「予約診療のキャンセル料」は誤解だった? 厚労省が通知訂正した“本当の対象”を医師が解説
病院やクリニックの予約を変更したり、やむを得ずキャンセルしたりした経験がある人は少なくないでしょう。
厚生労働省は、6月開始の診察予約のキャンセル料に関して、当初の通知文言を訂正しました。当初の通知では一般の診療予約にもキャンセル料が発生するように受け取られる可能性がありましたが、実際には対象が限定されていることが改めて示されています。この内容について中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
厚生労働省が発表した内容とは?
編集部
厚生労働省が発表した内容を教えてください。
中路先生
厚生労働省は、2026年度の診療報酬改定において、選定療養(保険診療とは別に患者さんが追加費用を負担する制度)の予約診察を患者さん都合で直前にキャンセルした場合、医療機関がキャンセル料を徴収できるようにしました。対象となるのは、「予約料を徴収している予約診察」です。予約料とは、一定の要件を満たした医療機関が地方厚生局に届け出ることで徴収できる特別な料金を指します。今回の改定は、予約料を支払って利用する予約診療の運用を対象としたものです。
なぜ厚生労働省は訂正通知を出したのか?
編集部
厚生労働省は今回、通知を訂正しました。なぜ訂正が必要になったのでしょうか。
中路先生
当初の通知では、「予約に基づく診察を患者さんの都合で直前にキャンセルした場合にキャンセル料を徴収できる」と記載されていました。しかし、「選定療養における予約診察」という条件が明確ではなかったため、「一般の診療予約でもキャンセル料を徴収できるようになった」と受け取られる可能性がありました。このため厚生労働省は訂正通知を発出し、「キャンセル料を徴収できるのは予約料を徴収している選定療養の予約診察に限られる」ことを明確化しました。厚生労働大臣は、現場に混乱を生じさせたことについて謝罪し、今後は制度の周知にあたって誤解が生じないよう努める考えを示しています。
内容への受け止めは?
編集部
厚生労働省が発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
今回の件では「キャンセル料」という言葉が前面に出ており、キャンセル料という言葉に不安を感じている人もいるかもしれません。しかし、医療現場としてまず正しくご理解いただきたいのは、この仕組みの対象となるのはあくまで一部の特別な予約診療に限られているという点です。日常的に皆さんが受診している保険診療の予約に対して、新たに追加の費用負担が生じるものではありません。そのため、「キャンセル料がかかるかもしれないから受診を控えよう」といった心配をする必要はなく、これまでどおり安心して医療機関をご利用いただければと思います。一方で、医療現場は以前から、予約の直前キャンセルや無断キャンセルが繰り返されることによって、本来その時間に診察を受けられたはずの患者さんが受診の機会を失ってしまう、という課題が存在してきました。
診療の予約枠は決して無限ではなく、限られた医療資源の一つです。そのため、一つの予約が直前で空いてしまうことは、別の人の受診機会を奪う結果につながる場合もあります。今回の制度は、そうした現場の実情を踏まえたうえでの一つの整理とも捉えられると考えます。
ただし、最も重要な点は制度の有無や費用の発生そのものではなく、「予約」が患者さんと医療機関との間で交わされる大切な約束であるという認識を共有することにあると考えています。お互いがその約束を尊重することで、より円滑で質の高い医療提供が可能になります。
医師の立場として患者さんにお願いしたいのは、体調の変化や都合により受診が難しくなった場合には、当日や直前になってからではなく、できる限り早い段階で医療機関へご連絡してもらうことです。早めに連絡をもらえれば、その時間枠を別の患者さんに案内することができ、結果として地域全体の医療提供体制がよりスムーズに機能することにつながります。
医療は患者さんと医療機関が協力して成立するものです。お互いに配慮し合いながら、安心して受診でき、円滑に医療を提供できる関係を築いていければと考えています。
編集部まとめ
今回、厚生労働省は診療予約のキャンセル料に関する通知を訂正し、対象が予約料を徴収している選定療養の予約診察に限られることを明確にしました。一般的な診療予約について新たにキャンセル料が認められたわけではありません。医療機関と患者さん双方が安心して診療を受けられるようにするためにも、予約の変更やキャンセルが必要になった際は、早めに連絡することを心がけましょう。
