「サッカーライターになるにはどうすればいい?現役の記者に聞いてみた」
記事をご覧の皆さま、Tudo bem?? (お元気ですか?)
ブラジルを中心に南米サッカーの情報を配信するライター、平安山(へんざん)です。
本職はブラジルのサッカーコーチだったりします。名古屋グランパスU12アシスタントコーチや、FC琉球TOPチームの通訳をしていた経験もあります。
突然ですが、皆さんは「サッカーライターになりたい!」「興味がある!」なんて考えはないですか?
そんな皆さんに今回は僕がサッカーライターになったキッカケなどをご参考にして頂ければと思い、執筆する事にしました。
ただ僕は現在も本職がサッカー監督で、ライター歴もWEB上の媒体のみで3年。ライターとしては少し異色過ぎる上にまだまだ新米という事で、強力な助っ人にご協力をお願いしました。
多くの媒体で執筆中のスポーツライター、仲本兼進さんだ。
那覇西高→沖縄大
スポーツライター。サッカーを中心に、バスケや野球なども幅広く執筆。「Jリーグ公式」「ゲキサカ」「ジュニアサッカーを応援しよう」「エルゴラ」「高校サッカー名鑑」「J's GOAL」「週刊ベースボール」などで執筆。時折ラジオにも出演。
公式Twitter: @kenshinac
ライターになれたキッカケ
平安山「こんにちは。今日は宜しくお願いします。仲本さんは様々な媒体で執筆なさっていて、密かに勉強させて貰っています。初めに、仲本さんがメディアで働く様になったキッカケを教えて下さい」
仲本「こんにちは。こちらこそ宜しくお願いします。初めにですが、僕はフリーランスでライターをやる前にラジオ会社に勤めていました。沖縄大学時代からマスコミ就職を目指し、アルバイトのラジオのAD募集に応募したのが全ての始まりです」
平安山「ライターの前はラジオADだったのですね。そこではどんな仕事内容だったのでしょう?」
仲本「ADなので、ディレクターの補佐ですね。メール連絡をしたり、録音など番組制作に関わっていました。その時はサッカーは全然関係なくて、健康番組や懐メロを扱う番組を担当していました。そこから良い流れで大学卒業後も社員としてお世話になる事となりました」
平安山「そこからサッカーへはどういう流れで進んだのですか?」
仲本「僕は高校も那覇西ですし、ラジオADやってた頃も仕事が終わって家に着くと丁度テレビで欧州サッカーがやってて、元々毎日サッカー漬けだったんです。そしたら会社にもサッカーユニホームで出勤してまして(笑)、それで会社のみんなにサッカー好きだとバレました」
平安山「それは面白いですね(笑)でもそれで結果的に大好きなサッカーの担当になれたのですから結果オーライと言うべきでしょうか。晴れてラジオのサッカー担当になった仲本さんですが、現在はフリーランスのライターです。ラジオからはどういう経緯があったのでしょうか?」
仲本「私は地元のFC琉球が好きで、番組の中で地元のバスケチームや様々なスポーツの事にも触れるんですけど、FC琉球を優先させたいという気持ちがありました。FC琉球の試合を取材している時も、ラジオの仕事で途中で帰らないといけない事とかあって、それが少し残念に思っていました。また、ラジオというのは客観性が大事で、自分の意見はあまり挟めません。 誰にでも分かる様な浅く広い表現の仕方で、声のみですし時間制限もあって世に伝えられる情報量に限界を感じました」
平安山「確かにどうしても制限はありますね。ご自身のやりたい様にやるというのは難しいかも知れません」
仲本「なのでラジオで言い切れなかった消化不良の自分の意見はTwitterやブログで発信していたんです。そしたら当時ゲキサカの担当をしていた方が見ていてくれて、声をかけてくれました。今は町田ゼルビアの広報をやっている近藤さんという方です。驚きましたよ。それがライターに足を踏み入れた瞬間ですね」
平安山「僕もTwitterなどSNSの発信から取材が来たり、ライターとして執筆依頼が来たり、中には監督としてのオファーを受けた事もあります。ライターをやりたい方はまずは発信してみる事が大事なのかも知れません」
仲本「ゲキサカからスタートさせたライター人生なんですけど、書いていたらまた別の媒体からも次々とオファーが届く様になりました。その時はエルゴラや高校サッカー名鑑、スポーツ報知など。初給料の時の喜びは格別でしたね。その経験から現在は各媒体でFC琉球の番記者をさせてもらっています」
フリーランスのライターの1日
平安山「ライターの1日について教えて下さい。やっぱり1番気になるのはJリーグの公式戦の日。どんな感じなのでしょうか?」
仲本「試合日にはだいたい3時間前にはスタジアムに到着していて、会場の準備なども見てもいます。だいたい2時間前くらいになるとユニホーム姿の子供とかも増えてくるので、少し話を聞いたりしてネタを集めます。試合の1時間前にはJ's GOALに試合直前の盛り上がりを1つの記事として出します。FC琉球のスタジアムグルメとして有名なキロ弁を紹介したりとか。試合直前の記事なので、スピーディーな作業が求められますね」
平安山「キロ弁はワンコインでボリュームたっぷり1kg食べられる事で話題になりましたね。仲本さんは他にも子供の様子や熊本募金の様子なども記事にしています。スタジアムグルメの記事が多いのは仲本さんの食いしん坊な性格を隠しきれてないからですよね?(笑)」
仲本「(笑)」
平安山「試合1時間前の記事を書いたら次はどうするのですか?本番はここからなのかと」
仲本「だいたい試合15分前に記者席に移動します。ここからは更にスピード勝負です。前半を観戦して、ハーフタイムの内に前半の戦評は既に書き込んでおきます。そして試合が全て終わった後、監督会見に向かい、インタビューをします。まずはアウェーチームを5分〜10分、次にホームチームであるFC琉球を15分くらいですかね。そして選手インタビュー。アウェー1人、ホーム2人ほどに話を聞きます。インタビューするとまた違った視点を加えた記事が書ける様になったりします。これが終わると大急ぎで試合戦評のレポート記事をすぐに提出しなければなりません」
平安山「監督会見だけで合計25分、それに加えて選手インタビューもあって・・・って、ほとんど書く時間無いじゃないですか!?しかも選手や監督もサポーターに挨拶してたり体のケアしたりしてて、すんなり会見場に来るとは限らないですし」
仲本「選手のシャワーが長くてちょっと焦るのはライターのあるあるネタかも知れません(笑)とあるチームでは選手が自分へのインタビューがある事を忘れて帰ってしまう事も過去に起きたみたいです(笑)」
平安山「僕も現在はブラジルリーグ所属ですが、今後Jリーグに戻る可能性もありますし、気を付けます・・・」
仲本「試合選評のレポートを提出すると、今度は監督と選手へインタビューした内容・コメントを文字にする作業に取り掛かります。これは先ほど話した試合終了直後の監督会見と選手インタビューの時にボイスレコーダーに録音しておいて、それを再生して聞きながらパソコンに打ち込みます。これを記者室が閉まる試合終了後2時間半以内までにJリーグに提出します」
平安山「試合終了した後に2記事、そんなスピードで書くんですね。しかもJリーグの試合ってナイターで夜遅い時もあるので、家帰るのは日をまたぐなんて事もあるはずです。いやぁ大変。いつもありがとうございます。それだけのスピードだと、パソコンへの打ち込みにブラインドタッチは必須ですか?」
仲本「必須、とは言いませんが、やはりベターです。1分間に150〜200文字打てるスピードがあるとやり易いかも知れません」
平安山「続いて、Jリーグの公式戦以外の日はどんな風に活動しているのですか?僕の場合はブラジルで本職のサッカー指導者をやっている事が多いのですが」
仲本「フリーランスなので、もう本当にその日次第ですね。その都度、例えば高校野球の取材だったり、臨機応変です」
平安山「それもJリーグの取材と同じような流れのスケジュールですか?」
仲本「それも記事によりますね。ルポ記事などは3日くらい時間をかけて作り上げるような記事もありますよ。実際の現場報告に、余分な自分の意見などが入り込んでないかチェックします。記事は公平で、偏ったりしない様に気を使っています」
平安山「やっぱりそういう部分にも注意しているんですね。プロフェッショナルを感じます」
ライターを目指している方へ
平安山「それではライターを目指している方向けのインタビューをさせて下さい。現在は様々な媒体で記事を書いていますが、それらは向こうからのオファーですか?それとも仲本さんから積極的にアプローチしたのでしょうか?」
仲本「だいたい半々、と言ったところです。でも基本的にはオファーを待つばかりでなく、自分から媒体に積極的にアプローチすべきじゃないかと思います。その方が相手への印象も良いと感じています」
平安山「やっぱり積極性は大切なのですね。僕の場合だと8割とか9割、自分から媒体へお願いして記事を書いています。"南米や日本のこんな情報書けますが、御社でいかがですか?"という趣旨のメールをよく送っています。仲本さんの場合、ラジオ会社に勤めていた経歴をお持ちですが、その経験でライター人生に活きている事はありますか?」
仲本「あります!ラジオに限らず、大卒でいきなりフリーライターよりも、社会人を経験してからフリーライターになる方が良い気がしています。その方が選手を含めた色んな人の気持ちが分かってきますし、サッカーだけに縛られない幅広い記事が書ける様になりました」
平安山「インタビューのやり方で僕へのアドバイスはないですか?(笑)」
仲本「うーん(笑)やり方の違いですが、平安山さんはインタビュー内容を紙にメモしながら話を聞いていますが、僕の場合だと録音にしています。録音の方が後から振り返った時にも声の感じや間の取り方などから相手の感情を読み取り易いメリットはあるのかなと。インタビューした相手の意見に出来るだけ不純物が混じらない様に、読者に内容をそのまま伝えられる様に努力しています」
平安山「とても良い勉強になります」
仲本「スマホに録音アプリとかもあるので是非活用してみて下さい。録音する事のもう1つのメリットは、インタビューを後から振り返った時に自分のインタビューのやり方も録音されているので、自分の反省が出来る点も挙げられますね。例えば、"こういう質問の仕方をした方が良かったのでは?"みたいな部分が出たら常に改善を心掛けています」
平安山「僕も改善し続けなければと思いました。インタビューの時に気を付けているポイントはありますか?」
仲本「自分よりも相手に話して貰う事です」
平安山「そのために気を付けている事はありますか?」
仲本「雰囲気作りですね。空気感を感じて貰うと言いますか、ポジティブな話をする時とネガティヴな話をする時とでトーンや間の開け方を変えています。あとは壁を作られない様に信頼関係を構築する事も大切です」
平安山「具体的なテクニックなどはありますか?」
仲本「基本的にはポジティブな話をする時にはこちらもハキハキと話し、ネガティヴな話になる場合はこちらも少しシリアスに話しかけます。また、僕の質問に対して相手が答え切った後に、あえて次の質問を返さず変な間をあける事もあります。こうするとその間に何か少し気まずさが残るので、向こうが頑張ってもう少し、もう一声出してくれたり。実はそこに本音が出てきたりします」
平安山「おー!かなり具体的で僕にとっても学びになりました」
仲本「また、まだ信頼関係が出来ていない時などは、本当に聞きたい質問をダイレクトにぶつけてもあまり答えて貰えない事があるので、クッションを入れてみたりしています」
平安山「例えばどんな過去にはどんなクッションを入れてみましたか?FC琉球の選手相手になるのだと思いますが」
仲本「例えば、"日焼けが凄いね"ってクッションを入れてから、選手の頑張ってる部分へと自然に話を進めたりします。今年の例だと、FC琉球のジョンソン監督とまだ信頼関係が築けてない時には、ゴルフの話をしてまずは打ち解けてからインタビューを始めました。あまりかしこまり過ぎず、人間らしさを出して貰うためにどうしたら良いかを考えながら練習見学していると、練習の前後にゴルフのスイングをしているのを見つけて、"これだ!"と(笑)」
平安山「面白いですね(笑)そういったテクニックはどうやって身に付けたのですか?」
仲本「やっぱりラジオですね。役者さんを相手にしているので、自分も役者になりました。色んな方々と接してきた経験も役に立っています。有名なタレントさんは礼儀正しい方が多くて、色んなものを感じさせられましたね。インタビューをしていて、普段あまり話さない方が壁を取っ払って話してくれると嬉しいです」
平安山「最後に、これからライターを目指している方へのアドバイスをお願いします。例えば僕みたいな新米ライターにも(笑)」
仲本「僕が気を付けているのは、過信してしまわない事ですね。過信してしまうと、選手や監督が言った意見に、時折自分の意見を加えてしまって、彼らの意図から少しズレた意見をあたかも言ってしまったかの様に書いてしまう事があります。自分のフィルターで他人の意見を曲げてしまわない様にしています。彼らの言った意見を変えずに世に伝えたいと思っています」
平安山「今回はありがとうございました。ライターを目指す方に少しでも参考になれば幸いです」
筆者名:平安山 良太
小学生よりサッカーを始めるが、ケガにより早期挫折。高校時代より指導者の道へ。日本で中京大学や名古屋グランパスU12でのアシスタントコーチなどを含め、幼稚園〜大学生まで幅広く指導者として関わった後、更なる成長を志し海外へ。
東南アジアのトライアジアプノンペンFC(現カンボジアンタイガーFC)やラオス代表で研修の後、ブラジルへ渡る。ブラジル一部リーグのアトレチコ・パラナエンセ→SCコリンチャンス→Avai FCの下部組織にてアシスタントコーチを歴任。
ライター、代理人、Jクラブでの通訳等も広く行っている。アルゼンチンのリーベルプレートやペルーのアリアンサ・リマで研修生の経験も。
ツイッター: @HenzanRyota
