竹財輝之助が放つ“危うさ”の引力 『タミ恋』『鬼女の棲む家』など引っ張りだこのワケ
竹財輝之助が画面に現れると、一筋縄ではいかない予感がする。
参考:竹財輝之助が『CODE』でも頼れる“兄”を好演 伊藤歩も登場で事件の核心に近づく
ドラマや映画に登場する彼は、表情も豊かだ。大きな瞳がぎょろりと動き、口元がへの字に沈む。意味深な沈黙を落とすときもあれば、淡々とした声色の奥に執着の影が潜むこともある。何気ないシーンでも「このあと何かが起きる」と思わせてしまうのは、竹財が得意とする「予兆の演技」が光るからだろう。
それにしても、近年の竹財輝之助の活躍ぶりは、実に目ざましい。『ターミネーターと恋しちゃったら』(テレビ朝日系)では、くるみのイケメン年上ハイスペック元カレ・須東峻一郎を好演し、物語に不穏な影を落としている。さらに今期は、『鬼女の棲む家』(中京テレビ・日本テレビ系))で恋に溺れて転落していく男を演じ、『未解決の女 警視庁文書捜査官 season3』(テレビ朝日系)第4話、『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)第2話にもゲスト出演。どの作品でも、確かな存在感を残している。
彼の演技を見ると、目が離せなくなるのはなぜか。上記3作品における竹財の演技の魅力、そして見ているだけで引き寄せられてしまう「危うさ」と「吸引力」の正体に迫っていく。
『ターミネーターと恋しちゃったら』は、宮舘涼太演じる「400年後の未来からやって来たイケメンアンドロイド」の時沢エータと、少女漫画編集者の神尾くるみ(臼田あさ美)が禁断の恋をするヒューマンSFラブコメディー。竹財が演じる峻一郎は、一見すると爽やかで優しいし、距離の縮め方も巧みだ。迷いがちな彼女に寄り添い、柔らかい言葉をかけていく。くるみも、そんな彼を元カレとはいえ、完全には拒めない。
その一方で、口元は微笑んでいるのに、目はいつも笑っていない。ときには、「社会の不正をあばきたい」と意味深なセリフを残し、声がふっと重く沈む。エータに煽られても、眉を八の字にする程度で動じることもほぼない。その「静かな不気味さ」が、峻一郎の「危うさ」をじわじわと浮かび上がらせる。
エータは嫉妬と使命感の狭間で揺れ、「警戒すべき、危険人物です」と呟きながらも、少しずつ壊れていく。
峻一郎の恐ろしさは、くるみの「絶対的ヒーロー」であるエータを精神的に追い詰めてしまうほどの、ふわふわとつかみどころのない危うさに宿っている。その「危うさ」は、目の前にくるみやエータがいるにもかかわらず、どこか遠くを見ているような虚ろな目線からも滲み出る。
しっかり掴んでいないと、ふっとどこかへ飛んでいってしまいそうな不安定さ。その揺らぎが、何を考えているのかわからない得体の知れなさへと変わっていく。そんな彼のつかみどころのなさこそが、視聴者を引き寄せて離さない「吸引力」の源なのかもしれない。
その吸引力や危うさは、他の作品からも見てとれる。『鬼女の棲む家』では、高級ラウンジ嬢・マリナ(小川李奈)に溺れ、転落していく夫・星野透を演じた。普段は良き夫・父なのに対し、裏では同僚に金を借りてまでマリナに入れ込む。
透は妻の明香里(石田ひかり)に、マリナのことを本気で好きになったことを告げる。逆上した明香里からラーメンをかけられても動じず、「彼女は僕の話をきいてくれたから」と、じめっと語る声には、一種の狂気すら感じた。そのシーンには、今まで明香里の前で本音をさらけ出せなくて我慢し続けてきた、彼の「心の隙間」が滲んでいた。
『未解決の女 警視庁文書捜査官 season3』第4話では、竹財は殺害される元モデル事務所社長・橋詰旺司を演じた。
登場するなり、「消えた3億円は、僕のものになるはずだったのに……」と意味深なセリフを落とし、じっとりとした声と、何かに取り憑かれたような瞳で視聴者の心を一瞬で掴んでいく。短いシーンにもかかわらず、そのインパクトは強烈だった。
事件の裏には、橋詰を好きでたまらなかった元モデル・深谷栄斗(戸塚純真)の存在がある。
深谷は、橋詰が好きだからこそ、落ちぶれていく姿を見ていられず、彼を見つめるうちに自分自身も崩れていく。回想シーンでは、橋詰が深谷に「スターにしてやる」と笑いかける明るい表情と、お金持ちのカリスマ社長・西園綾音(市川由衣)と恋に落ちてから徐々に落ちぶれていく姿が交互に映し出される。その落差を見事に演じ切っており、竹財の「演技のふり幅」が際立っていた。
橋詰はどんなに弱っていても、落ちぶれていても、仄かな色気が滲んでいた。だからだろうか。彼に恋をする深谷が狂気へ転がり落ちるだけの説得力があった。
本来なら、不倫も事件も決して許されることではない。それでも竹財が演じる男たちは、どこか憎めない。甘くてじっとりとした声色の奥に、「そこへ至るまでの葛藤」や「どうしようもなさ」が透けて見えるからだろうか。そもそも彼が演じる人物は、誰一人として単純な悪ではない。弱さ、渇き、孤独、欲望。そうした揺らぎを抱えた「ひとりの人間」として立ち上がっていく。その人間特有の「複雑さ」を、細やかな表情の変化や声の湿度に宿らせるのが、竹財はとても上手い。だからこそ、どんなに道を踏み外した役を演じたとしても、また彼の姿を見たくなるのだ。
第6話のラストでは、峻一郎がくるみに「もう一度、やりなおさないか」と接近する。そして、くるみを迎えに来たエータは、くるみが峻一郎にバックハグされる姿を目撃し、胸の痛みに耐えきれなくなり、蹲る。さらに、エータの感情がショートしたことに呼応するかのように、雷が体を直撃してしまう。
第7話の予告では、エータに「彼女は渡さないといったら?」と挑発する須東の姿も。エータとくるみ、そして峻一郎。この三人の関係は、どこへ向かうのか。竹財輝之助という「予測不能な存在」がいる限り、ドラマはまだまだ静かには終わらなさそうだ。(文=みくまゆたん)
