新婚旅行の新定番は「沖縄」に…海外旅行は再び「高嶺の花」へ、「近場化」が進んでいた

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いま、海外旅行が再び“高嶺の花”になりつつある。出入国管理在留庁の公表資料(令和7年速報値)によれば、2019年に2000万人を超えていた日本人出国者数は、2025年には約1473万人まで回復したものの、依然としてコロナ前の水準には届いていない。

この傾向は、新婚旅行にも及んでいるようだ。かつて、海外旅行がまだ一般的でなかった時代、とりわけバブル期以前には、たとえば東京近郊の新婚夫婦であれば「ハネムーンは熱海」のように、近場が定番とされる価値観も存在した。

静岡県熱海市と言えば、神奈川県に隣接しており東京都からもほど近い自治体。もちろん2026年現在で、すでに熱海が再び新婚旅行先の定番になっているわけではないものの、近年の流れがさらに進めばそう遠くない将来、“近場で済ませる新婚旅行”がまた当たり前になる可能性もあるのではないだろうか。

日本人のハネムーンは再び“近場で済ませるもの”へと変わっていくのか今回は航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏に話を聞いた(以下、「」内は鳥海氏のコメント)。

記事前編は【「熱海」が再び人気の旅行先に…若者の「海外旅行離れ」が加速、欧米は「限られた旅行好きだけが行く場所」へ】から。

「ハネムーン先」に選ばれなくなったハワイ

現在の20代カップルはハネムーンにどのような価値を見出しているのか。

「“一生に一度だから思い切りお金をかける”というよりも、“少しだけ贅沢をする旅行”へと位置づけが変わりつつあります。完全に特別なものというより、ホテルのグレードを上げたり食事にお金をかけたり、“普段の旅行よりは少し良い体験をする”くらいの感覚でしょう。

とはいえ、昔のようにグレードアップに何十万円もかけるケースは減っています。昔は“海外でゆっくり過ごす”ことに価値がありましたが、今はそこまで強いこだわりはない。無理をして遠くへ行くよりも、自分たちの現実に合った範囲で楽しむ傾向が強いですね」

こうした価値観の変化は、行き先の選び方にも表れているのだとか。

「以前であれば“どこに行きたいか”が先にありましたが、いまは逆です。まず総額でどれくらい出せるかの予算感があって、その範囲で行ける場所を選ぶ流れになっているのです。その結果、かつて定番だったハネムーン先にも変化が生じています。

国際情勢の不安定化も続いていることもあり、ヨーロッパは選ばれにくい状況です。為替と物価の影響も大きく、ハネムーンで行くにはハードルが高い。ハワイも同様で、圧倒的な人気を誇る一方で“行きにくくなった”と感じる人は少なくないでしょう」

一方で、比較的現実的な選択肢として浮上しているのが、グアムやバリなどのリゾート地、あるいは東南アジア方面なのだとか。

「完全に海外志向がなくなったわけではありません。ただ、けっきょくは総額が予算内におさまるかどうかが重要なので、行ける範囲で選ぶとなると、どうしても近場でコストを抑えやすい場所が選択肢にあがってきているのではないでしょうか」

ハネムーンの新定番は「沖縄」に

では、この流れの先にある未来はどうなるのか。東京近郊在住の夫婦がハネムーンに熱海を選ぶなど、“新婚旅行も近場で済ませる”という価値観は広がっていくのだろうか。

「ハネムーンの本質はあくまで“非日常”にあります。距離が離れるほどそれは得やすいですが、限られた予算のなかでどう実現するかがポイントになるでしょう。ですから近年は海外に行かなくても非日常感が味わえる場所である、沖縄を新婚旅行先に選ぶカップルは増えているんです。

興味深いのは、この構図が決して新しいものではないという点。1960年代から70年代にかけては、宮崎県への新婚旅行ブームがありました。皇族の訪問をきっかけに、当時まだ気軽に行けなかったハワイの代替として、日南海岸のような亜熱帯的な風景が“国内のハワイ”として憧れの対象になったんです。

沖縄は以前から人気の旅行先ですが、新婚旅行という観点で見ると、その流れが現在にも続いていると言えるかもしれません」

「近場化」はさらに進んでいく

では、5年後や10年後、日本人のハネムーンはどこへ向かうのか。

「結論から言えば、“近場化”はさらに進む可能性が高いでしょう。ただ、それがそのまま“隣県で済ませる新婚旅行”の一般化につながるかというと、そう単純ではありません。今後は、遠くへ行く人と近場で済ませる人の二極化が、よりはっきりしていくと思いますが、やはり近場であっても“特別感”は不可欠です。

熱海のような国内観光地を新婚旅行と捉えるかは、人によって分かれます。新しい旅館も増えていて特別な旅行として成立する一方で、“日常の延長”と感じる人も多いからです。実際には、沖縄のようなリゾート地に加え、軽井沢や根といった“非日常性”のあるエリアが選ばれています。重視されているのは、“距離”ではなく“体験の質”なのです。

最近は、“ホカンス”のように少し高級なホテルでゆっくり過ごすスタイルも増えています。宿泊費に食事やドリンク、アクティビティなどが含まれる“オールインクルーシブ”も人気です。“普段はしない贅沢”に価値を見出す傾向は今後も続いていくでしょう」

現代の新婚夫婦が熱海のような近場で“ホカンス”や“オールインクルーシブ”を楽しむハネムーンを選ぶケースも考えられるが、要するに“どこにいくか?”ではなく、“どんな体験をするか”が重要視されつつあるということなのかもしれない。

限られた予算のなかで、いかに特別な時間をつくり出せるか。その価値観こそが、これからのハネムーンのかたちを左右していくことになりそうだ。

(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)

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