学生の窓口編集部

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京都では、手土産の文化が根付いているとよく耳にします。京都在住のマナー講師で、マナーフィニッシングサロンNoblesse(ノブレス。京都市中京区)主宰の野村英子さんに尋ねると、「お礼や感謝の心を形にし、相手の負担にならないようにと小さな贈り物をすることは、京都の日常的なコミュニケーション術の一つです」という答えが返ってきました。そこで野村さんに、相手を喜ばせる手土産の選び方や渡す際のマナーについて聞いてみました。

■相手の好み、ライフスタイル、年齢、家族構成に合わせて選ぶ

野村さんは、京都の手土産文化について、こう話します。
「織物や陶磁器、台所道具など多種多様な伝統工芸が盛んで、職人の町として発展してきた京都では、人とのつながりが密接です。京都の人は、隣人や友人、取引先などに、お世話になったお礼や、『お招きくださってありがとう』という感謝、『これからよろしくお願いします』というあいさつの思いを伝えるために、ひんぱんに手土産を渡します」

日常生活の中で、誰かにお礼や感謝を伝えたい場面は多くありますが、何を選べばいいのか悩みます。「相手の好みや立場を考えて、相手がもらってうれしいだろうものを想像するのが京都流です」と言う野村さんは、次の「手土産選びの4つのポイント」を挙げます。

(1)相手の好みに合わせる

まずは相手のライフスタイルを考えて、好まれそうな品をいくつか想定します。例えば、ワインが好きな人には、ワインに合うチーズ、生ハムなどのおつまみ、自然派志向の人には無添加の食品というようなセレクトです。次に、そこからそのときどきの旬や歳時事に合わせて選びます。

(2)食べ物の場合は、季節が感じられる品を

京都には、季節の移ろいを表現するお菓子や総菜が豊富にそろっています。四季の花鳥風月を表す和菓子、旬の果物を使った洋菓子、秋から冬にかけてとれる京野菜、聖護院かぶを薄切りにして漬け込んだ千枚漬など、季節が感じられる品には風情があり、相手の心を和ませることでしょう。

(3)相手の年齢と家族構成を考慮する

例えば、相手が20代で一人暮らしなら、調理の必要がなく、すぐに食べられる総菜やいなりずしなどの詰合せが喜ばれます。相手が実家住まいで、子どもから高齢者まで幅広い世代の家族がいる場合は、柔らかくてかみやすいせんべい、ようかん、クッキーなど、好き嫌いの分かれない定番のお菓子で、個包装されているものがいいでしょう。

(4)その土地の珍しい品を選ぶ

自分では購入しない珍しいもの、普段は手に入らないものをもらうとうれしいものです。例えば、京都の人がほかの地域で暮らす人に渡すなら、抹茶や豆腐を使った京都らしい和風スイーツ、日本では京都にしか支店のない海外ブランドのチョコレートといった品を選びましょう。

■「持参した理由」を添えると受け取りやすい

続いて、「相手に遠慮なく受け取ってもらうためには、渡すときの気遣いも必要です」と野村さん。ここで、「手土産を渡すときに気を付けること」について教えてもらいましょう。

(1)タイミングに配慮する

相手の自宅に訪問して手土産を渡す場合、玄関を上がって部屋に通され、改めてあいさつした直後に手渡すのが基本のマナーです。ただし、生ものやアイスクリームのように冷蔵・冷凍保存の必要なものや、生花など、相手が冷蔵庫にしまう、花びんにさすことを考えると、玄関先で渡したほうがよいものもあります。状況や品に応じて配慮しましょう。

(2)手土産を持参した理由を添える

手土産は思いを形に表したものなので、その思いを言葉にして添えましょう。「心ばかりの品ですが」という一言のほか、いつもお世話になっている感謝や以前にごちそうになったお礼など、「何のために手土産を持参したか」を伝え、相手が受け取りやすいような心配りをします。

(3)紙袋か風呂敷を使う

ほこりをよけるため、手土産は紙袋に入れるか、風呂敷に包んで持参します。そして、紙袋や風呂敷から出してから相手に渡します。意外と知られていない渡し方のマナーとしてお勧めなのが、紙袋をお盆替わりにして、手土産の下に敷いて渡す方法です。これは、貴重な金品を贈呈する際には台にのせて渡すという古来の風習の名残でもあり、丁寧な印象と気遣いが伝わります。

最後に、「京都に住んでいると、海外からの観光客や、仕事や留学のために滞在している外国人と知り合う機会も多いんです」と言う野村さんに、観光都市、京都らしい手土産エピソードを教えていただきました。

「外国人の友人への手土産には、食べ物だと好みに合わないことがあるので、京都の伝統工芸の技を活かした雑貨を選んでいます。中でも『ユニークで使いやすい』と好評だったのが、和柄の風呂敷で作られたポーチ、日本の草花が描かれた京扇子、絞り染めの布で作られたアクセサリーです。手渡すときに、使い方や伝統技術について簡単に紹介すると、会話も弾みます」

振り返ると、筆者は手土産を選ぶとき、「店頭に並んでいる適当なものでいいか」、「センスの良さをアピールしたい」と思って、相手の好みやライフスタイルは二の次になっていました。相手を喜ばせる手土産術を身に付けて、コミュニケーションの一助にしたいものです。

(日暮ふみか/ユンブル)

取材協力・監修 野村英子氏。マナー講師。マナーフィニッシングサロンNoblesse(ノブレス。京都市中京区)主宰。京都で代々続く呉服商の家に生まれ、母方は老舗の刃物屋という伝統文化に携わる環境で育つ。国際線キャビンアテンダントとして活躍した後、マナー講師に。サロンでは、メイク、ファッションだけではかなわない内面の美しさを表現するための淑女マナーレッスンを行っている。http://madam-n.com/