事件直後に撮られたAさん(79)の痛々しい写真

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 若者たちによる凶悪な強盗事件が多発している。なぜ彼らは後先考えず、人生を棒に振ってしまうのか。今年2月、埼玉県狭山市で発生した強盗致傷事件で被害に遭った70代夫妻が恐怖の体験を語る。(前後編の前編)

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暗闇の中で懐中電灯のような灯りが…

 会社役員のAさん(79)はその日、いつも通り妻と夜9時過ぎに就寝した。年老いてからは2階を行き来するのが面倒になり、リビングで布団を並べて寝ている。

 会社の勤務は週3回で、デイケアサービスに同じく週3日通う妻(78)と2人暮らし。余暇は共通の趣味である畑作りを楽しむなど、2人でのんびりとした老後生活を送ってきた。

事件直後に撮られたAさん(79)の痛々しい写真

 2月19日もいつも通りの平和な朝を迎えるはずだった。だが、3時50分頃、ガラス戸の向こうにちらちらと灯りが見え、いつもより早く目が覚めた。

 近くに住む息子と孫は合鍵を持っている。きっと何か探し物があって取りにきたのだろう。そう思い、リビングの扉を開け、物音のする2階に向かって声をかけた。「おーい、誰かいるのかー」。

 返答はなかったが誰かがいるようだった。間もなくすると、暗闇の中で懐中電灯のような灯りが、ちらほら動きながら階下に降りてきたのが見えた。

 その瞬間、泥棒だと気づいた。慌ててリビングの扉を閉め、侵入を防ごうとしたが、79歳の力でかなうはずがない。最後は力づくで開けられた。

お父さんが男からバールで数発殴られた

 そこからは記憶が途絶えている。

「175センチくらいある大柄の男が、真新しい40センチくらいのバールを手にしていたことはなんとなく覚えています。顔ははっきり見ていないし、殴られた場面は全く覚えていない。一番深手を負ったのは目の辺りでしたが、手足にもアザが残っていたので何発か殴られたのでしょう。『ここでじっとしていろ』というようなことを言われ、冷蔵庫の前で座らされたこともうっすら覚えている。その間、男に手と目を両手で塞がれ続けていました」(Aさん)

 妻はどうしていたのか。

「お父さんが男からバールで数発殴られ、血を流しているのを見て震え上がりました。そのうち男が私のところにもやってきて、私も頭を数回殴られた。そして、ソファーに移動させられ『お前はここで静かにしていろ』と命じられたのです。怖かったなんてものじゃありません。殺されるかと思いました。うずくまったまま目を伏せ、ただ時が過ぎるのを待ちました」(Aさんの妻)

 Aさんの記憶が戻ったのは30分くらいしてからのこと。その間、犯人らは手分けして家中を引っかき回し、金目の物を探していた。彼らはいつまでいるのだろう、最後に口封じで殺されなければいいが…。そんなことを考えているうちに、犯人たちは家を出て行ったという。

頭に穴を開けて血を抜く大手術

 妻を見ると流血していたものの、命に別状なさそうだった。110番しようと思ったが、家の固定電話の線は切断され、子機と携帯電話は桶の中に水浸しに。だが、犯人たちはファクスがある「親機」が、倉庫として利用していた部屋に設置されていたことを見逃していた。

 Aさんは親機を使って110番。すぐにパトカーと救急車が駆け、Aさんは病院に搬送された。幸い妻は軽傷で済んだが、Aさんは眼窩骨を骨折する重傷を負った。

「ちょっと当たりどころが悪かったら、失明していたでしょうし、最悪、死んでいたでしょう。当初は全治3カ月と言われましたが、その後、頭の中に血が溜まっていることが判明し、頭に穴を開けて血を抜く大手術を受けました。事件から4カ月が経過し、最近ようやく動き回れるようになったところです」(Aさん)

 奪われたのは現金約13万円と高級時計、ネックレスなどの貴金属11点(時価81万円相当)。埼玉県警は、当日の午前8時頃、現場近辺で車に乗っていた鎌田竜二、佐藤辰弥両容疑者を職質し、車内からバールが見つかったため、ピッキング防止法違反容疑で現行犯逮捕し、翌日には岩田咲人容疑者も同容疑で逮捕した。

 そして発生から約3週間後の3月3日、最後の1人である17歳の少年も含め、4人全員が住居侵入と強盗致傷容疑で逮捕された。その後の捜査で、少年以外の3容疑者は2月8日深夜に埼玉県内のコンビニ2軒を強盗に入った容疑でも再逮捕された。

犯人の1人は向かいに住む老夫婦の孫だった

 それにしても、鎌田・佐藤両容疑者はなぜ犯行から数時間しか経っていないというのに「現場近辺」に戻ってきたのか。

「きっと岩田を家まで送るためですよ。捕まえてくれと言わんばかりのバカな行動ですよ」(Aさん)

 実は、岩田容疑者は目の前に住んでいた老夫婦の孫で、2年くらい前から老夫婦と共に暮らしていたのである。

「どうやら親の家を追い出されて、祖父母の家で居候させてもらっていたようです。同い年くらいの女性と一緒に。ガラが悪く、挨拶もろくにしない。実は玄関の鍵はちゃんと閉めていたんですが、勝手口は開いたままでそこから侵入されました。もしかしたら、岩田はそれを知っていて、狙いやすい家があると仲間に伝えたのかもしれません」(同)

 Aさんのショックはそれだけにとどまらない。5月中旬、さいたま家庭裁判所川越支部は少年審判で、衝撃の決定を下したのである。

 後編【“バールで頭を殴打”の強盗事件を起こした17歳が「逆送なし」で少年院へ 79歳被害者は「謝罪・弁済がないのに甘すぎる」と激怒】では、逆送なしの決定を下した少年審判への疑問についてAさんが語っている。

デイリー新潮編集部