【磯部 孝】外国人の間で「日本の古着」が絶賛されている明快な理由…《ユーズドインジャパン》が世界的に評価される時代に

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2017年前後から始まった今回の古着ブームは、すでに9年目を迎える。前回の古着ブーム(1997〜2006年頃)が約10年で沈静化したことを考えると、本来なら市場は成熟期に入っていても不思議ではない。

にもかかわらず、だ。国内リユース市場規模は2024年時点で約3.3〜3.5兆円(リユース経済新聞推計)に達し、15年連続で拡大。なかでも業界首位のゲオホールディングスの主力業態「セカンドストリート」は業績、店舗数の伸びともに好調ぶり様を示している。

なぜいま、「古着」というジャンルが活性化されているのか――。その理由を探っていく。

【前編記事】『古着業界が激変「セカンドストリート」がチェーン店なのに“イケてる個人店”を駆逐している理由』よりつづく。

「ユーズド・イン・ジャパン」に外国人が夢中

古着需要が衰えない最大要因が、ずばり訪日外国人客の存在だ。2006年の訪日客数733万人に対し、2025年は4268万人と約6倍へ拡大した。彼らは飲食や観光だけでなく、日本独自の中古文化にも強い関心を示している。

週末の大井競馬場フリーマーケット、下北沢、高円寺、原宿などの古着エリアをのぞいて見ればわかることだが、外国人来訪者の姿が珍しくない。彼らにとって日本の古着は単なる中古衣料ではなく、日本文化の延長線上にある“発掘体験”として機能している。

興味深いのは、日本の古着店で販売される商品の多くが「日本製ではない」という点だ。米国製、欧州製、東南アジア製など原産国は様々である。それでも海外消費者が日本の古着を評価するのは、「どこで作られたか」ではなく、「日本でどう扱われてきたか」に価値を見出しているからだ。

几帳面で清潔志向の強い日本人が保管し、丁寧に洗浄・メンテナンスされた商品は、傷みが少なく状態が良い。この評価は海外で「Used in JAPAN(ユーズド・イン・ジャパン)」という言葉で語られ始めている。

かつて日本は“Made in JAPAN”という製造品質で世界的評価を築いた。現在は、選別・保全・再流通・接客まで含めた二次流通品質で評価される時代へ入りつつある。これは非常に示唆的な変化でもある。

「海外で1000店舗」セカストは米国市場に注力

こうした潮流を受け、大手リユース各社は海外展開を加速させている。セカンドストリートは2036年3月期までに海外1000店体制を目標とする。

2025年末時点で展開している海外店舗は144店。とりわけ米国市場に注力しており、西海岸・東海岸でドミナント出店を進め、2030年には100店規模を目指すという。また、台湾でも日本商材を持ち込んだ店舗展開が好調で、現地50店から100店への拡大を視野に入れている。

セカンドストリート以外の動向では、コメ兵ホールディングスなども積極的に動いている企業のひとつ。同社はAI真贋判定を導入し、ブランドリユースの信頼性向上を推進している。すでにマレーシア、中国、台湾など6ヵ国・地域へ展開し、今後は欧州進出も検討している。

また、ブックオフHDはブランド品やトレカ強化で訪日客需要を取り込む方針だ。ほか、トレジャーファクトリーも台湾・タイなどで多店舗展開を進める予定だという。

古着ブームは単なる懐古趣味で終わらない

日本のアパレル産業は長らく、製造拠点の海外移転と国内市場縮小という逆風にさらされてきた。新品衣料市場が伸び悩む一方で、リユース市場が拡大している事実は、消費構造の変化を如実に示している。

だが、これは悲観材料だけではない。日本には、真贋判定、商品管理、接客品質、在庫運営、店舗オペレーションといった二次流通の高度なノウハウが蓄積されている。これらは海外でも十分通用する競争力だ。

“Made in JAPAN”がモノづくりの信頼なら、“Used in JAPAN”は循環型消費社会における信頼である。人口減少社会の日本にとって、リユースは単なる内需産業ではなく、世界へ輸出可能な新しいサービス産業へ成長する可能性を秘めている。

古着ブームの先にある本質は、懐古趣味ではない。モノを長く使い、価値を再編集し、次の使い手へつなぐ経済モデルへの転換である。日本のリユース業界はいま、その先頭に立てる位置にいる。

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