「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「結ぶ」、「結婚」「結実」の「結」。まげを「結う」とも使います。今回は「結」に込められた物語を紹介します。



「結」という字は、糸へんに「吉」と書きます。

「吉」の下半分、「口」の部分は神への祈りの文を入れる器を表し、上半分の「士」という字は、小さな鉞の刃の部分を描いたもの。

この刃には、邪悪なものを清める力があると考えられています。

つまり「吉」という字は、祝詞を入れる器の上に鉞の刃を置き、祈りの効果を守る様子を描いたもの。

その横に「糸」を添えた「結」という字は、念願がかなった「吉」の状態を結び守ることを表し、「つなぐ、約束する、固める」といった意味をもつようになったのです。

かつて「結び目」は、手紙の代わりとして意思や約束事を伝える役割を果たしました。

また、枝や草の端を固く結び合わせて、いのちの無事や幸多きことを祈るまじないにしました。

そして敬意を表す贈り物には、繊細な水引の結びが今でも使われています。

いつの時代も、私たちの身近なところにある結びの行為。

それは実用的であると同時に芸術的表現であり、ときに、神秘的な力を発揮します。

「むすぶ」の語源のひとつとされているのが「苔むす」の「むす」。

苔が自然と生えてくる、ということを示す表現ですが、「むす」には人知を超えた力でいのちが生まれてくる、という意味があります。

「むすこ」「むすめ」もまた、神からの授かりもの。

新しくこの世に生を受けた子どもたちのことをさす言葉です。

「むすび」とは、万物を生み出す、目には見えない精霊のはたらきとして、人々が畏敬の念を抱く行為だったのです。

ではここで、もう一度「結」という字を感じてみてください。

結婚式シーズンの今、縁あってむすばれる二人。

お互いを心から思いやり、誓いをこめた結び目に神さまは宿り、祈りをうけとめ、かなえる力を与えてくれます。

ゆるみそうになったら、もう一度しっかり、結びなおせばいい。

希望にあふれたはじまりの瞬間をとどめた「結ぶ」という文字。

そのなりたちを思い出し、心を新たにするのです。

そうしてたゆまぬ努力を続けてゆけば、いつかきっと、豊かな実をむすぶことでしょう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『結びの文化 日本人の知恵と心』(額田巌/著 東洋経済新報社)

『ものと人間の文化史6 結び』(額田巌/著 法政大学出版局)

6月11日の放送では「潤」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/