仙台市、宮城県からの「独立」目指し活動活発化…特別市移行に県や他自治体は反発
政令市の仙台市は、宮城県から権限や財源を得て事実上独立する特別市への移行を目指して活動を活発化させる。
機運醸成のためにロゴを作成しており、今後シンポジウムも開催する計画だ。経済を活性化させて国内の拠点都市になる青写真を描くが、実現への課題は多く、県や他自治体からは反発の声もあがる。(市江航大)
「東北のために」
「仙台市が財源と権限の移譲を受けることで、東北のためにやれることがある。地域を持続的に成長させるため、議論が必要だ」。郡和子市長は3月の定例記者会見で、特別市への移行に意気込みを見せた。
市は特別市を目指す理由として、県との二重行政の解消を掲げる。例えば子育て支援だ。仙台市は保育所、県は幼稚園と所管が分かれるが、受付窓口の一元化ができれば利便性が高まる。また、信号機や横断歩道の設置が市の判断で可能となり、交通安全対策でも効率化が図れると主張する。
税収増を期待
税収増も市の狙いだ。特別市になれば、市域内の地方税を一元的に徴収できる。
例えば、県が徴収する「みやぎ発展税」だ。市政策調整課の推計では、県の税収は2024年度56億円だったが、うち8割を市内の事業者が納めた。一方、県から市に回ってきた補助金などは4億円弱にとどまる。特別市なら自分たちの「財布」に入るという訳だ。
市に回る分が少ないという不満は強い。2月の市議会予算等審査特別委員会で、市議が「県の金づるになっているのではないか」と指摘する場面があった。
格差拡大懸念
仙台市は、行政の効率化と税収増を生かして地域経済の活性化を図り、東北地方に人を呼び込む「ゲートウェー都市」機能を強化する方針だ。東京への人口流出を仙台で止め、東北全体の発展に貢献するとも訴える。
ただ県や他自治体からは異論があがる。県幹部は「財政力のある仙台市が独立すれば、県は難しい立場に立たされる。特別市にはデメリットもあるはず。県民全体で議論を行うことが重要だ」と指摘する。
周辺自治体のある首長は「県の税収が減少すればますます仙台との格差が拡大する。仙台だけが良ければいいのか」と苦言を呈する。1次産業を担う地方の過疎化が加速すれば、消費地の仙台にとってもマイナスとなる。
ハードル高く
移行に向けた手続きも未定で、現実的な課題もある。例えば仙台市が宮城県ではなくなるため、県庁をどこに置くかも検討課題になる。さらに県が仙台市を挟んで南北に分かれるため、行政効率が落ちる可能性もある。広範囲の感染症や災害発生時に、仙台市と他市町村間の調整をどうするかも懸念材料だ。
市では2月に、特別市の指定を目指す広報用ロゴマークを発表。今年度には関連シンポジウムを開催し、市の考えを周知して市民の理解を促す方針だ。ただ仙台市だけでなく県全体での議論も求められそうだ。
◆特別市=道府県から切り離され、地方行政を一元的に担う自治体。1947年施行の地方自治法に規定されたが、県側が反発し、代わりに政令市が制度化された経緯がある。人口減少が加速する中、行政の効率化が課題となっており、20政令市でつくる指定都市市長会は昨年12月、林総務相に特別市の早期法制化を要望している。
知事会がプロジェクトチーム
特別市を巡っては、政府の地方制度調査会(首相の諮問機関)で現在、審議されている。国全体の意義や住民への影響、財政面の課題など多岐にわたる論点で議論される見込みで、すでに神戸市などから意見聴取も行われている。
これに併せて関係団体も議論を活発化させており、全国知事会は3月、政令市が道府県から独立する特別市制度について検討するプロジェクトチーム(PT)を設けた。リーダーを務める村井知事らが今秋に知事会としての意見を取りまとめる方針だ。
3月にオンラインで開催した初会合では、神奈川県や千葉県、大阪府など16道府県の知事らが参加し、特別市の制度概要や国の議論について整理した。PTは6月にも再度会合を開いて夏にも中間案を整理し、指定都市市長会との意見交換で議論する見通しだ。
村井知事は取材に「国と地方の仕組み全体を考えるべきで、特別市制度だけを切り分けて先に進めるのは無理がある」と制度化に慎重な姿勢を示している。(岡田俊一)
