転倒が相次ぐ「高輪ゲートウェイシティ」の“危なすぎる”大階段に行ってみたら…「これが危険な階段か!」すでに観光名所と化していた
3月28日に“まちびらき”が行われた「TAKANAWA GATEWAY CITY」(以下、高輪ゲートウェイシティ)。JR東日本が社運をかけ、鳴り物入りで進行したプロジェクトであり、オフィスのほか、ホテル、住宅、商業施設などが建ち並ぶ壮大な都市である。
建設時には日本最初期の鉄道の遺構「高輪築堤」が出土して計画が変更されるなど、紆余曲折があったものの、品川駅からわずか1駅という立地の良さも手伝って、新しい東京の観光名所として盛り上がりはじめているようだ。
ところが、高輪ゲートウェイシティにある大階段が「危なすぎる」と騒動になっているのだ。曰く、目の錯覚で転倒する恐れがあるといい、ネット上でも「これは怖い」「トラップだ」と、転落を不安視する声が書き込まれる事態になっている。

とはいえ、本当に危ないのか。現地に行って確かめてみた。【取材・文=宮原多可志】
【これは確かに危険】踏み外しには気をつけて!「高輪ゲートウェイシティ」の観光の目玉になりつつある「大階段」に行ってみた
色が地味で境目がわかりにくい
問題の大階段は高輪ゲートウェイ駅の北側に位置する。隈研吾氏の事務所が設計した駅舎の改札を出て徒歩1〜2分ほど、2棟の高層ビルに挟まれた場所にある。現地に着くと、なぜこの大階段が危ないのか、よくわかった。
階段全体の色が地味で、階段を下りようとして足元を見ると、段差の境目が極めてわかりにくいのだ。写真に撮ると一目瞭然だが、遠くまでフラットな床が続いているような錯覚に陥ってしまう。まるで、だまし絵のような階段だ。
さらに厄介なのは、位置によって段差の高さが異なる点だ。両サイドは小刻みに段差が設けられているのだが、中央部分は、両サイドのなんと3段分の段差があるのだ。
中央部分には境目に木材が貼られているため、おそらくベンチのような使われ方を想定していたのだと思われる。人々が座ってくつろぎ、談笑する場となることを目的に、設計されたのかもしれない。しかし、その木材の色が薄く、周囲の石材と同化してしまっているので、これは、知らないと足を踏み外すだろうなあと思った。
座ってくつろげる場を狙った?
調べたところ、やはり中央部分は階段ではなかった。予想通り、ベンチとして造られたものなのだという。つまり、中央部分がベンチで、両サイドが階段、というわけだ。つまり、異なる性質のものが一体になっているわけで、紛らわしいことこの上ない。
大階段の運用が始まったのは昨年の3月だが、これまでに足を踏み外して少なくとも2人がケガをする事故が起こっているようで、現在、JR東日本はチェーンを張るなど対策を講じている。
確かに、天気のいい日は日当たりも良さそうで、憩いの場になるのだろう。だが、困ったことに天気が良い日ほど反射で境目がわかりにくくなり、危険度が増す。階段を下から見上げる分にはまだ段差がわかりやすいのだが、高輪ゲートウェイシティの利用者の多くが駅経由で訪れるため、この大階段を上から見下ろすことになる。そう考えると、やはり疑問が生じるデザインと言わざるを得ない。
こういった“わかりにくく、危ない”公共デザインは、実は珍しくない。例えば、市街地の路地や階段のタイルなども、「雨の日になるととにかく滑る」といった利用者のことを考えていない仕様のものが採用される例が見られる。
隈研吾の設計ではない
この大階段が危ないというニュースが報じられると、「隈研吾が設計した」というデマがSNSを中心に広まった。
高輪ゲートウェイ駅と、そのまちびらきに合わせて開業した「MoN Takanawa」(モン タカナワ)の設計に隈研吾氏が関わっているので混同されがちだが、町全体を設計したわけではない。もちろん、階段もそうではない。
ただ、著名な建築家が設計した建築に関しては、「デザインが使いにくい」「建設費がかかる」「維持管理が大変だ」という批判が相次いでいるのは事実である。建築に対する批判の目が、今まで以上に厳しくなっていることを実感させられる炎上騒動であった。
大階段が観光名所になっている
ところで、実際に現地で大階段の写真を撮っていると、「ほらほら、これが有名な階段」「おお、怖っ!」などと、周りで笑いながら話す人たちが目についた。話を聞いてみると、「危ない階段だと話題になっていたので、見に来た」という。
滋賀県から東京観光に来たそうで、品川駅で新幹線を降り、隣の駅だというのでついでに寄ったらしい。高輪ゲートウェイシティの他の施設を見るつもりはなく、目当ては大階段なのだという。「これは落ちるわよねえ」と、楽しそうに写真を撮っていた。
このように、危険な大階段はちょっとした観光名所になってしまっているようだ。“日本一危ない大階段”などと称して観光資源化できそうな気もしたが、足を踏み外した人が過去にいたことを考えると、それは難しいかもしれない。
現在はチェーンが張られているものの、今後、改修が行われるのかどうか、対応に注目が集まる。今回の大階段騒動は、公共空間のデザインの在り方について、考える機会になりそうだ。
高輪ゲートウェイシティには「LiSH」という一種の研究拠点がある。ホームページを見ると、“100年先の心豊かなくらしのための実験場”と称し、スタートアップ企業などが多数入居しているそうだ。入居する企業のどこかが、“利用者が足を踏み外さない大階段”や“安心して利用できる理想の公共デザイン”を研究してほしいと願わずにいられない。
デイリー新潮編集部
