挨拶なし、業務中にスマホ…会長のコネで入社した新入社員が“数か月で消えた”意外な理由
ただ、時々調子に乗ってしまうのもまた人間。そこには“金”や“権力”などが影響を与えているようです。
今回取材に応じてくれた男性は、自身の職場でそのような現場を目の当たりにしたそうです。
◆会長室の影がチラつく「特別枠」の新人
「最初から、どこか浮いていたんですよ。明らかに他の新入社員とは放っている空気が違いましたから」
女性3名、男性5名の計8名。海外向けの特殊製品を扱う同社では、例年、男性陣は技術系の質実剛健なタイプが揃うのが常でした。
しかし、その中の一人、長身でスーツ姿も決まっているイケメンの男性社員だけは異質でした。
入社後しばらくして、彼が「会長の幼馴染の孫」であるという事実が社内に知れ渡ります。
「一般社員には伏せられていたんですが、いわゆる超ド級の『コネ入社』だったんです。それを聞いて、彼のあの尊大な態度も、周囲がどこか腫れ物に触るような扱いをしていたのも、すべて合点がいきました」
三好さんによれば、その新人社員には組織の一員としての自覚がみじんも感じられなかったといいます。廊下で先輩である三好さんとすれ違っても挨拶一つせず、それどころか目も合わせない。まさに「特別枠」を隠れみのにした、絵に描いたようなモンスター新人の登場でした。
◆「野放し」にされたイケメン新人の傲慢な日常
配属先は法人営業部門でしたが、彼の評判は瞬く間に地に落ちました。
新入社員同士で親睦を深める様子もなく、休憩時間はおろか、業務中もデスクでスマートフォンを眺めている始末。教育担当が注意を促しても、鼻で笑うような態度で受け流していたといいます。
「営業先でも愛想の悪さは相変わらずだったようで、同行したメンバーは皆『あいつは使えない』とさじを投げていました。でも、上司たちは会長の顔色を伺って、見て見ぬふり。完全に野放し状態でしたね」
三好さんは、その新人が醸し出す「自分はこの会社に守られている」という根拠のない全能感が、職場全体の士気を下げているのを感じていました。誰もが、この不条理な状況が定年まで続くのではないかと、暗たんたる気持ちでいたのです。
ところが、そんないつもと変わらぬ悪態の日々に、唐突に終止符が打たれることになります。きっかけは、彼のバックボーンである”会長の幼馴染”が経営する金属加工会社の不祥事でした。
◆崩れ去った「後ろ盾」と豹変した態度
「長年にわたる大規模な粉飾決算が明るみに出たんです。脱税の規模も凄まじく、修正申告で済むレベルを遥かに超えていました」
そのニュースが流れてからほどなくして、老舗だったその会社は経営の危機に追い込まれます。
後ろ盾を失ったという事実は、誰が教えるまでもなく、あの新人社員の耳にも入ったはずです。
「それからの彼、目に見えて大人しくなったんですよ。以前のような、人を小馬鹿にしたような視線が消えて、どことなく所在なさげにデスクに座る時間が増えました。皮肉なものですよね、後ろ盾が消えた途端に、牙を抜かれたようになるなんて」
もはや、会長に無理を言って親族を「丁稚(でっち)」に出す意味も、守るべき義理も消失してしまいました。かつての傲慢さは影を潜め、周囲の冷ややかな視線に耐える日々が数週間続いたといいます。
◆幕引きの瞬間
そしてある日、ついにその時が訪れます。いつもは態度が大きかった彼が、自ら辞表を提出したのです。三好さんは、後に聞いたその理由に、少しだけ複雑な心境になったと明かします。
