魚介類はマグロやサーモンだけじゃない! 「マイナー魚」の美味しさに気づく人が急増中…「SDGsが浸透して野菜の規格外品のようにマイナーな魚への認知が広がってきた」
マグロ、サーモン、ウニ、カニ、エビ、ホタテ……。海鮮丼や回転寿司でも定番のメニューだが、こうしたメジャーな魚介類がもてはやされる一方で、魚名を聞いたこともないマイナーな魚が今、通販でちょっとしたブームになっている。しかも、自宅に届いてみないと、どんな魚が入っているか分からないというから、「なぜブームなの?」と疑ってしまうのだが……。【川本大吾/時事通信社水産部長】
【写真を見る】容器いっぱいに詰められた“マイナー魚”の迫力抜群な姿…スーパーの店頭では見慣れないものの、「間違いなく美味です」
若者を中心に「魚離れ」が言われて久しい。農林水産省によると、国民1人当たりの魚介類消費量は、2001年度に40.2kgだったのが、23年度は21.4kgと半分近くまで減少。肉の消費量との比較では、11年度に魚が肉に抜かれて以来、その格差は広がる一方だ。世界的に魚食人気は高まる中、魚消費が減少傾向にある国は、かなり珍しいと言われている。

そもそも日本では、数百種類の魚介類が水揚げされる世界的に見てもレアな国。全国津々浦々に2000を超える漁港が点在し、古くからさまざまな魚介が獲れ、地域ごとに特色ある食べ方で親しまれてきた。
それがユネスコの無形文化遺産にも登録された「和食」のなかでも、代表格である“魚食”の所以なのだが、前述の様に消費量の面では縮小傾向に歯止めがかからない。スーパーの店頭に並ぶ魚も、日本近海で水揚げされる数百種のうちのごく一部。とりわけ、首都圏の大手スーパーの鮮魚売り場では、販売される魚種はさらに限られる。つまり流通の事情で多くの魚種が「マイナー魚」にされてしまっているのだ。
調理済みのマイナー魚を「サブスク」で
こうした中、アイゴやイスズミ、コショウダイにタカノハダイといった、一般的に馴染みの薄い魚を積極的に漁師から仕入れ、さまざまな味付けで調理し、冷凍パックした商品を通販サイト「フィシュル!」で販売するのが福岡市の「株式会社ベンナーズ」だ。
同社は県内を中心に全国から魚を買い付け、調理済み商品をサブスクリプション(定額制)で提供している。例えば「6パックおまかせ便」は、税込み5927円。扱う魚は、国産天然魚で200種類以上。メジャーな魚も含まれるが、先ほど紹介したようなマイナーで、魚市場では値が付きにくい魚種の利用も多い。和風、洋風、中華風40種以上の味付けでパックされ、生食用は解凍してごはんの上に載せるだけで食べられる簡単・便利な商品だ。
魚離れの本質は「調理離れ」といった専門家の指摘もある。同社の井口剛志社長は「魚を食べたいという需要を作ることが先決」と話す。マイナー魚については、「行き場をなくした魚も少なくないため、生産者から一定の値で買い取り、その魚に合った味付けでおいしく食べてもらえれば嬉しい」と言う。
購入した利用者からは、「普段はお目にかからない魚をいただける目新しさがある」「スーパーで魚を選ぶ時間がないし、種類が限られてしまう。『フィシュル!』で手軽に珍しい魚を食べることを継続したい」「食べたことがない魚が手軽においしく食べられる。メジャーな魚しか流通しないことに反発したくなった」といった意見が同社に届いているという。
都市部でこそ高まるマイナー魚人気
一方、魚調理の上級者から人気なのが「株式会社ビビッドガーデン」(東京)が運営する産直サイト「食べチョク」だ。このサイトは、サービス開始から8年半。コロナ禍で利用者を増やし、現在の登録者はおよそ135万人。近年は利用者の2割ほどが魚を注文しているという。
何匹もの魚介が入った鮮魚ボックスには、「未利用魚」(マイナー魚の別の言い方)と表記された鮮魚ボックスが数多く出品されている。同社の秋元里奈社長によると、「利用者は東京都や大阪府など都市部の人が中心。50歳代がボリュームゾーンで、釣り好きの人も多い。中には、魚をさばくのが趣味という若者もいて、夫婦で晩酌するために夫が早めに帰宅し、魚でお酒のあてを作る20〜30代もいる」のだとか。
利用者は普段は見慣れない魚を調理して、食べチョクの投稿やSNSで公開することがあり、「閲覧した人が同じように調理してみたいと思って、注文することが増えている」と秋元社長。各地の漁業者などが出品する鮮魚ボックスの中身は届くまで分からないが、「SDGsの浸透もあり、野菜や果物で大きさが不ぞろいだったり、形が悪かったりする『規格外品』のように、2〜3年前からマイナーな魚の認知が広がってきた」(秋元社長)とみている。
スーパーなどで定番の魚を買うのではなく、メギスやメヒカリ、ガシャエビといった食べチョクによる未利用魚の購入で「魚がさばけるようになった」「未利用魚にはまっちゃいました」といった声も寄せられ、次第に人気が高まっている。
全国漁業協同組合連合会で魚食普及に取り組む馬田英史消費拡大対策室長は、「日本は世界でも稀に見るほど、水産資源が豊かで多くの種類の魚介が獲れる。流通などの事情で多くが食卓に届いていない現状は大きな課題。知らない魚もすごくおいしいということを多くの人に知ってもらうよう、生産者団体としても努力していきたい」と話している。
川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋)。最新刊に『国産の魚はどこへ消えたか?』(講談社+α新書)がある。
デイリー新潮編集部
