アメリカイランが停戦協議を行う一方で、ホルムズ海峡の情勢は今なお不透明なままだ。世界の原油供給の大動脈とあって、長期間の封鎖により、原油由来の石油製品に影響が出始めている。

【映像】プラスチック、塗料から化粧品まで「ナフサ」由来の製品

 日本政府は、必要な量を確保できているとした上で、流通の目詰まりが起きていると説明。しかし現場からは、悲痛な叫びが出ている。そこで『ABEMA Prime』では、現場で苦しむ当事者と、この問題を注視する国会議員とともに、今後の行方を考えた。

■国内で起き始めたナフサショック

 ナフサを原料として、プラスチックや塗料、包装材、合成繊維、日用品、電子機器、そして塗料やシンナーが製造される。プラスチックの状態にしてしまえば、なかなか形が消えないが、塗料やシンナーだと気化しやすく、長期備蓄ができないのが特徴だ。

 株式会社BIC(ビーアイシー)代表の細田宗範氏は、自動車の板金塗装業者を対象に、独自のアンケート調査をまとめた。「車のへこみを直したり、塗装したりする材料のほとんどがナフサ由来で、ほぼ毎日使っている」。

 実情については「全く入らない状況ではないが、制限がかかっている。塗料の基本は16リットルで1缶だが、販売店からは在庫不足のため、4リットル缶に小分けして、『無くなったら呼んで』と言われている。ただ、使う量は一緒のため、頻度が増えているだけの状態だ。努力して節約し、延命している」と説明している。

 細田氏らの調査は2026年4月16日〜19日に行われ、全国47都道府県・306社の有効回答が得られた。調査結果として、99.3%の事業所が「現在、塗料等の仕入れに制限がかかっており仕事にならない」と答えた。

 調査では、仕入れ供給量の減少もわかった。平常時の仕入れ供給量を「100」とした場合、30以下(ほとんど入らない・危機的状況)が63.2%、50程度(半分しか入らない)が27.2%となり、80程度(少し制限がある)は8.6%のみだった(回答302件)。

 こうした現状を、細田氏は「半分ならば努力できても、3割となると、仕事を請けられるか否かの話だ。政府が言うように、どこかに目詰まりはあるのだろう。割と早いタイミングで、川上の化学メーカーや輸入業者、商社は『5月の入荷はわからない』と発表していた。となると、その下の業者は、早めに在庫確保に動く。先物を取引している会社は、多めに頼むため、そこで偏りが起き、僕らに影響が出たのでは」と考える。

■ナフサ“目詰まり”の正体は

 ナフサはどのように作られるのか。原油が製油所に届き、そこから精製して、ナフサが取り出される。そして石油化学工場で基礎化学品になり、さまざまな製品へと加工される。

 シンナーのサプライチェーンとしては、石油化学メーカー(ナフサ由来原料を供給。トルエン、キシレンなど)から商社(原料の調達・販売を仲介)を経て、シンナーメーカーで原料からシンナーが製造される。そして、シンナーとして卸・小売(塗料店などが配分)を通り、現場(自動車整備塗装事業者、製品メーカー)へ届く。しかし「4月は前年並み、5月は未定」との情報伝達で目詰まりしている(経産省資料からまとめ)。

 衆議院・経済産業委員会理事の土田慎衆院議員(自民党)は、「建築関係はペンキがないと仕事にならない。医療と同様に、命に関わる問題だ」としつつ、「総量が足りているかと、目詰まりの問題は、切り分けて議論すべきだ」と語る。

 その背景として「地域で異なるが、ナフサは精油から製品になるまで、約10段階の事業者が絡む。そのうち3社が3割出荷を絞ると、最終的に0.7の3乗で、3割程度の流通量になる。目詰まり解消に向けて、政府は危機感を持っている。本来は資源エネルギー庁が担当だが、国交省などの力も借りて、人海戦術で川上から川下まで『しっかり確保するから、出してくれ』と電話をかけている」と説明する。

 そして、「もし足りている状態で『節約して使って』と呼びかけると、さらに各社が出さなくなる。『しっかり確保している』と積極的に言わないといけない」といった事情も明かした。

 コラムニストの河崎環氏は、「近年の“米騒動”と同じ道のりをたどっている。あの時は農水省にもわからない『謎の目詰まり』も起きていたが、今回は早く動いているのだろう。ただコメに精米後2カ月の賞味期限があるように、ナフサも製造から20日程度しか持たない。もし備蓄している事業者がいれば、商品価値が落ちるのではないか」といった疑問を持つ。

 これに土田氏は「ナフサにも賞味期限はある」とする一方で、「決定的な違いは、コメが少なくなっても、他のものを食べられるが、ナフサから作るエチレンやキシレンは、ないと塗料を作れない。また、産地によっても成分が違う」という代替品の少なさに触れながら返答した。

原油の調達、今後の見通しは

 サプライチェーンについては、「川上から川下の工程が、今まで把握できていなかった。地域によって異なり、精製部分はブラックボックスだったためだが、安全保障上、可視化・透明化する必要がある。確保できても価格が上がる可能性もあるため、物価安定のためにガソリンと同様の補助金投入の議論も出てくるだろう」とした。

 ホルムズ海峡封鎖の余波はどうか。「4月は前年同月比で、約2割をホルムズ海峡以外から調達しており、5月には半分を超える。ただし、アメリカ東海岸からだと60日程度かかり、約20日のホルムズ海峡より、輸送コストは高くなる」。

 流通面では、ひとつの問題として「転売」がある。「板金塗装業者はナフサがないと仕事ができず、このままではつぶれてしまう。通常の価格に戻っても、買ってくれる業者がいなくなるため、資源エネルギー庁は『誰に売るのか』と徹底的に確認している」。

 加えて、板金塗装業者は、保険会社との関係もあり、価格決定権を持ちづらい。「コストが倍になれば、売価も倍になる社会を作らないといけない。価格転嫁率は四半期ごとに上がってはいるが、『転嫁できている』という人は5割程度にとどまっている。保険の話も含め、やらないといけない」。

 イラン情勢の先行きが見えない中では、「いま日本ができるのは、少し高くなっても、ホルムズ海峡以外からの調達を増やす努力だ。LNG(液化天然ガス)や電気は約93%がホルムズ海峡以外から来ている」と解決策を示す。

 しかしながら、「同じ“石油”でも、産地や工場によって、得られる成分はバラバラだ」との実情もあるため、「我々ができる努力としては、そもそもの原油量を増やし、目詰まりを人海戦術で解消することだ」とした。
(『ABEMA Prime』より)