちょっと新鮮でしたね、自分でも。(津田)健次郎さんもそうおっしゃってましたね。(昭和)46年生まれでしょう。

ーー僕も48年生まれで大体一緒の感覚なので、すごくよくわかります。

賀東 設定ガバガバなポリスアクション。もうなんかね、敵のギャングとか10人くらい撃ち殺してから次の場所に車で行っちゃうから。現実にはそんな事件を起こしたらすぐに自分の使った銃を提出したりしなきゃいけないですよね。

ーーティラナもすぐに手首切り落としちゃいますし。現代だと大問題ですよね(笑)。
▲#2 DRAGNET MIRAGE

賀東 それでもおとがめなしっていうのがこの世界なので。「あんなめちゃくちゃなカーアクションしやがって。おかげでこっちは大変なんだぞ」って言われるくらいで。そこにツッコまれても、僕は知りませんよっていう。第2話の頭だったかな、銃撃戦の最中にソファの陰に隠れて、敵がバシュバシュやって「ちくしょう」っていうシーンに、「あんなソファで防げるわけないじゃないか」って言われて。何言ってるんだ、防げるに決まってるだろうと。僕、映画で見てたから間違いないですよって。

ーージョージ・ルーカスの宇宙みたいなものですね。

賀東 「俺の宇宙では音はするんだよ」っていうね。そこまでは言いませんけど(笑)。でも僕はちゃんと見たことがあるから、間違いない。

ーーちゃんと映画で見た(笑)。

賀東 映画で見た。怒られたりツッコまれたりしても、「何言ってるんだよ」って。

ーー昨今そういう細部にツッコみがちな風潮もありますが、『コップクラフト』はアニメから入った若い視聴者もあまり気にせずに楽しく見ている感じがします。

賀東 若い子から見たらどう見えるのかなんて想像がつかないんですけど、それを慮っても仕方がないので、勝手に我が道を行くという方針で行っちゃいますね。みんな「ハードボイルドだ」って言ってくれるんですが、そういうつもりで書いてもいないんですよ。確かにシリアスな話もありますが、いろいろな話があっていいじゃないっていう。あんな猫になっておしっこしちゃうようなね。最初からそういうのもアリのつもりで書いていたので。

ーーシリアスな話ということで言うと、第7話もそうですね。アニメオリジナルのストーリーでした。

賀東 7話は、原作3巻の話が諸事情でアニメではできなくて。一応「そういうのは何とかごまかしますから」って最初は言っていたんですけど、結局は「別の話をなんとか考えますか」ってつなぎの話を持ってきたんですが。

ーーシリアスでありつつ、ティラナの心情に寄り添ったハートウォーミングないい話でした。

賀東 いろいろなバリエーションの話があっていいと思うんですよね。ほっこりした終わりもあれば、全く救いがなくて終わるとか。『マイアミ・バイス』もそういう感じだったじゃないですか。結構ひどいバッドエンドの話があったりして、あれがすごく好きだったんですよね。
▲#2 GIRLS ON ICE

ーーアメリカの刑事ドラマって結構バッドエンドの話がありますよね。

賀東 もちろん苦い話が多すぎるのも問題ですけれど。

ーーアニメの場合は1クール12話のシリーズの中でそのバランスを取るわけですよね。

賀東 本当はもっとオリジナルの話がぽんぽん出て、いろいろなバリエーションの1話完結をやりたかったんですが、とりあえず原作をたどりつつ、たまにオリジナルの話をやれたらいいかなという感じでしたね。

ーーアニメでは原作6巻までのストーリーをカバーしてしまうんですね。

賀東 4巻の話は8話から9話のAパートまでで、9話Bパートからは6巻の話ですね。5巻も3話から4話は必要になってしまうので、やりたい話ではあったんですがここはもう思い切って外しました。皆さんが応援してくださって、別の形でお届けできたらいいなと思ってます。
▲#9 A KING MAKER

ーーアニメ公式Twitterでティラナが用語解説などをする動画が公開されていますが、あの台本も書かれているんですか?

賀東 あれは宣伝チームに進行してもらってますね。ネタ出しは付き合いましたが、あとはお任せです。

ーー先行上映会のトークイベントで、ファルバーニ語の発音の話をされていましたが、書いている時から発音を想定しているんですか?

賀東 頭の中でここは濁音にしておこうかなとか、タモリさんが世界の言葉をモノマネするみたいな路線で。フィーリングですね。

ーー作家さんによってはそこをすごく体系立ててやる人もいますよね。

賀東 それをやっていると締め切りに間に合わないんですよ(笑)。一応この言葉はこういう意味なんだっていうことを決めたらメモっておいて、それを蓄積させていっています。文法は英語+若干フランス語みたいな法則にしておいて、動詞の活用とかはフィーリングでやっちゃえっていう感じですね。女性形・男性形とかも一応意識はしていますけど、それ以上詳しくがっちり決めると何も進まなくなっちゃうので。

賀東 「ありがとう」っていう意味の「ダーシュ・ザンナ」だと、「ダーシュ」が「thank」、「ザンナ」が「you」なので、「Thank you」って言っているだけなんです。「ネーヴェ・シーア」も「ネーヴェ」が「夜」で「シーア」が「穏やか」で、形容詞はひっくり返るっていう法則を決めておいたので「Good night」が「Night good」になっているという。そういうのをメモっておいて、こないだ数えてみたらもう300語から400語くらいいってますね。350語くらいかな。せいぜいそれくらい。本格的にやっている作家さんだったら1000語超えてるんじゃないでしょうか。

ーーその単語帳がほしいですね(笑)。

賀東 そうですね。でもそれをやるとバレちゃう、たいして考えてないじゃんって。世の中には架空の言語マニアっていう方もいらっしゃるので。トールキンのエルフ語とか。そういう人が僕みたいにいい加減に作ってるのを見ると、多分怒っちゃうんじゃないですかね(笑)。でもそうやって単語を積み重ねて決めていくと、後で会話を作らなきゃいけないときにだんだん楽になっていくんですよ。文法に従って書いていくだけでいいので。

一人称の「I」を「ノイ」っていう言葉にしているんですが、いろいろな会話で頭に「ノイ」って出てくるので、そうするとすごくリアリティが出てくるんですよ。よく出てくるから、見ている人もだんだんその意味に気付くようになってくる。デタラメにやるよりは、ある程度法則をつけたほうが、「らしく」聴こえるんですよね。特にアニメだと口に出すので。それはある程度決めておいてよかったなって思いますね。

ーー「P」の発音が「B」になったりもしますね。「ポリス」を「ボリス」、「パスタ」を「バスタ」と言ったり。

賀東 アラビア語がそうらしいですね。適当に決めたんですが、どこかでそういう言葉があるって聞いたことがあったのかなという気もします。
▲#6 NEED FOR SPEED

ーーティラナが濁音で発音して訛っているっていうのもリアリティがあります。

賀東 ただ、最初から気にしていたのは、たとえば「ペットボトル」を「ベットボトル」と言わせるのかどうか。それから、日本語のぱ行の語、「やっぱり」とかをどうするのか。それは最初の頃に相談して、日本語のぱ行はもうアリでいきましょうっていうことになっていたと思います。あまりやり過ぎてしまうと、今度は視聴者が混乱してわからなくなってしまうかもしれないんですよね。小説だったら何も考えないんですけど、アニメになるとそこが悩ましい。

ーー実際に喋らせてみて初めて気がつく問題なんですね。

賀東 「吹き替え時空」とでもいいますか、吹き替えの世界だからこれでいいんだっていうのはよく自分に言い聞かせています。独特ですよ、吹き替えの世界って。田舎のおじさんがみんなすごい美声だったり、太ったおばさんなのにすごくセクシーな声だったり。あの独特の世界って不思議だなっていつも思っています。

ーーたまに女性の語尾なども話題になりますよね。「だわ」とか「わよ」なんて今時言わないっていう。

賀東 ありますね。難しいですよね、吹き替えの日本語は独特なので。一人称だって「俺」なのか「僕」なのか本当はわからないじゃないですか。黒人のいかつい兄ちゃんだと「俺」だろうけど、トム・ホランドだったら「僕」、みたいに勝手に決めてるだけですよね。でももしかしたらトム・ホランドの気持ち的には「オイラ」かもしれないし、やっぱり年相応に「俺」って言ってるかもしれないし。『アイアンマン』だったらトニー・スタークはやっぱり「私」なのかなとか。

ーー原作巻末のボーナストラックに登場するイリーナさんも、アニメ版でもどこかで出番があるかなと思っていたんですが。
(編注:イリーナさんとは、『コップクラフト』の連続ドラマシリーズ(架空)でティラナを演じているという設定の女優イリーナ・フュージィ(架空)のこと)

賀東 最後の5分間だけ付けるのはどうかって言ったら、板垣さんが即「イヤだ」って(笑)。本編のほうに集中したかったっていう感じですね。6巻のあとがきでも書いたんですが、作者とキャラの対談なんて痛いのは重々承知なんですけれど、1冊書き終えると本当にくたびれていて、4ページ書くのもつらいんですよ、本当に。

ーークールダウン的な意味合いもあるんですね。

賀東 自分のキャラと話してるのを客観的に見ると恥ずかしいんですけど、イリーナさん人気なんですよね。

ーー僕も大好きです! さて、アニメもこのあと佳境に入っていきます。最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。

賀東 僕も手に汗握って見ていますので、ぜひ最後まで楽しんでください。あと、スタッフの皆さんを応援してあげてください。

ーーありがとうございました!

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詳しくは公式HP http://copcraft.tv/ をご覧ください。

(C)賀東招二・小学館/STPD