2月22日の開幕戦ではセレッソ大阪とヴィッセル神戸が激突

 2月22日、J1リーグの2019年シーズンが開幕する。昨季は川崎フロンターレが2連覇を達成。今季も優勝候補の最右翼に挙げられているが、はたしてどうだろうか。

 今や、世界でも類を見ないほど、大混戦のリーグである。前年に優勝争いに加わっていたチームが、その翌年には降格の憂き目にあうことがしばしば起こっている。昨季も半分以上のチームが残留争いに巻き込まれ、最後の最後まで多くのチームが予断を許さない状況に追い込まれた。

 優勝争いも同様である。ちょっとしたことで、思わぬチームが大躍進を果たしてもおかしくない。外国籍選手の登録・出場枠が大きく変わった今季は、なおさらである。”助っ人”選手がとんでもない活躍を見せれば、一気に戴冠を遂げることも可能だろう。事実、過去にもそうした例は何度となく見られている。

 とにもかくにも、J1リーグは何が起こってもおかしくない。優勝、降格予想さえ難儀を極めるが、今年もリーグに精通する5人の識者に、開幕を前にしてJ1全順位を予想してもらった――。

川崎の3連覇へ太鼓判は押せないが、
鹿島はじめ、他クラブの追い上げも乏しく…

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位 川崎フロンターレ
2位 鹿島アントラーズ
3位 ヴィッセル神戸
4位 ガンバ大阪
5位 FC東京
6位 清水エスパルス
7位 名古屋グランパス
8位 横浜F・マリノス
9位 浦和レッズ
10位 北海道コンサドーレ札幌
11位 セレッソ大阪
12位 サガン鳥栖
13位 湘南ベルマーレ
14位 サンフレッチェ広島
15位 ジュビロ磐田
16位 ベガルタ仙台
17位 大分トリニータ
18位 松本山雅FC

 昨シーズンの予想で最下位とした広島が2位。FWパトリックの活躍はまさに想定外だった。外国人選手、とりわけストライカーが爆発すると成績は急上昇する。

 この前例に従うと、ゼロックススーパーカップで決勝ゴールを決めたFWレアンドロ・ダミアン(インテルナシオナル/ブラジル→)を加えた川崎が「いい補強をしたかな」という印象。しかし、2シーズン連続優勝し、巨額の賞金を手にしたチームの目玉選手としては小者。もっと大物を連れてこないとJリーグは盛り上がらない。

 川崎はその一方で、DFエウシーニョを清水に持っていかれた。その代わりに獲得したマギーニョ(ヴィラ・ノヴァ/ブラジル→)が代役をこなせるか、かなり疑問だ。サイドバックが優秀なチームが勝つ、という概念に従えば、3連覇に太鼓判は押せない。鹿島との差は昨季より詰まると見る。

 だが、その鹿島も名サイドバック西大伍を神戸に放出。これは痛手になるはずだ。さらに言えば、外国人選手も小粒だ。選手層が厚いので大崩れはしないだろうが、川崎同様、外国籍選手の新たな登録・出場枠制度を最大限に活用できていない印象があって残念でならない。

 Jナンバー1の”金満クラブ”浦和レッズもしかり。浦和について言えば、サッカーも守備的で後ろ向きだ。昨季より順位を下げそうな気がする。

 神戸は選手層が薄いので、優勝は難しいと思うが、その浦和を上回りそうな予感。”金満クラブ”ナンバー1の座を奪取しそうだ。

 クラブの雰囲気に相変わらず”緩さ”を感じる東京は従来どおり。名古屋は外国人枠増の恩恵を受け、順位を上げそうだ。

 堅調と思われるのは、清水。若手が多く、監督采配も上々。エウシーニョも加わった。一昨年までのような降格争いに絡むことはないだろう。

 対照的なのは、磐田。入れ替え戦を経験した昨季と状況が変わっているようには見えない。昨季2位の広島も、その後半戦の戦いを見る限り上位争いは難しそうか。

 穴は昨季後半、群を抜く安定感を見せたG大阪。FWファン・ウィジョは得点王候補だろう。危ういムードが漂うのは、仙台。J2からの昇格組、大分、松本も苦しそうだ。

川崎、鹿島、浦和の「3強」に対抗する神戸
伏兵はロティーナ率いるC大阪か

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 川崎フロンターレ
2位 ヴィッセル神戸
3位 鹿島アントラーズ
4位 浦和レッズ
5位 セレッソ大阪
6位 北海道コンサドーレ札幌
7位 ガンバ大阪
8位 名古屋グランパス
9位 サンフレッチェ広島
10位 FC東京
11位 ジュビロ磐田
12位 清水エスパルス
13位 横浜F・マリノス
14位 湘南ベルマーレ
15位 サガン鳥栖
16位 大分トリニータ
17位 ベガルタ仙台
18位 松本山雅FC

 J1リーグ3連覇を狙って、元ブラジル代表FWレアンドロ・ダミアン(インテルナシオナル/ブラジル→)を補強した川崎、新鋭FW安部裕葵の飛躍も期待されるアジア王者の鹿島、そしてFW杉本健勇(C大阪→)、DF鈴木大輔(柏レイソル→)などを加えて戦力的に他を凌駕する浦和。この3チームが、優勝争いの中心になる公算は高い。不安要素があるとすれば、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場の負担だけではないだろうか。

 対抗馬としては、神戸だ。

 ファン・マヌエル・リージョ監督が率い、神戸は確実に変化しつつある。控え選手までが「サッカーがうまくなっている気がする」と心酔する細やかで熱い指導で、覇気を失っていたFWルーカス・ポドルスキの士気も回復。高いインテンシティの練習によって、”強さの濃度”を上げている印象だ。

「日本人が信じるよりも、私は日本人の可能性を信じているよ」

 リージョ監督は昨季最終節前にそう語っていたが、プレーの質は大きく向上している。指揮官にとっては、MF藤田直之(→C大阪)、MF伊野波雅彦(→横浜FC)の移籍は痛手で、獲得に動いたウルグアイ代表DFマルティン・カセレス(ユベントス/イタリア)を逃したのもマイナスだが、元スペイン代表FWダビド・ビジャ(ニューヨーク・シティ/アメリカ→)の加入は大きい。MFアンドレス・イニエスタが健在なら、上位を争うはずだ。

 伏兵としては、C大阪を挙げたい。スペインの名将ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は、攻守のバランスを見つける達人。もともとサイドアタックの信奉者で、(前任の)東京ヴェルディ監督時代は選手の能力的に断念したが、たとえばMF水沼宏太のクロスからFW都倉賢(札幌→)のヘディングはひとつの形になるのではないか。

 順位はつけたが、”2位が15位でもおかしくない”というのが実状だろう。「群雄割拠」もしくは「下克上」という様相のリーグになる。各チームのレベルは拮抗し、何が起こってもおかしくはない。

 個々の選手では、FW北川航也(清水)、MF橋本拳人(東京)、MF田口泰士(磐田)、MF梅崎司(湘南)らに注目。日本代表もうかがう選手たちの奮起次第で、実力伯仲のリーグはさらに混迷を深めそうだ。

1位は外国籍選手の「当たり」を引いた川崎
2位は神戸に期待。わからないのが鳥栖

原山裕平氏(サッカーライター)

1位 川崎フロンターレ
2位 ヴィッセル神戸
3位 浦和レッズ
4位 北海道コンサドーレ札幌
5位 鹿島アントラーズ
6位 清水エスパルス
7位 サンフレッチェ広島
8位 セレッソ大阪
9位 FC東京
10位 ガンバ大阪
11位 湘南ベルマーレ
12位 ベガルタ仙台
13位 名古屋グランパス
14位 横浜F・マリノス
15位 大分トリニータ
16位 ジュビロ磐田
17位 サガン鳥栖
18位 松本山雅FC

 正直、年々難易度が上がっていると感じる。もはや、当たる気すらしない。ちなみに、昨季は2位予想の柏レイソルがまさかの降格! そんなもんですよ、ヨソウなんて。

 そう考えるとアジアカップの勝敗を次々に当てたシャビは偉大だなあと。もっともシャビをもってしても、J1の順位予想は避けたいだろう。どこが優勝しても、どこが降格してもおかしくない。そんなリーグ、世界中を探しても見当たらないからだ。

 今年、予想をさらに困難とするのが、外国籍選手枠の拡大だ。その当たり外れによって、結果は大きく左右される。昨季の名古屋はFWジョーが機能していなければおそらく降格していただろうし、いつかのC大阪はFWフォルランが鳴かず飛ばずで、降格の憂き目にあっている。

 今季は各チーム、ルール変更にのっとり、多くの外国籍選手を獲得した。JからJへの移籍であれば、ある程度力量が予測できるが、今季は枠の増加もあって、Jリーグ初参戦の選手が実に多い。いかなる実力者であっても、日本のサッカーにフィットできるかは不透明であり、神戸に加入したFWダビド・ビジャ(ニューヨーク・シティ/アメリカ→)であっても、ジョーになるか、フォルランになるかは不透明なのだ。

 その予測困難な初参戦組のひとり、川崎に加入したFWレアンドロ・ダミアン(インテルナシオナル/ブラジル→)はどちらかというと後者タイプかと思いきや、ゼロックススーパーカップで見せたそのプレーに好印象を抱いた。得点を取る仕事に留まらず、献身的にプレスを繰り返す姿は実に日本人的であり、間違いなくJリーグにフィットするであろうと感じた。

 ということで、優勝は川崎。AFCチャンピオンズリーグでの勝ち上がりにもよるが、鹿島に続く史上2チーム目の3連覇を成し遂げられる力を備えていると見る。

 2位の神戸は期待を込めて。お金をかければ強くなる。そんなモデルケースを日本でも実現してもらいたいから。浦和は川崎の対抗馬と見ていたが、この前の試合を見て下方修正。札幌はFW鈴木武蔵(V・ファーレン長崎→)のフィット次第で、さらに上に行ける可能性も。

 鹿島は継続性と地力はあるものの、戦力は下がった印象。もしかしたら、もう少し下に行くかも。清水はFWドウグラスが早期復帰すれば、優勝争いに食い込む可能性もあると見る。

 中位は去年の成績をもとに、戦力の上積みなどを踏まえて、配置した。

 取り扱い要注意な降格圏の予想は、補強策がパッとしなかった磐田を去年と同じ16位に。昇格組の松本は、得点が取れないチームは厳しいという過去の傾向から最下位とさせていただいた。

 読めないのは鳥栖。今季のJ1で唯一、日本での実績がない指揮官を迎え、しかも新外国籍選手も多数補強。2年目のFWフェルナンド・トーレスの爆発が期待されるも、監督の手腕と助っ人力に不透明な部分があまりにも大きい。つまり、わからないのだ。だから17位としたが、はまれば優勝争いもあるかもしれない。という逃げ道を作って、今季の予想とさせていただきます!

順当に「3強+2」が上位争いを展開
注目は助っ人の質が高い神戸と名古屋

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位 鹿島アントラーズ
2位 浦和レッズ
3位 川崎フロンターレ
4位 ヴィッセル神戸
5位 名古屋グランパス
6位 清水エスパルス
7位 FC東京
8位 北海道コンサドーレ札幌
9位 セレッソ大阪
10位 横浜F・マリノス
11位 ガンバ大阪
12位 ジュビロ磐田
13位 湘南ベルマーレ
14位 サガン鳥栖
15位 ベガルタ仙台
16位 松本山雅FC
17位 サンフレッチェ広島
18位 大分トリニータ

 大混戦となった昨季は例外のシーズン。今季は順当に「3強+2」が上位争いを繰り広げそう。

 戦力補強も怠らなかった王者・川崎が成熟度の点においても優勝候補となるが、今季はリーグ戦よりもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を重視している印象。となると、昨季の鹿島のようにリーグ戦での取りこぼしも増え、逆に鹿島が優勝候補筆頭に躍り出る。

 その鹿島は、大物補強こそなかったが、各ポジションに質の高い選手をそろえており、昨季はケガに泣いたMFレアンドロが復活すれば、MFセルジーニョと合わせて得点力が飛躍的に上がるはずだ。

 また、3強の一角に食い込む浦和も、5月には点取り屋ファブリシオの復帰が予想され、新戦力のMFエヴェルトン(ポルティモネンセSC/ポルトガル→)、FW杉本健勇(C大阪→)らを加えた攻撃力はリーグ屈指。いい意味で”脱・柏木(陽介)”が図れれば、堅守と決定力を兼ね備えたチームに化ける可能性は十分にある。

 3強を追うのは、大物助っ人をそろえる神戸と名古屋。経験値で3強に劣るため、さすがに優勝は厳しいが、外国人枠が拡大した最初のシーズンで、助っ人の質が成績を大きく左右することを見せつける可能性が高く、ACL出場権争いに食い込むのは必至だ。

 一方、降格予想では、戦力で大きく劣る大分は濃厚だ。助っ人外国人の補強が少ないわりに大幅にメンバーを入れ替え、さらにシステム変更も試みる広島が、昇格組の松本と自動降格圏争いをしそうな予感。同じく、長年継続した守備重視のサッカーから、攻撃的にシフトチェンジを図る鳥栖も、苦戦を強いられるだろう。

川崎か鹿島か、優勝の行方はACL次第
「穴」が名古屋、清水、磐田か

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位 鹿島アントラーズ
2位 川崎フロンターレ
3位 名古屋グランパス
4位 ヴィッセル神戸
5位 浦和レッズ
6位 セレッソ大阪
7位 FC東京
8位 ガンバ大阪
9位 ジュビロ磐田
10位 北海道コンサドーレ札幌
11位 清水エスパルス
12位 ベガルタ仙台
13位 横浜F・マリノス
14位 湘南ベルマーレ
15位 サガン鳥栖
16位 サンフレッチェ広島
17位 松本山雅FC
18位 大分トリニータ

 一昨季は、いい意味でのクラブ間格差が生まれ始めたかに見えたJ1も、昨季は再び、世界的にも稀(まれ)な大混戦リーグに逆戻り。その流れは、今季も続いている。

 優勝争いは、川崎、鹿島の”人気馬”が中心になるだろう。安定的な強さという点で、2強が頭ひとつ抜けている。いわば、”連軸”としての信頼性は高い。

 ポイントは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)との両立。昨季の川崎は、幸か不幸かACLでグループリーグ敗退に終わり、優勝した鹿島との負荷の違いは、とくにシーズン終盤で大きかった。おそらく一般的な予想は、川崎が”1番人気”だろうが、今季はACLに対しての川崎の本気度が高くなる(より勝ち進む)と予想し、J1での予想順位は鹿島を上に取った。

 とはいえ、ACLの負担という点では鹿島も同じで、2強を出し抜いて優勝をさらうクラブが現れても不思議はない。優勝の可能性があるのは上位予想の5クラブと見る。

“穴馬”を挙げるなら、東海地区の3クラブ。磐田は昨季、主力の相次ぐ故障に泣かされたが、本来はもっと力があり、清水は若い選手が多く、伸びしろを感じさせる。ともに順位のうえでは中位に予想したが、躍進候補と見ている。

 もうひとつの名古屋は、とにもかくにもどう転ぶかわからない。昨季も一時は驚異的な強さを見せており、降格危機から一転、今季は優勝すらありうるのではないかと思う一方で、あっけないほどの脆(もろ)さも同居し、昨季と同じ轍を踏む可能性も十分。順位予想の難しさを象徴する存在だ。

 残留争いは、優勝争い以上に予想が難しい。昇格組の2クラブはやや力が落ちるだろうが、一歩間違えば、降格しても不思議はないクラブがほとんどだ。

 一昨季の4位から昨季は17位まで転落した柏レイソルのようなケースも決して珍しくなく、過去には、G大阪やC大阪が同様の憂き目にあっている。その例にならえば、昨季望外の成績を残した広島、札幌に危うさを感じる。

 その他、個人的な注目クラブを挙げるなら、神戸とC大阪。豪華補強の”ミニ・バルサ”が評判倒れに終われば、リーグ全体の盛り上がりに水を差しかねず、その意味でも神戸には優勝争いに加わってほしい。

 また、C大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ新監督は、次々に主力が引き抜かれた東京ヴェルディを、昨季は昇格目前まで導いた。その卓越した手腕が初のJ1でどれだけ発揮されるのか、楽しみにしている。